テラーノベル
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通学用のカバンを手に取ると、焦るような手付きでその中身を掻き回す。
「あった……!!」
亜矢がカバンの中から取り出した、1冊の本。
それは、黒い表紙に目のような紋章が描かれた本。
亜矢は緊張しながら、そして何かを期待しながらその本をそっと開く。
ブワッ!!
本を開いた瞬間、激しい閃光が本の中心から天井に向かって昇る。
目を細めて亜矢がその光を見上げると、
ポンッ!!
という軽い爆発音と共に、煙の中から何かが落ちて来た。
背に小さな黒い羽根を生やした、小悪魔。
「アヤーー!!」
コランは着地するよりも先に嬉しそうに叫び、亜矢に向かって落下していく。
「コランくん!!」
亜矢はコランを見上げ、受け止めようと両手を構えた。
亜矢の腕の中に着地したかと思いきや、コランは亜矢に抱きついた。
「またオレを召喚してくれてありがとう、アヤ!!」
亜矢は涙を浮かべて頷くと、ギュと抱きしめた。
「おかえり……コランくん」
「えへへ……やっぱり、アヤの側が1番いい」
コランは照れくさそうにしながら、嬉しそうに亜矢に頬を寄せた。
ふと、亜矢が気配を感じてコランを抱いたまま振り返った。
そこには、いつの間にかグリアとリョウが立っていた。
亜矢はコランを降ろすと、指で涙を拭った。
「結局、全て元通りなのね」
そういう亜矢は、どこか嬉しそうに微笑んだ。
グリアは一歩前に出た。
「ああ、元通りだ。これからの毎日の『口移しも』な」
「そう、口移しも……って、はぁっ!?」
嬉しそうな微笑みから一変、亜矢は固まった。
「な、なんでよ!? もう口移しは必要ないんでしょ!?」
グリアは平然としている。かと思うと、フっと笑った。
「あんたを生き返らせる為に、かなりの力を使い果たしちまったからな。しばらくは毎日、人間の魂を喰い続けねえとオレ様が生きていけねえんだよ」
「そ、そんな! 魂を狩るなんてダメよ!」
「だろ? だから、あんたの命の力をもらうぜ。毎日、『口移し』でな」
亜矢は何も言い返せなくなった。つまり、これって……。
立場が逆転しただけで、何も変わってないという事!?
確かに、『魂の器』の儀式によって膨大な力を宿した亜矢の魂なら、毎日グリアに『命の力』を与え続けても影響はないだろう。
いや、ある。毎日唇を奪われるという、精神的苦痛がっ!
「いやーー!! 何でそうなるのよっ!?」
亜矢の叫び、空しく。
リョウはただ、そんな亜矢を見て苦笑いしていた。
「いや、同じじゃないぜ。今度の口移しは1年じゃ済まねえ、無期限だ。毎日オレ様を満たせよ、亜矢」
「はあっ!? 何よそれ!! 冗談じゃないっ!!」
「なんだよ、2度も生き返らせてやった恩を忘れたとは言わせないぜ」
またもや脅迫行為に出たか!? と、亜矢は悔しいながらも諦めの溜め息をついた。
これでは、1年前と全く同じではないか。
「オレ様も今まで通り、右隣の部屋に住むぜ」
「……もう、好きにして」
亜矢は力なく答えた。これからの日々を思うと、再び気が重くなる。
「また、オレ様がお隣サンで嬉しいか?」
「全然嬉しくないっ!!」
「そうか、なら同棲の方がいいか? ハハハハ!!」
「バカーーーー!!!」
何やら1人、空回りな怒りをぶつけている亜矢。
そんな2人を見ているコランとリョウ。
「なあ、なんでアヤは怒ってるんだ?」
リョウはぷっと吹き出して笑う。
「違うよ、仲がいいんだよ」
ちょっと羨ましい、とリョウは思った。
『口移し』をする者と、される者。
立場の逆転はあっても、そこからまた、変わらない日々の始まり。
死神と天使に挟まれ、小悪魔と共に暮らす生活。
普通の少女の普通でない日常生活は、まだ始まったばかり。
死神は、新たな目的を果たす為、少女に迫る。
亜矢の心を、手に入れる。
『口移し』……いや、『口付け』にこめられた本気の野望に、亜矢が気付くのはいつの日だろうか。
—完—
#恋愛
大正
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裏五条
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コメント
1件
あああ完結した…!!😭💕 最後まで一気に読んじゃったよ!コランくんの「おかえり」にすでに泣きそうだったのに、グリア様の「口移し継続」宣言で笑いと切なさが同時に来た…!「立場逆転しただけで何も変わってない」って亜矢の叫び、めっちゃわかるけどグリア様の本気の野望に気づいてほしい気持ちもあって複雑よ…!!最後の「亜矢の心を手に入れる」がエモすぎる😭✨ 桜咲かな先生、素敵な物語をありがとうございました!!🌸🎀