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lrru
lr「」学生
ru『』先生
rb〈〉先生
?〔〕
ローレン視点
行為が終わり二人は静かに息を整える。各々乱れたシャツのボタンを丁寧に留め直し、ネクタイを整え、髪を指で軽く梳く。先生だけが床を拭き教卓を元の位置に戻すなどと、今までの行為が恰も無かったかのように処理を済ませる。
〈じゃあね、小柳くん〉
『あっ…』
星導先生は柔らかく微笑んで軽く手を振ってから先に部屋を出て行った。
先生は少しの間、棚に寄りかかったまま深呼吸をした。表情を不満そうな顔からいつもの教師の顔に戻そうとしていたそのとき、俺は資料室のドアを勢いよく開けた。
『!!』
「…先生」
低い声で呼び、先生の腕を掴む。
「ちょっと来て」
まだ近くに星導先生がいるかもしれないと思い、俺は先生の腕を引いて屋上へと連れて行く。
屋上は少し風が強く、フェンスの向こうでは空を焦がすような夕陽がゆっくりと沈み始めていた。
俺は先生を真正面から見つめた。
「俺っ…さっきの、見てた。星導先生との…」
あれ、なんか上手く喋れない。こんなに人の顔見て話すのが苦手になったのか?俺
先生の表情は一瞬、固まった。
『そぅ、なのか…』
俺はできるだけ感情を抑えるため、下唇を噛み拳を軽く握りしめ、先生に質問を投げかける。
「何で星導先生とあんなことしてた…どういう関係?」
先生はしばらく黙っていたが、観念したかのように小さく息を吐いた。
『高校からの、ただの友達…』
「は?んなこと信じるかよ!」
脅すかのようにして顔を近づける。先生の襟元は、俺の乱暴な掴みによってさっき綺麗に整えられたはずなのにもうしわしわなようで。
「…誤魔化せるとでも思ってんの?」
少しずつ自分の声が震えていくのがわかる。
『…っ、』
「セフレなんだろ?なんで隠そうとしてんだよ」
「いーの?俺にそんなに反抗的になっても」
だんだん先生の顔が暗くなっていく姿をみて少し可哀想だと思ってしまった。自分で言っておきながらだが、そうでもしないと話してくれないような気がして。
『……俺が、星導からお金をもらうために何でもするからって言って、それから…ヤることになって』
「は、?まだ他にもお金貰ってヤってる相手はいるってこと?」
先生は必死に首を横に振った。
『いないッ、今は星導だけ。君みたいにまた誰かにバレでもしたら…』
「じゃあ、そもそも何でお金貰ってそんなことしてんの?ただ夜遊びしたいだけっていう理由だとは思えないけど」
『それはっ…』
俺は先生から一瞬も目を離さない。すると先生の視線が、わずかに遠くなった。フェンスに背を預け、静かに言葉を続ける。
『過去に…助けてもらった恩人がいる。その人の医療費を払うためなんだよ。教師の収入だけじゃ到底足りないからな、』
俺は息を飲んだ。
「恩人…」
『…あぁ、高校生の頃、事故に遭いかけた俺を庇って助けてくれた人。そのときの支障が大きくて今も入院中。』
胸に、チクリと痛みが走る。思っていたよりも重い話で俺は上手く言葉を返すことが出来ない。
いや、あんなに大きなリスクを負っている以上、軽い理由じゃ済まないよな
『自分で言ったから。このお金は全部俺が払いますって…その人は断ってくれたけど、俺が決めたことだから。』
辛さを隠すかのように微笑む先生に俺は思わず声を荒げた。
「…でもそんなやり方、相手は望んでないだろ!!もっと自分を大事にしろよっ…!」
「…っあ、ごめん、なさぃ」
思ったことをつい口にしてしまった。関係ない俺が今口走っても、きっと先生は簡単にはこの言葉を受け止めてはくれないだろう。
先生は軽く首を横に振って目を細め、涙ぐんだ瞳で俺を静かに見つめ返した。
『いや、ローレン君が謝る事じゃない。…ただ、本当にこうするしかなかったんだ。』
『…まぁもうあんな真似はしないよ。もうすぐで全部払えるようになるし、また教え子にバレるかもってのもあるしな』
