阿部は今、スケジュール帳と睨めっこしている。あの海に行きたいが、目黒と休みが合わない。目黒には早上がりも無くなった。
何かトラブルでも起きない限り一緒に出かけるのは難しい。
1人で行ってみようかと思う。
撮影休みの日、阿部は自分の車であの海に出かけた。
目黒には言ってある、1人で大丈夫かと言われてしまったけど、どうしても行きたかった。
可愛い貝殻を見つけて、持って帰ることにした。
帰り道、後ろから車が煽ってくる。
事故を起こすなど出来ない。
数キロ付いてくる車。
阿部は路肩に車を止めた。
後ろの車はぶつかるスレスレで追い越して行った。
心臓がバクバク言っている。
目黒に会いたい。会いに行こう。
家に車を置いてタクシーに乗る。
合鍵で目黒の家に入ると玄関で座り込んでしまった。
しばらくして、ソファに座り込み目黒を待つ。
1時間くらいで帰って来た。
阿部は飛び付いて泣き出した。
目黒ーどうしたの?
阿部ー海からの、帰り道で煽られて怖くて。
目黒ー事故には、なってないね?
阿部ー路肩に止めて、車が先に行くのを待ってた。
目黒ー怪我してなくて良かった。
阿部ーやっぱり1人で行くのやめる。
目黒ーそうだね、危ないよ。
阿部ーあっお土産あるんだ。
目黒ーん?
阿部ーほら、可愛い貝殻。
目黒ー見つけてきたの?
阿部ーん、めめにあげる。
目黒ーどこに飾ろう?
阿部ーふふふ、考えて?
目黒ーありがと。
目黒も、現場でお弁当を食べたし、2人でコーヒーを飲む。
阿部は海は楽しかったけど帰り道が怖かったと何度も言う。
目黒が優しく抱きしめる。
阿部は熱いキスを何度も受ける。
今日の怖かったのが消えていく。
あの海には、この夏はもう行けないかもしれない。
残念だが、あんな怖い思いをしてまで行きたくない。
海に入らなければ、撮影が終わってから行ける。
その日を楽しみにして、過ごしている。