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□仁人side
『とりあえず勇斗と仁人のダブルリーダーで』
そう言われて『え、』と思った、すぐ後に『まぁ仕方ないのかな』とも思った。
改めて5人で始まる新しいM!LK。
最年長の勇斗がリーダーになるのが一番普通だと思うけど、俺のがちょっと仕事的には先輩だし、勇斗は…俳優の仕事とかあるしね。
「俺迷惑かけるかもだけど一緒に頑張ろうな!」
笑顔で、勇斗にそう言われて
「うん、頑張ろう!」
そう返した。
頑張るしかない、もう辛い思いをするのは嫌だし俺たちの歌でダンスでパフォーマンスでたくさんの人を幸せにしたい。
本当に本当にずっと幸せなグループでいたい。…そう思う。
□□□
「佐野さん、次のドラマ決まったらしいわ〜、忙しそうやねぇ」
レッスンが終わって何となく2人だけになったとき太智がそう呟いた。
「…大変そうだから俺に任せてリーダーは辞めていいよって言った方がいいかなぁ」
「あ、いいん?」
「なんで?」
「いや、そもそも吉田さんリーダーとかやりたいタイプじゃないでしょ」
「まぁ…そうだけど」
やれと言われればやるけど、性格的に他人と関わって行くのに積極的な方ではない。
太智はオーディションからの腐れ縁で付き合いが長いから俺のことを多分一番理解しているんだと思う。
「でも合ってるとも思うで?フカン?して見てるからなんか誰にでも同じ温度で接してくれるやん」
「それ良いこと?」
「そやで〜、そんでたまに壊れてはしゃいでくれるし」
「あ、そ」
太智に改めて言われるとむず痒いな。
「それは、そう、と」
太智の声のトーンが少しだけ落ちる。
「佐野さん、そのドラマの他に映画も決まりそうって聞いたんやけど」
「あ〜、それは俺も少しは聞いた」
2人で黙り込む。
「…すごいよな、頑張って欲しい」
先に口を開いたのは俺。
「そやな、元々イケメンやけど佐野さんどんどんカッコよくなってくしな」
M!LK以外の仕事が増えて、もっと忙しくなってそっちの方に比重が傾いたら…心もきっと揺れる。
そういう仲間を見てきたから。
その度に『頑張れ』と送り出した後の苦しさも俺たちは経験してるから。
「…とりあえず俺はM!LKのリーダーとして皆を支える。俺はM!LKが一番だから」
太智がそう言った俺を見てくふっと笑う。そして背中をバンバンと叩いて言った。
「頼りにしてまっせ!!僕は平メンバーとして頑張るから!!」
「いや、お前は順番的にサブリーダーくらいだろ!?」
「いや〜レクレーション係くらいでええわ」
「お前ふざけんなよっ」
笑ってじゃれ合いながら、心の中は言わなくてもお互い分かってる。
…この先何があっても崩れない自分たちでいたい。
□□□
「ごめんな、仁人。本当は俺が一番年上なのに」
俺が一人でリーダーをやると決まってからしばらく勇斗はそう言って俺に謝ってきた。
「いいって、勇斗は他の仕事が忙しいだろ?M!LKの事は俺が纏める。勇斗は勇斗しか出来ないことを頑張ってくれよ」
安心してほしくて笑いながら勇斗の顔を見つめてそう言うと、ピタリと勇斗の動きが止まった。
『?』と覗き込むようにその顔を見上げると、勇斗がその大きな手で口元を押さえて俺を見ている。
「いや、うん、ありがと仁人。…仁人がいるからM!LK以外の仕事も頑張れる…」
「…うん、頑張れ」
勇斗は。
かっこいいし目を引くからこれからもどんどんそういう仕事で忙しくなっていくかも。M!LKの仕事よりもずっと。
心の中の濁が少しだけ揺れる、それが顔に出たのかな。
ハッとした勇斗が俺の両肩をがしっと掴む。
「俳優の仕事も頑張るけど、俺はM!LKで頑張るのが一番好き!!て言うかM!LKの事が大好き、超好き!!」
一瞬呆気にとられて、我に返ってふふっと笑ってしまう。
「お前、熱すぎ。…まぁ俺もだけど」
ふふふふふ、と笑う俺を勇斗がなんとも言えない顔で見てる。
え、それどういう顔なん?
