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コメント
1件
まぁそりゃそうよな() でも神様の「だから一緒にいて」は 心臓に悪かったですね👈 投稿ありがとうございます‼️
幼い子どものような拙い話し方に行動。でも見た目はスラッとした大人で、成人男性のような低い声をしている。
オリノカミ様の事はまだまだどうしても分からない事ばかりだ。
「いきなり、好きって言われても」
私は昨日の首元へのキスや好きという言葉を思い出して布団にもぐった。
日付は変わったが私が寝ている場所は変わっていない。相変わらず、ここどこ状態だ。
「おは、よ」
「あ、オリノカミ様。おはようございます」
「昨日は、ごめん…」
しょぼくれた様子で謝罪するオリノカミ様がなんだか可愛らしく見えた。
「いいんですよ、私も突き飛ばしたりしてすみません」
「俺が、ツユ嫌な気持ちにさせた、から。だ、だから俺、もっとツユの事知りたい」
「私の事を知りたい、ですか」
本当にまるで幼い子どものようだった。
推定約ニメートルの身長を除けば、だが。
「何から知りたいですか?」
「何から…」
おやつを選ぶ子どものように一生懸命悩むオリノカミ様。顔が見えなくても動作がとても分かりやすい。
「…好きな、夢」
「好きな夢!?またまたマニアックな質問を…でもそうですね、あまり考えたことが無かったですが」
好きな食べ物や色ではなく夢。何を考えているのかが全く読めない。
「星を眺める夢ですかね」
「星? 」
「はい、大好きな場所で、永遠に広がる星空を眺める夢を見たときは朝から幸せな気分になります!そういうオリノカミ様はどうですか?」
オリノカミ様はまた、悩む動作をし、私の顔を覗き込みながら言った。
「ツユと一緒にいられる夢だ」
耳が赤くなるのを感じた。
こんな出会ったばっかの得体の知れない人?神様?にキュンとするなんて有り得ない!
オ、オリノカミ様もオリノカミ様よね、出会ったばっかの娘を誑かすような事ばっかして……。
「この話は一旦無しです!それより私に服を下さい、というか家に帰して下さい!」
「服は、これしか、ない」
そう渡された服は巫女のような装束だった。
「それと、あっちには、帰さない」
「な、何でですか!」
「ツユが好きだから」
「なっだから、そういう言葉は軽々しく口にしちゃだめです!私の事何にも知らないくせに」
オリノカミ様が言う好きという言葉に裏切られたくない、そう思ってしまった故の言葉だった。
案の定、オリノカミ様は肩を落としてしまった。だが、それだけではなく、オリノカミ様は私の肩を掴んで真剣な声で言った。
「でも、知ろうとしてる。ツユ、のこと」
「……」
何も言い返せずに黙っていると、私のお腹の音が部屋中に鳴り響いた。
「お腹、空いた?…こっち」
恥ずかしさと空腹に押しつぶされそうになりながら、オリノカミ様の後ろを着いて行った。
すると、目の前に広がるのは豪華でキラキラと輝くご馳走だった。
「な、なんですか!?」
「朝ご飯」
どう見ても朝ご飯の量を超えているのだけれど……。
でも、一口食べると箸が止まらなくなって、また一口、一口とスピードも早くなった。
「美味しい!」
「良かった、ツユ、喜んで、くれて」
「も、もしかしてこれ、オリノカミ様が作ってくれたんですか?」
恐る恐る聞いてみると、オリノカミ様は小さく頷いた。
「天才ですか!?美味しすぎて毎日食べたいくらいです!」
あまりの美味しさについそう言ってしまった。
「じゃあ、毎日、作る」
「え?」
「だから、一緒、いて?」
そう来たか……。
確かにこんなにも美味しい料理を毎日食べられるのはとても魅力的だ。
でも、こんな何処かも分からない場所で何かも分からない人?神様?と暮らすなんてやっぱり私には難しい。
「これから私が聞く質問に全部答えてくれるなら、いいですよ」
逆を言えば、私はオリノカミ様とここの正体が分かればいいのだ。
現実に戻ったとして、楽しみなんてあの星空くらい。
「…分かった」
渋るような声で承諾してくれた。
「まず、ここは何処ですか?」
「俺の、境界」
境界?え?待って待って、そんな漫画みたいなことある?ここって境界なの?
「じゃ、じゃあ貴方は一体…」
「神?」
「なんで本人が疑問形なんですか」
「でも、多分神ってやつ」
薄々気づいてはいたけれどやっぱり、オリノカミ様は神様だったんだ。じゃあ何の神様なんだろう?
「なんの神様なんですか?」
「…糸?」
そういえば一昨日、変に光る糸を見つけて、それからオリノカミ様と出会ったな。てことはオリノカミ様ってもしかしてあの光る糸だった!?
「もしかしてですけど、光る糸に変身出来たりしますか?」
「出来る」
てことはやっぱりあの日の糸はオリノカミ様だったんだ。
「もう、いい?準備、あるし」
「何の準備ですか?」
「カンナギの」
「カンナギ…あ、巫!そうですよ、私を巫にするってどういう事ですか!」
『ツユ。お前を、俺のカンナギにする』
あの言葉がどういう事なのか、一番聞きたかった事を聞くのを忘れていた。
巫は本来、神様に仕えたり、神降ろしをする人。
ということは私、もしかしてオリノカミ様のメイドみたいなものになるって事?
そんなの無理だよ、誰かに仕えるなんて不器用な私に出来るはずない!
「えっと、カンナギは… 」
ごちゃごちゃと考えていると、オリノカミ様が何故か言葉に詰まりながらモジモジしていた。
「何モジモジしてるんですか、そんなに言いにくいことですか?」
「カンナギ、はその、神?の嫁って意味、だから」
「…え?よよよよよ、嫁!?」
ちょっと待ってください?私の聞き間違いじゃなければ、カンナギは私が想像している巫ではなく、神の嫁って意味だったと。
「私が、オリノカミ様の嫁になるって事ですか?」
「うん」
即答…私、まだ人とも付き合ったことないのに、結婚相手がまだよく知らない神様なの?そんなの、そんなの……。
「…私、無理です」
私はそう、言い放った。