テラーノベル
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俺の恋人は、とても自己肯定感が低い。
前いたところで一体どんな扱いを受けていたのかと怒りに震えるほど、自分は無価値だと決め込んでいる。
そんな彼女を自分のモノに繋ぎ止めるのに、曖昧な態度をとって我ながら酷いことをしてるのは自覚済みだ。
「(また自分は…って顔で俺たちのこと見てたな)」
3人で話をしたり、集まってる時トラゾーは絶対に近付いてこない。
ちょっと寂しそうな顔をして邪魔をしてはいけないとその場から離れていく。
俺たちは一度だってトラゾーのことを邪魔だなんて思ってないのに。
まるで自分はいなくてもいいんだというように離れていく。
そんなトラゾーに俺は気付いていても声をかけなかった。
ぺいんとたちも俺のすることに対して何も言わない。
確かにトラゾーは他のとこにいた。
扱いはどうであれ、優秀な軍人だというのは今の働きを見てても思う。
それを俺たち…いや、俺が引き抜いたのだ。
彼女は拾ってもらったと思ってるようだけど、実際は違う。
俺がそうなるように仕向けて俺のところに来るように仕組んだ。
何がなんでも自分のモノにする為に。
トラゾーのことを周りの人間に知られないように手を回してるのも、そうさせてるのも俺だ。
「……俺のトラゾーなんだから」
前線にだって出したくない。
なんなら潜入だってさせたくない。
危険な目に遭わせるくらいなら閉じ込めて繋ぎ止めておきたいとさえ思ってる。
でもそんなことしたらトラゾーに絶対に嫌われるというのも分かってるから。
「トラゾーに嫌われたら、」
俺は何をするか分からない。
それこそ自己肯定感の低さもひっくるめて、どんな手段を用いてでもわからせる。
それは、俺の中で決定事項だ。
俺以外のことを考えないように、俺のことしか分からないように。
「…ははッ、重っ」
こんなに人に対して執着したことがなかった。
俺の中ではぺいんととしにがみくん、部下、その他大勢、だったから。
トラゾーはそんな俺の認識を変えてしまった。
踏み込まれたわけではないのに、俺のテリトリーにトラゾーはすんなりと入ってしまったのだ。
「俺が実はこんなんだって知ったらトラゾー逃げちゃうかな、」
絶対に逃さねぇけど。
「牽制だって、嫉妬だってするよ。自分の恋人を他人に見せたくないのなんて当たり前じゃんか」
私はしにがみさんみたく可愛くないですから、と遠慮がちに言うトラゾーの困った顔。
そういうのが可愛いんだよ、と思う。
俺からすればトラゾーがどんな格好をしてようと可愛いものは可愛いし、俺の恋人は綺麗で美人だ。
見た目も人柄でも、贔屓目なしに自慢できる。
でも、トラゾーが知らない。
どれだけ好意を向けられてるかを。
知るはずない。
俺が揉み消してるから。
「俺のトラゾーに近付こうとするから」
その他大勢の手駒が減っても別になんとも思わない。
「総統失格だなぁ…」
トラゾーは覚えてるのか分からないけど、彼女をここに引き入れる前に俺は会ってるのだ。
あの時俺は顔をほぼ隠していたから、俺が一方的にトラゾーの顔を知ってただけだけど。
今よりももう少し髪が短く、素顔を晒してた頃の彼女に。
ヘマをして軽い傷を受けた俺をトラゾーが助けてくれた。
自分でどうにでもできたけど、何者かも分からない俺を庇う彼女の正義感の強さと、芯のある緑色の目に一目惚れをした。
今思えば敵だったのになと思う。
下手すれば俺に殺されてたかもしれないのに、手負というだけで庇ってくれたトラゾー。
なんで助けたのかを聞いたら、トラゾーはあっけらかんと、さも当たり前のように答えてくれた。
『助けるのに、理由がいるんですか』
と。
悪い人には見えないから、そうとも言ってた。
敵である俺を庇ったことにつけ込んで、ここに来るように仕向けさせたのだけれど。
一目惚れってのは唐突だし、どんな状況かなんて分からないものだ。
ただ、あの緑に映るのが自分だけになればいいのにと思ったからこうして俺のところに引き留めている。
ポン酢2
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トラゾーに触った人間は消してきたし、あの男も例外じゃない。
助けに入った時の苛立ちと不安に揺れてた表情が俺を見てホッと安心したように緩んだ顔も、一緒にいろんなところを周ってる時に無意識に見せてくれた女の子らしい顔も、ブレスレットを渡した時の嬉しそうに綻んだ顔も。
全部、全部、可愛くて。
俺だけに向けて欲しくて。
自己肯定感のせいで好意とかに鈍感なトラゾーのズレた返答に曖昧に言葉を返す。
何か勘違いをしていて、俺から逃げようとしてるトラゾーを離さない為に。
少しずつ少しずつ。
ホントは悪い人間の俺に囲い込まれてるのに気付いてない可哀想なトラゾーを堕とす為に。
コメント
1件
ポン酢2さん、第2話めっちゃ良かったです…!💦 もう、最初から最後まで「あああ…!」ってなってました。 「俺のトラゾーなんだから」ってこっそり言うところ、重いのに愛しくてすごく印象的でした。トラゾーさんが自分を責めるほど、彼の秘密の執着が強くなるのが読んでて切なくて、でも目が離せなかったです。 「助けるのに、理由がいるんですか」って過去のトラゾーさんの言葉、あの場面がこの物語のすべての始まりなんだなと感じました…素敵なエピソードをありがとうございます!