「…いつかM!LKを日本中が知ってるグループにするんだからな!!」
勇斗の熱さに触れるのは気持ちよくて少しだけ怖かった。
□勇斗side
「あ、勇ちゃんお疲れ〜」
「なんか会うの久しぶりやね」
「リモートでは会ってるけどね」
久々にレッスン室に行くと太智と舜太がいた。
「ごめん、撮影が押してさ。…仁人と柔は次に行っちゃった?」
「30分くらい前までいたんやけどな〜、中々5人で合わやんなぁ」
「ごめん」
「いやいや、そういう意味で言ったんちゃうて」
「そや、忙しいのは結構なことやで?吉田さんからは勇斗来たら3人でもこれやっとけって言付けあるしな」
「お〜、さすがリーダーだな!」
「仁ちゃんて俺たちが苦手なとことか分かってるのが怖いよね」
「…そうだな、じゃやりますか」
「あ、ごめん!俺もあと少しで行かなならんねん。だからそれまで集中してやろ」
そう言った舜太の時間いっぱいまで3人で練習して、舜太が次の仕事のためにいなくなった後は太智と2人で、難しい振りはダンス上級の太智に教えて貰ったりして。
「少し休ませて〜」
真面目な練習から逃げるように太智が汗を拭いながらペットボトルを持って壁際に座り込んだ。
「え〜、時間いっぱいやろうよ」
苦笑いしながら俺も飲み物を持って太智の近くに座る。
「佐野さん前の仕事もあったのに元気やなぁ」
「俺、M!LKの仕事が一番好きだから」
にへ、と笑ってそう言うと太智が目を細めて言った。
「…嬉しいなぁ。それ、皆にも言ってやったら喜ぶで?いや皆そんなの知ってるけどな!」
俺が、他の仕事でも何かとM!LKの事を持ち出して言ってるのはメンバーも知ってることで時々ありがとなって感謝もされてる。
「改めて言うのは恥ずかしいじゃん」
「そやね〜、でも」
太智が、一拍置いて俺を見る。
「…吉田さんにはしっかり言っといた方がええ。あの子繊細やから」
繊細。
5人でいる時は皆で大笑いもするけどふとした時に一人で俺たち4人を距離置いて見てる。
一人一人を確かめるみたいに。
「…俺、そんなに仁人に信用されてない?」
「あ〜そゆことやなくて」
ちゃうちゃうと手で振りをつけながら太智が目を逸らす。
「…佐野さん、他のお仕事忙しいやん?今って…そっちが8でM!LKが2くらい?
それは、結構なことやで?佐野勇斗カッコイイからな!」
「俺そんなんでM!LKのこと疎かにしてるとかないよ?」
太智が俯く。
「…言いたくないけど」
それはいつもの太智とは少し違う雰囲気で。
あ、きっと太智も仁人も同じ気持ちをどこかに持ってる。この2人は俺よりもずっと一緒だったからね。
「…どっちも、がキツくなったら…またM!LKは選ばれないのかなって」
「ないから」
被せるように即答してその続きも。
「俺はどの仕事も好きだしどれも真剣にやってM!LKでも俳優でも成功するつもりだよ。
でも、でももし万が一どっちかだけしか選べないってなったら…俺はM!LKの方を取る。
M!LKが一番大切だから」
それを聞いていた太智がいつもの元気な表情になってニャハッと笑った。
「分かっとるって、俺はな!佐野さんがM!LKのTOなのよ〜く知っとる!!まぁ死なんように頑張ってなとは思うけど」
そうしてもう一回、俺にそれを頼んだ。
「でも吉田さんは俺みたいに飲み込めてない。これまでの事がまだどっかに濁って残っとる。リーダーになる覚悟したのもそれが佐野さんの重しにならないようにやろうし。だから」
あの子は繊細やから。
それでもM!LKの事を大事にしてリーダーとしてようやっとる。めちゃ頑張っとる。
「M!LKと同じくらい吉田さんのことも大切に見てやって」
□□□
仁人に最初に会った時。
可愛い、綺麗な顔してんなって思った。
さすが芸能界だなって。
でもどっちかって言うと体育会系なノリの現場に頑張って付いて行ってる子供って感じだった。
仁人は、考えるより行動!な周りと違って頭で考えて少しでもダメそうなら止めようとする。手を出さない。嫌って言う。
でも、M!LKが人気になる為にはどうしたらいいかって考えて考えて皆で決めた事は本気でやる、リーダーとしても皆を纏めてくれる。
太智に言われたからじゃないけど、早く仁人に会いたかった。
