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明太マヨ
111
あめ。
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*終幕前夜*
【注意喚起】
・途中で書くのを諦めています。
・半年ぐらい前のやつだから下手っぴ。今もやけど。
▶▶▶
『危険体監視・処分要請書
貴機関に対し、危険体の監視および処分業務を要請する。
対象となる危険体は後日輸送するものとし、到着後は速やかに監視体制を確立すること。
監視期間中は、対象の状態変化、異常反応、外部への影響の有無を継続的に記録・報告するものとする。
また、規定の監視工程完了後は、定められた手順に従い、対象を速やかに処分すること。
本件は機密指定案件であり、関係者以外への情報開示を固く禁ずる。』
「なんで俺らなん?」
「知らん。でも金が入るならやっとくしかないべ。」
「なんか難しいこと書いてっけどつまりは殺せば良いってことっしょ?」
「監視する必要あるんか?」
「『二.監視工程について』によるとその人外を殺せるようにするためだとよ。」
書類の右上についたホチキスを指で撫でると、金属の冷たさが伝わった。ちらりと段ボールに目を向けると、それに釣られたように数人が視線を箱へと向ける。
それなりに大きい段ボールは施設の中へと入れるために持ち上げたとき、かなり軽くて思わず声を出してしまったことは記憶に新しい。
シャオロンがガムテープに爪をかけ、ガムテープを剥がし始める。もしその人外さんが息を潜めていたら真っ先に襲われるのはシャオロンだろうな、なんてぼんやりと考える。シャオロンが段ボールをいじるたびに中から布がこすれるような、ガサガサした音と、たまに何かが側面にゴッと当たるような音。
ビリ、とガムテープの剥がれる気持ちの良い音が響いた。
「ご対面〜」
シャオロンがパカリと段ボールを開き、中を覗き込む。シャオロンはきょとんと目を丸くして、不思議そうに中を除いた。どうやら人外はシャオロンを襲っていない。
「……布?」
シャオロンがぽとり、と言葉を落とす。布のようなものをバサリと持ち上げ、小首を傾げる。持ち上げた布はくすんだ緑色で恐らくコートのような上着だろう。シャオロンがそのコートを持ち上げるとともに、コロリとボールのような物が布から滑り落ちた。
鬱が転がったそれに近づき、試しに持ち上げてみると、片手で持てるほど軽かった。大きなダンボールには、他にも長靴やレザーグローブも入っていた。
そのままただみんなで服をいじってみたり長靴を触ってみたりしたが、どこに人外がいるかもわからず、もしかしてとても小さかったのでは、逃げてしまったのでは、といった話にもなった。
みんながダンボールに入っていたもので遊び始めた頃。
「顔」
唐突にそう、一言。ショッピが呟いた。ショッピの指が指す方向を辿って顔を向けると、確かに自分の持つボールには線で描いた半円の下部分が2つ、閉ざされた目のような物が確認できた。
トントンが俺の手から菌糸でボールを取り上げ、腕でベシベシと叩く。と。
ぱちり
まん丸の黒い瞳が開く。それと同時にトントンの抱えているボールが急にずっしりと重みを持った。シャオロンが広げていたコートにも中から風船を膨らませたかのようにどんどん形になっていく。
「うぇっ!?」
「あ、暴れんよな……!?」
「いや危険体なんやから暴れるんちゃう?」
バタバタと焦りながらもなんとか用意していた広めの透明ケースに放り投げる。
その緑のボールは黒の瞳をぱちりぱちりと数回まばたきをした後、ボール頭をゆっくりと浮遊させた。ボールの下に影が落ちる。
「なんやねんおまえら」
▶
「えーっと……危険体さん」
「……は?危険体?てかどこやここ」
キョロキョロと辺りを見渡すボール男。黒のグローブの手でアクリルの壁をペタペタと触る。現状をゆっくりと頭で処理をしどんどんと眉……はないがしかめっ面になっていき、またこちらの方をじろりと見た。
「……」
どうやら自分の置かれている状況に至る経緯に心当たりがないようで。全員が鬱に視線を向けるが目を逸らしたままあーやらうーやら唸っている。さすがに何も理解していない人に「お前を今から殺します」なんて言えないようだ。
見かねたシャオロンがボール男に壁越しであるが近づき、話しかける。ボール男は警戒するように後退り壁から距離を取る。
「名前はあんの?」
「ゾム」
「ここ来る前は?」
「お、俺な、もう誰もいないんやけど、工場にいてん。」
