テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

Zeppライブ終了後___
Zepp難波とZepp羽田。2日間の俺たちの大きなライブはあっという間に幕を閉じた。数年前に動画内で俺が発言した、念願のZeppライブ。感動と余韻に浸って浸って、その時の情景から抜け出せないままの頭で今を生きていた。ベッドに転がって、携帯を眺めながらエゴサーチでライブの感想を見ていく。リスナー達はそれぞれ楽しそうな写真を載せていたり、たくさんのグッズの写真を載せてくれていたり。本当に俺たちのためにここまでしてくれるリスナーには頭が上がらないなと思う。

SNS周辺の通知をチェックをしていて、ふと、なんの通知も入っていないニキのメッセージ欄を眺めている。ライブに至るまでの最近の2人の会話。俺たちは随分と浮かれたテンションで会話をしていた。いつもよりも言葉数が多くて、ニキと繋がっている時間も多かった。それが少し特別に感じて嬉しかった。2人だけで打ち合わせしたり、ネタ合わせをしたり。全体会議よりも特別な2人だけの時間が、やけに俺は楽しかった。おかげで俺は喉が絶不調の割には最高のライブを作り上げることができたと思う。本当に良かった。そんなことを考えている。


「……あ、なんや」


【今家いる?】


突然、ニキからの淡々とした短いメッセージが届く。


「おるけど……なんやろな」


【いるけど、何?】


返事を返すが、速攻で既読が付く。トーク画面を開いたままでメッセージを送ったのだろう。返事が送られてくる前に、家のチャイムが鳴った。


「は?」


「お、いたいた〜」


「急に凸りに来るなや、何?」


「まぁまぁ、ちょっと入れてよ」


「ええけど、なんなんよ」


「ライブの打ち上げ!2人で。ね」


差し出してきた袋の中にはお菓子やら酒のつまみ、各種酒類が入っていた。近くのコンビニで適当に買ってきたものだろう。昔からの俺らの定番のものばかりが入っている。


「来るなら事前に言えや、なんもしとらん」


「いいよ別に、いつもなんもしないでしょ」


「まぁな」


「とりあえず、ほら。乾杯しよ」


「おう、ありがとな」


「じゃあ……Zeppお疲れ様!」


『乾杯』


そこから、特に特別な雰囲気もなく、いつも通りのテンションで今回のZeppライブの思い出やZeppに至るまでの苦労話、最近のメンバーの話、今後の話。女子研究大学としてどうしたいのか、互いの夢を話した。時折、将来を見据えているかのように微かな希望を込めたようなニキが見せる真剣な目を、俺は見逃さなかった。隣に座るニキの肩にたまに触れる瞬間の温かさや、こいつがいてくれるからこその安心感はZepp以前よりも増しているような気がする。Zepp羽田では喉が完治していない中でのニキと2人の歌唱もあって、ケミカルライトを歌いきることが出来たのはニキのサポートがあったからこそだとも思う。突然の衣装交換も、なんだか新鮮な気分になって俺たちは2人でひとつの共同体としての力も持っているんだろうなと、熱い気持ちになった。そんなことを、酒を混じえながら笑いあっていた。


「歌の時のさぁ、ボビーの目。めちゃくちゃかっこよかったよ。マジで」


「マジ?やけに目合うなぁとは思っとったけど。やっぱ合わせに来とったよな」


「もちろんね。歌もいい感じになるの分かってたし。ボビーのステージの上にいる時の目を焼き付けて起きたかったからなぁ」


「お前もめちゃくちゃキラキラしとったで」


「ほんと?ずっと王子様できてた?」


「いや、前半はバケモンだったけど」


「なんだよー!かっこよかったろ!」


「はいはい、かっこよかったで」


ニキは嬉しそうな顔をして俺を見つめる。無駄に綺麗に整った視線がまっすぐ俺に向けられている。


「本当にかっこよかった?」


「もちろん」


「どれくらい?」


「んー、まぁ……俺ん中で、1番やな」


「裕太も、僕ん中で1番かっこよかったよ」


ニキの手が俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。少し適当に感じるが、いつもニキはこうやって俺を愛でる。


