“可愛い子”
(岐阜×愛知)
「ねぇ!これどー?」
試着室のカーテンを開けて気持ちを弾ませながら聞く
「あぁ…いいんじゃない?」
愛知は相変わらずこっちを見ずにスマホと睨めっこ中である
「見てないでしょ」
せっかく休みに買い物に来たというのにさっきから仕事の連絡ばっかりで、岐阜はうんざりしていた
「ごめん今忙しいし
岐阜ならなんでも似合うからいいんじゃない?」
そう言われて少し照れた岐阜だが、すぐに口車に載せられたと思い、まだスマホを見ている愛知につっかかる
「仕事も大事だけど…せっかく来たんだよ?……それに、僕、今日のことすごく楽しみにしてたのに…」
「……そう、ごめん」
口ではそう言いながらも岐阜と目を合わせない
痺れをきたし、岐阜は愛知を置いて店を出た
せっかく…愛知と一緒なのに
期待していたものと大幅に違い、裏切られたような感覚になる
「ねぇ!待ってよ」
追いついてきた愛知が声をかける
「いや…ごめんって
連絡無視する訳にはいかないし…」
愛知は他県との関わりが盛んであるため、いつも忙しそうだ
日本三大都市だから仕方の無いことだろう
しかし岐阜の機嫌はななめなままだ
「いいですよー
1人でお出かけ楽しむから〜!仕事忙しいんでしょ!だったら僕邪魔しないから」
すごく拗ねている
まるで構ってもらえない子供みたいだ
岐阜も自分で思いながらも愛知に対するイライラも抑えきれない
「………」
愛知はついに黙ってしまった
言いすぎたかなと感じながらも元はと言えば悪いのは愛知だ
謝る気はない
スタスタと行くあてもなく歩く岐阜の後ろに気まずそうに愛知がつづく
「…あのさ」
先に口を開いたのは愛知の方だった
「ほんとごめん、自分で言ってて情けないんだど、岐阜が可愛くて…仕事の連絡…きてるフリ…してた………」
「!?!?!!!??」
意外すぎる事実に驚く岐阜とあまりのバツの悪さに俯く愛知
岐阜はしばらく固まっていた
いやいや!!さすがに可愛すぎない!?
可愛いのはそっちじゃない!?
連絡きてるフリって!
それに直視できなかったってこと!?
それでわざわざ!??!
もしかして僕のこと気づつけないために!!??
考え出すと思考が止まらない
「……なんか言って欲しいんだけど」
不貞腐れた顔で愛知が言う
「え…あ、いや僕こそごめんね
きつく当たっちゃって…」
なんとか謝罪するが実際、岐阜の頭の中は混乱状態である
なんとか平常心を保とうとしている岐阜は服を引っ張られた感覚にまた固まった
「…あ、いち?」
「…買い物…一緒にしよ、岐阜に避けられるのは嫌…」
袖を掴み、俯きながらそう言う
「…………」
岐阜は完全にショートしていた
一方で愛知は何も言わない岐阜に対してまだ怒ってるのかと恐る恐る顔を上げる
上目遣いで見られた岐阜の動きが完全に止まる
「…ねぇ岐阜…まだ怒ってる?」
落ち込む愛知を見てようやく岐阜が発言した
「そんな事ないって!!
えっと、すっごい嬉しい…!」
「…!!」
安心しているようだ
岐阜は少したじろぎながらも手を取った
驚いた顔をしている愛知をよそにご機嫌にまた歩き出す
「あ!ここのクレープ屋すごい美味しいんだって!」
「へぇ」
「食べていこ!愛知の奢りで」
「はぁ!?俺払わないけど…」
「いいじゃん!僕の顔に免じてー」
「岐阜はイケメンってより可愛いから…」
また不意をつかれる
嬉しいけど照れるものは照れる
「じゃ、じゃぁ!僕買ってくる!」
いそいそとクレープ屋に向かう
こんな顔愛知にあまり見られたくない…
「はい!どうぞー」
定員から商品を受け取ると顔のほとぼりもさめていた
2つクレープを持ちながら愛知の元に戻る
「はい!愛知の分!」
「え、別によかったのに」
「えへへ愛知は可愛いよりイケメンだから!」
ドヤ顔で言う
愛知は”そう”とだけ返した
照れてるんだなー可愛い~!
そんなことを考えながらクレープを口に運ぶ
「美味し~!やっぱり噂になるだけあるよね!」
そう言って横を見ると愛知の口元にクリームがついている
「あ、ここ…」
そういいながら指で拭う
「あ…、…あり…がと」
ぎこちないお礼をする愛知に岐阜は笑顔で頷いた
コメント
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無意識にガッツポーズしてた