□□□
やっとM!LKの仕事として被ったのはレコーディングの日だったけど、スケジュールの都合で皆別録りだった。
しかも俺は1番目で次に来た柔太朗と舜太に軽く構ってから次の仕事に行かなければいけなかった。
『今日のレコーディングの順番って分かりますか?』
移動に付き添ってくれるのは俳優業のマネージャーさんだからM!LKの方のマネージャーさんにそれをスマホで尋く。
『今柔太朗、舜太で録ってて午後から太智、夕方から仁人で最後だよ』
仁人歌上手いからね、皆の後に合わせて声入れたりできるし。
「あの」
そばにいるマネージャーさんに頭を下げる。
「今日の仕事、できるだけ巻いて終われますか」
20時すぎ、もう21時に近い。
出来れば19時までに行きたかったのに。
朝も来たスタジオに飛び込むとスタッフたちが驚かれた。
「どうしたの?何か忘れ物?」
「いや、あの」
ダセェ、少し息が切れてる。
「仁人、終わりました?」
「吉田くん?さっき終わったとこだからまだ休憩室にいると思うよ」
礼を言って休憩室ある方へ走る。行儀悪いかも。仁人に怒られそう。
ノックもなしにバンッとドアを開けたら、座ってスマホを見ていたらしい仁人がビッッックゥ、と両手を胸前に竦ませて身体を細くしていた。驚かせてごめん。
「な、え?勇斗?お前の録り朝だったよな?何かあった?」
「あ、えっと、その…仁人に会いたくて…?」
「…何それキッショ。…まぁ、座れば?息切れてる」
仁人が自分の近くの椅子を勧めてくれたので素直に座る。
「えっと、」
「うん」
仁人はスマホを見てる。
いや、見てるんじゃなくて俺を見ないようにしてる。
「ちゃんと聞いてね?俺、今日のレコーディングも本当は5人でやりたかったの」
「…まぁその方が声とか気持ちとか合わせやすいですしね」
「ごめん、俺他が入ってて」
「そーゆーのは」
仁人がやっとこっち見た。
「気にしないってことになってるだろ。M!LKは大事、でも個人も大事。皆それぞれできることやって頑張るのが俺たちなの」
今更言うことじゃない、と仁人が睨む。
「うん、分かってる。でも俺5人でする仕事が一番好きなの」
仁人がパチパチと瞬きして、少し嬉しそうに笑った。あ、心臓に悪い…。
「…俺もそうだよ。それ言うために走って来たの?」
「うん、仁人にはリーダーとしていつもお世話になってるし、困ったこととかあったら相談して欲しいし、俺年上だから頼りにしてほしいし」
「なるかなぁ」
「なるよ!!」
揶揄うように返されて言い返すついでに襲いかかるように仁人の頭をワシャワシャすると「キャー」とか言いながら笑ってその身を庇う。
俺がデカくなったのもあるけど俺より全然小さい。
思わず。
ギュッと抱えるように抱きしめた。
「ふぁ!?なに!?」
今までもハグはその場の勢いとかノリでいくらでもしてきたけど、仁人はあんまり慣れなくていつも固まってヤメテ〜ってなってる事が多い。
固まる仁人を抱きしめたまま、その繊細なリーダーに太智にも言われたそれを伝えたかった。
「…俺はM!LKが好き。M!LKで頑張るのが好き。仁人がリーダーでいてくれること感謝してるし、仁人がリーダーだから余計俺は頑張らなきゃって思う」
仁人は固まったまま。
「仁人が頼りないとかじゃなくて仁人だから甘えられる。その代わり仁人も俺に甘えて?M!LKは絶対人気が出るしその時までその後も俺はずっとリーダーの仁人と一緒にいる」
もぞ、と仁人が身動ぐ。
「…耳元でしゃべられて気持ち悪い」
「えぇ…」
でも、仁人は俺を振りほどくこともなく自分の腕を俺の背中に回してポンポンと叩いた。
「…太智から『近々佐野さんから熱烈告白あるで〜』って言われてたんだけどこれかよ」
太智〜チクってんじゃねぇぇぇ。
「…ごめん、多分心配されてんだろうけど」
仁人が俺の腕の中で耳元でそのいい声で囁くように語り出す。
「…最初は、勇斗が他の仕事忙しくなったらM!LKよりそっち選ぶんじゃないかって思ってた。ごめん、信用してないってことじゃなくてこれまでの経験から、またあの辛いことが起きるのかもって」
ギュッと仁人が俺の服を背中に回した手で掴む。