「ありがとな」


「ついに全顔見せちゃったね?はぁーあ、もう裕太の可愛い顔独り占め出来なくなっちゃったよ」


「ちゃんと顔見せんのはああいうデカいライブの時だけやから。普段は独り占め…?とかできるんやないの」


「それでも、もうらみんなに知られちゃったから。この可愛い目も…鼻も、唇も」


「…っ」


一つ一つの部分をなぞられるように触れられて、最後唇に軽いキスをされる。久しぶりで、少しドキッとする。ライブのおかげで最近は二人きりの時間もあまり取れておらず、こういう触れ合いはやけに久しく感じた。


「あーあ、可愛い目しちゃって。ライブの時のギラギラした目はどこいったのさ」


「うるさいな」


「こっち見て?」


「……ん…ぅ」


また唇を塞がれる。軽く触れたと思ったらまた塞がれてニキの匂いと味がする。卑猥な音を立てながら絡まり合う舌の感覚に蕩けてしまいそうになった。薄く目を開けると、ニキも俺の事をまっすぐ見つめていた。その目は酷く甘く、官能的に見えた。


「見てたんだ」


「…お前もやろ」


「蕩けちゃって」


「うるさい」


「もっと欲しいの」


「……さぁ」


「欲しいんだ」


「どうやと思う」


「素直じゃねぇなぁ」


「んっ……ぁ…ッ」


少し強引に頭を引き寄せられて、自分のペースでの呼吸は奪われてしまった。すぐ舌を入れてきて、絡め盗られるようなキスをする。甘いだけじゃなく、少し重たくて貪欲な。ニキも久しぶりだから飢えていたのだろうか。それともただの考えすぎだろうか。呼吸がニキのペースに持っていかれてしまって、自分は乱れた呼吸のまま頭の中が白く染まっていく。段々と体から力が抜けてきてしまって、互いにソファーに座っているのにも関わらず、ニキに少しだけ身体を預けてしまうような形になる。


「顔、熱くなってんよ」


「……お前のせい、やろ」


「こっち見ないと続きしてあげないよ」


少し得意気で意地悪な声で俺を誘う。思わず一瞬しっかりとニキの目を見つめてしまって、意図にすぐ気づいた俺は即座に目線を逸らす。


「はいはい、こっち見ようねー?」


「むぅ…っ」


頬をグイッと少し強引に掴まれて無理やり目を合わせられる。目が合った。と、認識している頃にはもう唇から呼吸が出来なくなっていて、ニキの熱い吐息だけが俺の中に入ってくる。お酒の力もあるのか、少し熱を持った舌の感覚に酔いしれるように脳内が浮遊したような心地良さに襲われている。


「可愛いねぇ?裕太くん」


「弄ぶんやない……って」


「あんなにファンサしてギラついてたしろせんせーが、ニキくんの前だとこんなに蕩けた顔しちゃうんだ」


「…煽んな」


「本当はキュンとキてるくせにさ」


「生意気やぞ、お前……ッん…ぁ」


また言い終わるまえに、悪戯な顔をしてキスをされる。俺を弄んでいる時のニキのこの顔が、俺は何故だか楚々られてしまいたまらなく好きだった。苦しいくらいに口を塞がれる。手は自然とニキの胸の辺りを掴んでしまう。まるで引き寄せられるかのようにして手に力が入る。ニキも俺の腰に手を当てて逃げられないように捕らえている。俺は逃げないのに。


「裕太、ベッドいこっか」


「……好きにせぃ」


「かわい。おいで」


額にそっとやさしいキスを落とされて、

俺たちはまた手を繋いで、

2人きり夜の海に溺れていく。

この作品はいかがでしたか?

1,084

コメント

2

ユーザー

久しぶりの更新ありがとうございます!!!!!!︎🫶🏻まじで尊い🤦‍♀️💓Zepp成功してよかったですよね!‪🫰🏻🎀🤧

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