TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

さて、いよいよ10階層のフロアボスに挑戦だな。


アーツもコリノさんも休憩は十分とれたようだ。


アーツはすでに長剣を抜いているし、コリノさんも短弓の弦を指で引き感触を確かめている。


シロは両前足を前に出し大きく伸びをしている。


うん、犬らしい。――そして可愛い。


みんな気合が入っており臨戦態勢に移行していた。


アーツが3mはある大扉の前へ立つ。


――ゴゴゴゴゴゴゴッ!


左右の扉が奥へと開いていく。


――戦闘開始である――


さーて、何が出てきますやら?


このワクワク感がダンジョンでの楽しみのひとつでもある。


今回のボス・モンスターはどんなヤツが登場するのか俺も聞いてないのだ。


とりあえずは索敵とボスの確認だな。


奥に進んでいくにつれ全容が明らかになってくる。


10階層のフロアボスはどうやら『ゴブリンキング』のようだ。


2m程ある長身にドデカい十字槍を装備している。


体全体は金属鎧 (プレートアーマー) で覆われており防御もなかなかのものだろう。


そして、その周りには配下である10騎の『ゴブリンライダー』が半円状に展開されていた。






俺たちが中に進むと入口の扉は閉まっていく。


ボスを含めて全てのモンスターを倒さないと出られない仕様なのだ。


とは言え、ダンジョン管理者たる俺の場合は何処に居ようが思いのままなんだが……。


まあ、思いっきりやってほしい。


するとゴブリンライダー達が一気に攻め込んできた。


俺たちも横に広がって迎撃態勢をとる。


先頭を走るゴブリンライダーとの距離が10mと迫った。


しかし騎上のゴブリンは、ずるずると勝手に床に落ちていく。


――んんっ!?


薄暗いフロアのなか目を凝らすと、ずれ落ちたゴブリンの肩や胸には矢が刺さっていた。


コリノさんの飛ばした矢によりつぎつぎと床にずれ落ちていくゴブリン。


……凄っ!


その正確さもさることながら、矢継ぎがおそろしく早いのだ。


さすがはエルフだな。コリノさんかっこいい!


(俺も負けてられないな)


主を失ったブラックウルフを一刀のもとに切り伏せていく。


シロも魔法は使わずに肉弾戦でいくようだ。


しかしな……、まったく相手になってない。


シロがすれ違うたびにゴブリンライダーはブラックウルフもろ共崩れ落ちていく。


シロはそのまま犬の姿で戦っているのだが余裕だな。――かっこいいぞ!






ブラックウルフを何匹か葬ったあと周りを見渡してみたが、ゴブリンライダーはもう一騎もいなかった。


時間にして2分程かな?


まぁ、このメンバーなら当然の結果だよね。


おや、アーツのやつここで引くのか……。


今回のボスはシロに譲ってくれるようだ。


これは接待なのか? そうなのか?


フェンリル様に花を持たせようとか、そんな感じだろうか?


まぁいいか。誰がいったところでそうは変わらないのだから。


シロは俺たちの前へ進み出るとゴブリンキングと対峙する。


ゴブリンキングは十字槍をグルグル頭の上で回転させて威嚇している。


――げっ、関羽!


ではないか……。


この場合は槍の又左の方かな?


槍の又左衛門こと前田利家である。十字槍だしな。


双方とも未だ動かない。周りに緊張がはしる。


と、ここで業を煮やしたゴブリンキングは槍を回すのを止めた。


十字槍を半身正眼に構えると全身全霊をもって突きを放ってきた。


――速い!


