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ただの没作
hbc × inm
R 18 なし inm ヴィラン
(hbc視点)
平和な日々に、俺は少しずつ慣れていた。
かつては毎日のようにヒーローとして戦っていたのに、今は静かな日常が続いている。
それはきっと、望んでいたはずの未来。
けれど、心の奥にぽっかりと空いた空洞が、時折ひんやりと疼いた。
そんなある日、通信が入る。
「伊波ライ、出現。座標を送る。対応を頼む」
その名を聞いた瞬間、俺の胸がざわついた。
伊波ライ――かつて都市の裏側で暗躍していた存在。 その名は、記録の中でしか見たことがなかった。
数々の事件の裏にその名が囁かれ、けれど誰もその姿を見た者はいない。 “影のような存在”と呼ばれ、ヒーローたちの間でも都市伝説のように語られていた。
「本当に存在してたんや…」 恐怖よりも、好奇心が勝った。
俺の中の空洞が、何かを求めてざわめいた。
指定された廃ビルに到着した俺は、慎重に足を踏み入れる。
崩れかけた階段を上り、屋上へとたどり着いたそのとき―― 風が吹き抜け、ひとりの人物が立っていた。
黒いコートに身を包み、顔の半分を影に隠している。
その人物がゆっくりと振り返った。 そして、視線が交差した。
その瞬間、心臓が跳ねた。
深い夜のような瞳。
静かで、でも何かを秘めている。
俺は息を呑んだ。
「君が…マナ ?」
なぜ、俺の名前を知っているのかが不思議だった。
低く、けれどどこか優しい声が耳に残る。
その言葉だけで、世界が少し揺れた気がした。
俺は構えた。けれど、ライは一歩も動かない。
攻撃の気配もない。ただ、じっとこちらを見ている。
「どうして…戦わないんや … っ 」
問いかけに、ライはふっと笑った。
「 … 戦う理由がないから … 。 それに君は、俺に興味があるんでしょ ?」
図星だった。
俺は何も言えず、ただその場に立ち尽くした。
数分の沈黙のあと、ライは背を向けて去っていった。
「また会おうね、マナ」
その言葉を残して。
その夜、俺は全く眠れなかった。
目を閉じるたび、あの瞳が浮かぶ。
あの声が、耳の奥で繰り返される。
「君は、俺に興味があるんでしょ ?」
夢の中、霧の向こうにライの姿がぼんやりと現れる。
何も言わず、ただこちらを見つめている。
その視線に、俺の胸はまた高鳴った。
( inm 視点 )
この街は、静かすぎる。
かつては騒がしく、混沌とした音が絶えなかった。
それが今では、まるで水底のように、音も光も届かない。
俺は廃ビルの屋上に立ち、風の音だけを聞いていた。
誰もいない。
誰も来ない。
それが、心地よかったはずだった。
けれど、最近、胸の奥が妙にざわつく。
何かが近づいている。
それは危機ではなく、もっと柔らかいもの。
水面に落ちる一滴のような、静かな波紋。
「 マナが動いたか … 」
情報網を通じて、彼の接近を知ったとき、俺はなぜか笑ってしまった。
ヒーローとして名を馳せた男。
だが、最近は活動も減り、記録の中でしか見なくなった。
そんな彼が、自分に興味を持ったとしたら―― それは、少しだけ面白い。
俺は戦うつもりはなかった。
この街に混乱をもたらす気もない。
ただ、確かめたかった。
自分という存在が、誰かの心に波を立てるのかどうか。
そして、マナが現れた。
屋上に足音が響いた瞬間、俺の心臓が一度だけ跳ねた。
視線が合ったとき、彼の瞳に映った自分を見て、俺は確信した。
( この人は、俺を恐れていない )
それどころか、何かを探している。
空っぽの心に、何かを満たすために。
「君が…マナ?」
言葉が自然にこぼれた。
そして、彼が構えたとき、俺はただ見つめ返した。
戦う理由はない。
むしろ、壊したくなかった。
この一瞬の静かな接触を。
「また会おうね、マナ」
そう言って背を向けたとき、風が少しだけ暖かく感じた。
彼の存在が、俺の中に何かを残した。
それはまだ名前のない感情。
けれど、確かにそこにあった。
あの日、ライが去ってからというもの、俺の心は落ち着かなかった。
彼の声、瞳、そして最後の言葉――「また会おう、マナ」。
あの瞬間から、何かが変わってしまった気がしていた。
そして数日後、任務中のことだった。
廃工場跡地に現れた異常反応を調査するため、俺は仲間たちと現場に向かっていた。
俺を合わせて計四人の仲間と 。
カゲツが先頭を歩き、星導が周囲を警戒し、 リトは後方を _ 。
「この反応…前と似てますね … 」
星導が眉をひそめる。
「 またあいつかもな 」
カゲツが低くつぶやいた。
俺の心臓が、ひとつ跳ねた。
そのとき、工場の奥から、ゆっくりと歩いてくる影が見えた。
「伊波ライ…!」 カゲツが即座に構える。
「全員、警戒を――!」
だが、ライは何もせず、ただ俺の方へ視線を向けた。
その瞳に、敵意はなかった。
むしろ、どこか懐かしさすら感じさせるような、静かな光。
「また会ったね、マナ」
その声に、俺の呼吸が止まりそうになる。
偶然――けれど、必然のような再会だった。
仲間たちは一斉に前に出ようとする。
「下がってください … っ マナ ッ !!」
「こいつは、何を考えてるかわからないんだぞ 」
「危険だ … ッ マナ 、 !!」
けれど、俺は一歩も動かなかった。
ライの視線が、自分だけを見ていることに気づいていた。
そして、彼がゆっくりと手を伸ばしてきたとき――
その指先が、俺の頬に触れそうになった瞬間、ふっと止まる。
「 … 笑 触れたら、君が壊れそうだから … ッ 」
その言葉に、俺の胸は締めつけられた。
なぜか、涙がこぼれそうになる。
「マナ、下がれってば!」 リトの声が響く。
俺はようやく我に返り、ライを見つめ返す。
彼の瞳の奥に、深い孤独が見えた気がした。
それは、誰にも気づかれないまま、長い時間を過ごしてきた者の目だった。
俺は何も言わず、ただその場に立ち尽くしていた。
仲間たちの声が遠くに感じられるほど、ライの存在が心を占めていた。
ライは、俺の瞳をじっと見つめたまま、何も言わずに手を引いた。
その指先が空気を切るように戻っていく。
周囲のヒーローたちは、今にも動き出しそうな緊張感を漂わせていた。
けれど、ライは一切構えず、ただ一歩、後ろへ下がった。
その動きは、まるで風が方向を変えるように自然だった。
「君の仲間は、強いな」
ぽつりと、誰にも向けないような声でつぶやいた。
それは俺にだけ届いたような気がした。
そして、ライの足元に黒い霧が広がり始める。
まるで地面が彼を飲み込むように、静かに、ゆっくりと。
「また、風が変わる頃に … 」
最後にそう言って、ライの姿は霧の中に溶けていった。
残されたのは、冷たい風と、俺の胸に残る余韻だけだった。
一旦、前半はこれだけ 。
何も考えずに 、 伊波の ヴィラン いいなと思いながら書いてました。
最近、小説にハマったりして語彙力アップしたと思う(
でも結局この作品は没になりましたね。
メモアプリで妄想しながら書いてたのをコピペしてるので変な部分あるかもです。
一応、後編も 投稿しようとは思ってる()
でもまだ後編あんまり完成してないからすぐに完成させます、お待ちくださいませ。