屋上の風が強く吹き、先生の髪が乱れて夕陽に照らされた綺麗な顔が露わになる。そしてふっと軽く笑い、柔らかい表情で俺の頭をポンポンと優しく叩いた。
俺の心臓がドクン、と大きく鳴り、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。
先生のこんな表情、初めて見た。 強がっているのに、脆くて、守りたくなるような
先生は頭を優しく叩いた後、髪を乱すようにぐしゃぐしゃと荒々しく撫でた。
「っ!えっそれはわざとじゃない!?」
大きな声でかつ語尾を上げてみたりなんてすると、どこか辛そうな顔から心の底から楽しそうに笑う先生の姿が視界に映る。
え、やば。なんか急に直視できない
俺は頭に乗せられた先生の細くて色白な弱々しい手を掴み、空気を和ませたその流れに乗って声のトーンを少し上げる。
「てか、めっちゃ喋ってくれるやん笑」
『ふっ笑めっちゃ喋ってるなぁって俺も思った笑』
フェンスの向こうで沈みゆく夕陽が静かに照らし、二人がより細身にみえて心配してしまうほど影は長く引き伸ばされた。
翌日の昼休みの屋上は昨日と同じように風が少し強かった。
俺はベンチに腰を下ろし、朝にコンビニで買っておいたペットボトルの麦茶と漬けマグロ入りのおにぎりを手にしながら、ぼんやりと空を見上げていた。頭の中は昨日の先生のあの笑顔でいっぱいだった。
〔お、ロレいんじゃん〕
「…おぉイブ」
俺のクラスメイトで、ちょっと気怠げな雰囲気を纏うイブラヒムは、手にサンドイッチの袋を提げて俺の隣に座った。
〔なんか朝から顔色悪くない?どうした〕
「ハっ、やっぱわかる?笑」
俺は少し迷ったが、相手が先生だということは伏せたまま、ぼんやりと相談を切り出した。
「……気になる奴がいてさ、」
〔マジ? …いや、ロレのことだからどーせまたセフレの話だろ〕
イブは遊び人である俺のことを何でも知ってんぞというような表情で俺を見る。
ゔっ、強ち間違ってないから否定しにくい。
「…っぃやあ、まぁ身体の関係から始まったけど、」
イブはサンドイッチを一口かじりながら、静かに耳を傾ける。俺は言葉を続けた。
「最初はただの欲というか、、相手の秘密を握ったから脅しとして…なんだけど」
〔お前やばぁ〕
本当に心の中からそう思ってんのか??
軽く言うイブに問いかけたい気持ちはあるが、今は俺のターンだ。唯一気を許せる相手だからこのまま全部話そう。
「でも、昨日その人の過去の話聞いてなんか胸が苦しくなって。守りたいって思ったりして…」
昨日体験した初めての感覚をイブに打ち明けると、イブはペットボトルをもつ手を一瞬止めた。その後ゆっくりと頷いた。
〔へー。珍し〕
「は?どういうこと」
〔それさ、多分恋じゃね?守りたいとかその人のことばっか考えてるとか、典型的な現象だし〕
俺はハッとして、イブの方を見た。イブは真剣に言葉を紡いだ。
〔そいつの身体目当てじゃなくて本気で好きだってことじゃん。え初恋じゃね?〕
俺は黙って自分の膝を見つめた。イブの言葉が、胸にずしんと響く。
そうだ。
先生の涙の浮かんだ笑顔を思い出すだけで、心臓が痛いくらいに激しく鳴る。もう、ただ欲を満たしてるだけじゃない。本当に、先生のことが好きだ。
これが恋、なのか…
風が屋上を吹き抜け、俺の髪を軽く乱した。
「俺決めたわ!」
俺はすでに冷たくなったおにぎりを一気に口に含み、立ち上がって屋上から去った。
神視点
暖かな風が二人の間に静かに流れた。
イブラヒムはふっと微笑みながら、静かな声で呟く。
〔ロレ、マジで好きな奴出来たのか〕
その言葉には、どこか優しさと、少しだけ寂しげな響きが混じっていた。イブラヒムは空を見上げた。
〔……俺じゃ、ダメなのかよ。〕
つづく
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