「ふーん」
「にんげんがいち、にぃ……四人も勝手に押しかけてきたうえに銃?ってやつバンバンしてきたからちょーっと威嚇してん。したらなんか頭がふわーってして力抜けて。んで目開けてらんなくなったし意識も飛んだ。」
エーミールが黙ったままケース越しの緑色をじっと見つめ、おもむろに口を開く。
「……寝る、って知ってます?」
「しっとるわ。にんげんが意識失うやつやろ?」
「……」
エーミールが困ったようにこちらに視線を向ける。いやお前が勝手に話しかけたんやからこっち見んな。どうやらこのボール男……もといゾムさんは『眠い』という感覚すらも知らないようだ。しかし、このゾムさんをケースに入れたは良いが監視作業も3日ほどかかるようなものだし、今日はもう放ってしまいたい。だからといって飯もやらずに無視をするわけにはいかない。
「なんか食いたいもんある?」
同じ結論に辿り着いたのか鬱がゾムに話しかける。ゾムは考える素振りも見せず鬱に問いかけた。
「……なんでにんげんって異物を体ン中にいれるん?」
今度は鬱が困ったようにこちらに視線を向ける番だった。なんでなんでと見上げてくるその真っ暗な瞳に応えられる解答は持ち合わせておらず。
そのまま数分間ためらいがちな空気が宙をまとう。シャオロンがすっと動き、ミニキッチンの方へと足を運ぶ。ガチャリと冷蔵庫の開く音とすぐに戻ってくる足音。薄くホコリをかぶったコンクリートにスニーカーのゴムが擦れる音が響く。何をするのかと伺う複数の視線にさらされながらも気にせずケースに近づき、小窓を空けた。
シャオロンがケースの窓から先日スーパーで買った5つ入りのエクレアを投げ入れた。箱の中には一つしか余っていないが。
「食べてみー」
「ちょっ、てか俺のエクレアやん!」
「ええやんショッピくん。残してるんやし。」
「取っておいたのに……!」
ショッピがシャオロンに噛み付いていると、ゾムが興味深そうにエクレアを手に取る。そして口を空けた。まるでほくろのように黒い点がポツンとあったのに、口をひらけば歯や舌もよく見えた。
半分かじって中からクリームが出てくることに少し慌てながらも咀嚼をし飲み込む、が。
そして、くしゃっと顔を歪めた。初めて見た人外のタイプであるが分かるくらい顔をしかめていた。
その表情を見てシャオロンが呑気にケラケラと笑う。
「あ、地雷踏んだ?」
「にんげんが理解できひん……なんでこんな、こう、嫌なやつをいれるん」
やり取りを横目に見ながらもゾムが入っていたダンボールに付属していた書類に書き込む。
『覚醒後の対象に著しい混乱、錯乱、または認知異常は認められましたか』『していない』
『対象より食料、水分、休息、排泄設備等の生理的要求は確認されましたか』『していない』
『対象は暴力的行動、抵抗行動、または収容環境の破壊を試みる様子は確認されましたか』『していない』
『上記以外に観察された特異行動、異常反応、または報告すべき事項があれば記載してください』『エクレアが苦手なようです』
うん完璧。横から覗き込んでいるトントンさんがなにか言いたげだがまぁよいだろう。半分かじられたエクレアとそれが入っている白い箱。それが床に寂しく転がる。
鬱先生がシャオロンに耳打ちする。後で殺すんだから愛着がわかないようにしろよ、と。
「ぁ、……わーってる」
絶対今思い出したやろ……と眉をひそめながらもわかってるならええんやと鬱先生はまたシャオロンの肩を叩く。
当の本人……いや、当の本人外は暇そうに大の字に寝転がっていた。
「なー、俺いつ出れるん?」
沈黙が落ちる。エーミールとシャオロンが分かりやすく気まずそうに視線をそらす。
「なあって」
鬱先生が片足だけ一歩前に出し、口を開きかけて、また閉じる。そろそろと前に出した足を戻す。
ゾムを見るのも、視線をずらして他の人を見を見るのも、足元を見るのも何か違う気がして結局寝転がっているゾムの足元を見た。
▶▶▶
終わり。
タイトルは『終幕前夜』
コメント
1件
読み終えました〜!「終幕前夜」、面白かったです! ゾムさんの人間っぽさと人間じゃなさの絶妙なバランスがいいですね。「なんで人間は異物を体中に入れるん?」って質問に、誰も答えられなくて困ってる空気、すごく好きです。エクレア苦手って顔を歪めたシーンも可愛くて、つい笑っちゃいました。 「後で♡♡♡んだから愛着がわかないように」というやりとりがあるからこそ、皆がゾムに話しかけちゃう矛盾が切なくて…。続きがすごく気になります!次回も楽しみにしてますね🌷