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⚠️政治的な意思はございません。

⚠️WW1&2の表現が含まれています。

⚠️🇩🇪×🇦🇹





















夕日が部屋を照らしている。

オレンジ色に染まった教室。

そこには影が一つ、落ちていて、

美しい音と共に動いている。









今日は俺が、学校の見回りの担当だった。

見回りというのは退屈で、孤独だ。

この学校、生徒の人数は少ないのだが、校舎がめっちゃデカいため、学校全体を見回りするのは、とても骨がおれる。



ふと、長年使われていないと思われていた部屋から音楽が聞こえてきた。


この音は、ヴァイオリンだろう。

最近は弾いていないが、昔は毎日のように弾いていた事を思い出す。


段々と、楽しかったあの日々が蘇り、

部屋の美しいヴァイオリンの音を聞いているうちにのめり込んでしまい、

気がついたときには手は扉に伸びていて、そのまま無意識に開けてしまった。


しかも、

扉の開く音に気が付いたのか開けた瞬間彼と目が合ってしまった。


「あ、すまん…」


「……ドイツ?」


目が合ってしまった驚きで視界に彼を収められていなかったが、見覚えのある声にはっとする。

彼は旧友、オーストリアだった。

彼の表情は、驚いたのか、不思議に思ったのか分からない顔だった。

手にヴァイオリンを持ったまま話し始める。


「こんなところで何をしてるんです?」


「いや…こちらの台詞だが」


今は放課後であって、本来ならば人がいないはず。


「ああ、少し懐かしく感じてしまいましてね…」


オレンジ色の空を見ながらヴァイオリンを持っている彼はそう呟く。

彼の言葉を切り取れば青春ドラマの一部にはなりそうだが、質問の答えになっていない。

そんな事を思っていたら、今度はくるりと回って此方を見てきた。しかも、彼は産まれたばかりの雛を見るような目をしている。


「…貴方、昔は可愛いかったのに」


…は?今なんて言った?

「……可愛いくなくてすまんな?」


唐突な彼の言葉に戸惑いながらも、初めに出た言葉は自分でも感じるほど、怒りの感情を込めていた。





-オーストリア視点-


うわぁ…ドイツ怒ってます。

口が滑ってしまいました⭐︎


「ひぇ!…もう!怖いですよドイツ!」


「ことの発端はお前だろう…」


「まぁまぁ、そんなカッカしないで!少し昔の私達の話でもしませんか?」


「まあ、いいが…」












ふと、窓ガラスを見ると鏡に反射して映っている私達が見えた。

何故でしょうか、一瞬昔の私達に戻ったような気がしました。


「…昔の私達とはいっても、私達自身ではない自分ですけどね!」


「嗚呼、そうだな。…ん?お前は先祖様の記憶を持っているのか?」


「ええ、曖昧ですが殆どは持っていますよ。ドイツはどうなんです?」


「…俺は多少はあるんだが、前々のやつの記憶は曖昧だ。多分、自分が消したかった記憶なんだろうな。」


空気が重い。

何となく彼が消したかった記憶は伝わる。

まあ、私も被害者の1人でもありますから。


いや、私は加害者なのかもしれませんね…


「そうですか……」


「そういえばオーストリア、さっき昔は可愛いかったと言っていただろう?…何故だ?」


「ああ!それはですね…」




話は弾み、気づいたら30分も時が経っていた。



間違いだった。

私が不意にWW1の話題を出してしまったのだ。

まあ、あの時は同盟を築いていたからか、懐かしく感じる思い出が溢れかえったが、矢先は悪い方向に進み…



貴方は急に重たそうな口を開き、こう言った。


「…ごめんな、ごめん。あの時は本当にすまなかった。」


ああ、多分記憶を思い出してしまったのだろう。

確かに貴方の先祖がしたことは非常に悪な行動だが、実際。

こちらも昔、貴方を支配していたのだ。


それに……


私がいなければ貴方は苦しむことがなかったはず。


本当に、本当に謝るべきであるのは、


私の方なのに…


「何故、謝るのですか?謝るべきなのは私です…」


「覚えてるだろ?俺が自分勝手にお前の家に入ったこと。」


「ええ、もちろん。」


「だかr「ですが!」


「あれは貴方のせいではないでしょう?むしろ、私がいたから……です。」


その言葉を聞くと、ドイツは何かを思い出したのか、その後の言葉につまっていた。

そんな彼を見るのは久々で、そして懐かしく思えた。


「…そんなことより、楽器を一緒に弾きませんか?」


今は貴方との時間を大切にしたい。

同じ言語を使う仲間。

同じ趣味を持つ仲間として。


「…!あ、嗚呼。」


良かった。

私と貴方との共通の趣味である音楽。

きっと、これがある限り、私と貴方の関係は薄れないでしょう。


「音楽大国同士ですからね。容赦しませんよ!」


「容赦って何だ…音楽に戦いはないだろう?」


「ふふ、そうですね、音楽にまで戦いを持ち込むのは嫌です!楽しく弾きましょう!」


「勿論だ!」


そういえば、見回りの途中だったな…

あら、私も手伝いましょうか?

それはありがたいな!


そんな会話が聞こえる。


夕方の光が差し込む部屋に、

2つのヴァイオリンの音が響いていた。


その音色はどこか懐かしく、優しく、

二つの揺れる影を教室に残し、

オレンジ色の夕日に向かって流れていった。


















Dank fürs Lesen!

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