「ごめん、怖くて。またあんな事が起こるのかなって」
「リーダーになったのも勇斗がいつでも他に行きやすいようにだったし」
「M!LKがどうなるのかも怖かった」
ギュッとさらに抱きしめる腕に力を入れると仁人が震え始めた。
あ、泣きそうになってる。
「でも、ごめん。もう、分かってる、勇斗が、M!LKのこと何よりも、大切に思ってくれてること、」
抱きしめてるから見えないけど、あの大きな目から涙が零れてんのかなと思うと何とも言えない気持ちになる。
「こんなリーダーでごめん…」
…こんなこと言わせるつもりじゃなかった。
「…やめてよ、俺が泣かしたみたいじゃん」
グズグズ言ってる仁人の頭を撫でてやると隠したいのかさらにその頭を俺の肩口に押し付けてきた。
なんだろう、この空間。
俺と仁人じゃないとダメな今が愛おしくてドキドキした。
…ずっと守りたいものってこれだなって。
「…仁人がリーダーで良かった」
落ち着いてきた仁人が少しだけ顔を上げて反則的な濡れた上目遣いで俺を見る。
黙って俺の言葉を聞いてる。
「…俺がM!LKを好きな理由のひとつだからね」
□仁人side
あれから、勇斗はさらに仕事を頑張ってM!LKの事も頑張ってまさにアクセル全開で突き進んでいた。
皆もそれについて行くようにそれぞれにギアを上げて走っていく。
その暴走がとんでもなくなると俺がブレーキ役として時々抑える、宥める。
でも俺も全力で走ってくよ、一緒に走りたいもん。
めちゃくちゃテンション上がった勇斗が時々俺に好きーとか可愛いーとか絡んでくるけど、分かったからやめて欲しい。
リーダー大好きすぎるだろ。
M!LK大好きまでで止めててほしい。
悔しいから俺から甘えてみるとキョドってしり込みして拒否るし。
え、前に甘えていいよって言ったよね?どういうスタンスなの?
「佐野さんと吉田さんが仲良くて何よりやわ」
「分かる、2人が一緒にいると安心できるよね」
「お父さんとお母さんて感じやね!」
「やめろ」
「え、どっちがどっち?」
俺は年下3人からの煽りに不満気なのに勇斗は自分から参加していく。
「稼いでるから勇ちゃんがパパかなぁ」
「仁ちゃんは口うるさいけど優しいお母さん」
「わっかる〜〜〜!!」
「お前ら、マジでやめろよ」
いきり立つ俺を宥めるように隣に座った勇斗が俺の肩を抱き寄せる。
「仁人怒んないで。俺たちの育て方が間違ってたのかも」
「育ててないし!!」
勇斗がクスクス笑う。
「でもま、一緒に成長してきたじゃーん」
太智が俺たちを見てそう言った。10代の頃から一緒にいる。それぞれからの影響は確かにある。
「でもやっぱ勇ちゃんと仁ちゃんからは育てられたって気がするんよなぁ。太ちゃんからもあるけどさ」
「年上だしね、いろいろしてもらう事も多かったし」
柔太朗と舜太が『ありがとうパパママ』オーラを放つと太智がケラケラ笑った。
「俺は近所の子でええで。この夫婦の子とか絶対嫌や〜」
「夫婦とか言うなっ」
真っ赤になって怒鳴る俺とうちのがすみませんと言うようにわざとペコペコする勇斗。
面白がってる3人。
弄られるのは悔しいけどこの5人でならずっと楽しくいられそう。
いつか、5人で天辺に行く。
太智の、柔太朗の、舜太の、幸せな顔を見たい。
でもその時俺の一番近くで一番幸せそうな顔をしてて欲しいのは勇斗だから。
お前の大好きなM!LKのリーダーとしてこれからもお前のそばにいるから。
コメント
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お疲れ様です、寺島あおいです🤍 第1話、読み終えました。もう……胸がいっぱいです。 特に勇斗くんが走ってスタジオに来て、仁人くんを抱きしめながら「リーダーでいてくれてありがとう」って伝えるシーンが本当に好きでした。まったく気持ち悪くなんかないですよ、あれは大事な言葉だと思います。 仁人くんが「怖かった」と震えながらも本音をこぼすところ、読んでいてぐっと来ました。 かぼすさんの書く“伝えたいけど伝えきれないもどかしさ”が、すごくリアルで…また読み返したくなっています。 5人で天辺を目指すお話、これからも大切に読ませてくださいね🌷