テラーノベル
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「どうだろう……その…パートナーとして…!」
「お前が俺のこと好きなのはよく分かったけどよ…….ちょっと周りの目が痛いんじゃないか?まずは、雰囲気とかからだな…..」
アルコールの力を借りて震える手を彼の前に差し出した。今まで密かに寄せていた恋心も、想いもさっきまで早鐘を鳴らしていた心臓の音はピタリと止んでしまった。高揚感に身を任せた結果が破滅に繋がるなんてどれだけ有能なエンジニアでもそこまで想像する事が出来なかった
「その….もう俺らはパートナーだろ?十分叶ってると思うんだが……」
完全にその通りだ。俺らは学院にいた時からずっとパートナーだった。何を今更の話だ。込み上げてくる涙を押し殺す。また、いつもの薄っぺらい嘘をつく
「あ、ああ……そうだったな….すまない….コーヒーでも淹れてくる……」
1秒でも早くこの空間から抜け出したい一心だった。何故、あんな馬鹿な事を口走ってしまったんだ。アルコールの回っていた頭が一瞬にして醒めてしまった。完全に誤算だった。オツキンにも酒を飲ませていたら笑って聞き流してくれたのに。
キッチンでコーヒーを淹れながら啜り泣く。いつもの冷静沈着な自身からは信じられない程か弱い涙だった。一通り泣き終わったのか顔をあげる。涙の跡が頬に残り、赤く眼を腫らしている。コーヒーをカップに注ぎオツキンへと持って行く為にキッチンを後にする。足元が涙で滲みよく見えない。
「オツキン……持ってきたぞ….」
「ありがとうな」
「……飲んだらシンクに置いといてくれ。後で洗う…..」
「疲れてるなら俺が洗うぞ。仮眠くらいとってみたらどうだ?ほら……俺らはパートナー…..だろ?頼ってくれよな」
何も言えない。パートナーとして認められているましてや、あんな事を言ったのに何事もなかったかのように自然と接してくれている。そのちぐはぐさが頭の片隅で黒い感情と混ざり合っている。
廊下に出ると外はもうすっかり暗かった。アルコールで熱った体を秋の風が優しく撫でる。その慰めが鬱陶しいとでもいうように窓を閉める自室に篭って静かに泣く。何もおかしい事では無いのに。オツキンのあのやんわりとした断り方が逆に神経を逆撫でしてしまったのだろう。マットレスの優しい感触がどこか不安だった心を少しづつ、落ち着かせていた。このまま目が覚めなければどれほど幸せなのか、今の疲労しきった頭脳では考えるのが困難に思える。
─翌朝、優しい光がカーテン越しに伝わってくる。あの後、寝てしまったらしい。忘れられてれば良かったのに。昨日の記憶は鮮明に残っており、これからオツキンとどう接すれば良いのかわからなくなっていた。
リビングで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるオツキンを見つけた。また、昨日みたいに接してくれたら良い。そんな浅はかな期待は想像以上の行動で返される事となる
「おはよう。氷虎。昨日は俺の判断が曖昧ですまなかったな」
「……え?」
「改めてちゃんと考え直してみたんだ。やっぱり俺らって友情を超える何かがあると思うんだ。昨日のお前はそれを伝えたかった。そうだろう?」
「え…あ、うん。まぁ…」
「今日はデートにでも行こうか。俺たちの新たな関係を作る為にも…!」
「あ…..」
泣いていた。ちゃんと伝わっていたんだ。その場に崩れ落ち、ぐすぐすと泣き始める。
「俺っ…俺っ….オツキンにっ….見捨てられたかとっ……」
「そんな事するわけないだろ!!お前は俺の大事なパートナーじゃないか!!」
その言葉で完全に鎖が解けた。オツキンにはちゃんと伝わっていたんだと。床に座り込みぐすぐすと泣き腫らす。普段の冷静沈着な彼が唯一見せるオツキンにだけ許された甘える部分だ
顔をあげた氷虎は今までのどんな顔よりも一層素敵で、何より一番良い笑顔をしていた。その時間は永遠とも感じられると同時に張り詰めていた緊張を優しくほぐし始めていた。朝方の優しい朝陽がリビングで手を繋ぎ合う二人を優しく包み込んでいた。
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