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さかな
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第1話 前半
俺とじんとが付き合ってるってことを知ってる人は、ほんの少しだけ。
表ではいつも通り。
仲間として話して、笑って、ふざけて。
でも、誰もいない帰り道とか、部屋の中だけは違う。
「じんと」
「ん?」
名前を呼んだだけなのに、じんとは少しだけ顔を上げる。
「なに?」
「いや、呼んだだけ」
「なんそれ」
呆れたみたいに笑う。
その顔を見て、俺は思わず口元が緩んだ。
「今笑ったやろ」
「笑ってない」
「いや笑ってたって」
「だいちが変なこと言うから」
「俺のせい?」
「そう」
即答。
こういうところ。
普段はしっかりしてて、周り見てて、頼られることも多いくせに、俺の前ではちょっとだけ素直になる。
「じんとさ」
「なに」
「ほんま可愛いよな」
「……またそれ?」
じんとはため息をつく。
「だいち、最近そればっか」
「だって可愛いからしゃーないやん」
「どこが?」
「全部」
「適当」
「適当ちゃうって」
俺が言うと、じんとは困った顔をする。
その顔もまた可愛い。
「ほら、今の顔」
「なに」
「可愛い」
「もういいって」
そう言いながら、じんとは俺から離れない。
本当に嫌なら、もっとちゃんと言う。
だから俺はやめられへん。
「じんと」
「ん?」
「俺がこんなん言うの嫌?」
少しだけ間が空く。
「……嫌じゃない」
小さい声。
聞き逃しそうなくらい。
「え?」
わざと聞き返す。
「聞こえてたでしょ」
「もう一回聞きたい」
「嫌じゃない」
「はい、可愛い」
「意味分からん」
じんとは笑った。
その笑顔を見るだけで、今日一日頑張ってよかったって思える。
でも。
最近、少し気になることがある。
じんとの様子。
俺といる時はいつも通り。
いや、いつも以上に優しい。
でも、たまに。
急に距離を取る。
俺が近づいたら、一瞬だけ迷うみたいな顔をする。
「じんと」
「ん?」
「なんかあった?」
「え?」
「最近ちょっと変」
そう言った瞬間、じんとの表情が止まった。
一瞬だけ。
ほんの一瞬。
でも俺には分かった。
「別に」
「その言い方、絶対なんかあるやん」
「ないって」
「嘘つく時、目そらす癖ある」
「……」
黙った。
図星。
「ほら」
「だいち、見すぎ」
「見てるよ」
「……」
「好きな人やから」
言ったあと、自分で少し恥ずかしくなる。
でも、じんとはもっと困った顔をした。
「そういうの、急に言うのずるい」
「なんで?」
「返事できなくなる」
「じゃあ返事せんでいい」
「え?」
「俺が勝手に言ってるだけやし」
そう言うと、じんとは少し笑った。
でも、その笑顔の奥にまだ何かある。
俺はそれが気になった。
数日後。
じんとがいつもより静かだった。
みんなといる時は普通。
笑ってる。
話してる。
でも、俺には分かる。
無理してる時の笑い方。
「じんと、ちょっとこっち」
「ん?」
人がいないところに呼ぶ。
「今日どうした?」
「だから何もないって」
「またそれ」
「ほんとに」
「俺には言ってよ」
その言葉に、じんとの顔が少し曇る。
「だいちには……」
「ん?」
「迷惑かけたくない」
その瞬間、胸がぎゅっとした。
「迷惑?」
「だって」
じんとは目を伏せる。
「俺が重いこと言ったら、だいち困るでしょ」
「困らへん」
「でも」
「困らへんって」
少し強めに言った。
じんとは驚いた顔をする。
俺はそんな顔を見て、声を落とした。
「じんと」
「……」
「俺、じんとの彼氏やで?」
その言葉に、じんとは黙る。
「頼ってほしいって思ってる」
「でも」
「でもじゃなくて」
少し近づく。
「俺、じんとのこともっと知りたい」
「……」
「かっこいいところだけじゃなくて」
「……」
「弱いところも」
しばらく沈黙。
そして。
「だいちはずるい」
「また?」
「そういう言い方されたら、何も隠せない」
その瞬間。
やっと少しだけ、じんとの壁が崩れた気がした。
でも。
まだ、じんとが距離を取っていた理由は分からない。
俺はそれを知るために、もっと近づくことにした。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡500
コメント
2件
塩レモン最高です😭😭💖💖💖 次も楽しみです!!!!
うわああああ〜!第1話からでもうこの尊さやばすぎる😭💕 だいちの「弱いところも知りたい」って言葉、刺さりすぎてもう無理…! じんとが「迷惑かけたくない」って言うところも、隠そうとしてる感じも、全部リアルで切なくてキュンが止まらなかったよ!! 2人の距離感がゆっくり縮まってく感じ、これからどうなるのか気になりすぎる〜!続きめっちゃ楽しみにしてるね!!🌸✨