シロが一瞬貫かれたように見えたのだが、そこにシロの姿はない。


いつの間にかゴブリンキングと立ち位置が逆に変わっていたのだ。


お互いが交差し背中を見せている状態だ。シロは尻尾だが。


そしてゴブリンキングは力なく前方に倒れ伏せると、ボンッ! と魔石を残し消えていった。


シロは背 (尻尾) を向けたまま、何事もなかったかのように体をブルブルしている。


う~ん、どっから見ても犬だよね。(フェンリルです)






これにて10階層、ボス部屋での戦いは終わった。


ホール奥にある出口の扉が開いてゆく。


俺たちはゴブリンやブラックウルフが残した魔石を回収していった。


それで今回のボス・ドロップなのだが、魔石の他に十字槍を残していた。


なるほど、ボスが持っていた武器などもドロップすることがあるんだなぁ。


そのように関心していた俺に向かってアーツが、


「ゲンは槍も使えたほうが戦術的にも幅がでるんじゃないか?」


「…………?」


『ほれっ』とアーツより投げ渡される十字槍。


コリノさんの方を見るとコクコク頷いている。


んんんっ? げせん。


アーツの一言で半ば強引に十字槍を押し付けられてしまった。


「…………」


まぁいっか! せっかくだし槍の練習もしてみるか。


そんなこんなで俺たちは10階層のボス部屋をでた。


今は転移台座が設置されている踊り場にいる。


順番に台座の玉 (ぎょく) に触れ、全員がボスの討伐を記録させていった。


今回はアーツが転移陣を起動させ、みんなが無事にダンジョン前広場へ戻ってきた。


『うぅ~~~』と伸びをしながら空を見上げてみた。


太陽の位置からすると、お昼を過ぎたぐらいだろうか?


――今日もいい天気である。


すると周りで作業をしていたギルドの職員らが集まってきて俺たちを出迎えてくれた。


休憩かたがた、その場に車座になって腰を下ろす。


水筒を傾け水分補給。


「ふぃ~~~!」


ひと息ついた後、ダンジョン内でのことを順を追って報告していった。


さて、今回は10階層までだがダンジョンの確認も十分にできたと思う。


転移システムの他いろいろと試すこともできたし、あとは国かギルドが頑張って調べてくれるだろう。






ギルド職員への報告を一通りすませると、こちらでの俺たちの仕事は終わりだ。


あとはみんなで町に帰るだけなのだが。


しかし、副ギルド長をはじめとした後続組の面々は未だ調査の途中らしく、もうしばらくここに残って作業をしていくそうだ。


そこで先発組の俺たは一足先にモンソロの町へ戻ることにした。


ただ秘密保持の観点から、ここで得た魔石やドロップ品に関しては秘匿してほしいそうだ。


町の商人にはもちろん、ギルドの買い取りカウウンターにも出してはいけないと念をおされてしまった。


なんでも、これらの物 (ブツ) に関しては『ギルマス』が直接買い取る形をとるようだ。


まあ、方針が固まるまではギルド外に情報が洩れたら困るのだろう。


でも、まあ、そのうち自然と噂が広がっていくんだろうけどね……。


そして、ジョアンさんからギルマス宛の手紙 (報告書) を預かり俺たちは帰路についた。


もちろん途中からは『シロちゃん号』に跨り、30分程でモンソロの町まで帰ってきたんだけど。


これは着くのが早過ぎたかなぁ……。


そこで、『その辺で適当に飯でも食って、時間を潰してギルドへ行こう』と俺が提案したものの女性2人の反応がいまいち良くない。


どうかしたのかと2人を見ていると、しきりに鎧や服を気にしている様子。


「…………!?」


あぁ~、女性は気になりますよね。


仕事あとの汗の匂いはどうしてもね。


ということで、シロちゃんに浄化を掛けてもらいましたぁー。


うう~ん、スッキリ!


2人にはめちゃくちゃ感謝された。シロはもふられまくりだぁ。


「そんなのがあるなら早く教えてくれ!」


と食い気味に言われたのだが、


「そうそう教えられないだろう」


首を横にふりながら答えておいた。


俺たちはシロでも入れる食堂を見つけると、ゆっくりと食事を楽しんだ。






お腹もふくれ一息入れたところで冒険者ギルドに入った。


カウンターにてギルドマスターにアポイントを取ると、すぐにギルド長室へ通された。


まず、副ギルド長のジョアンさんから預かった手紙を渡す。


………………

…………

……


報告と質問の応答で一刻 (2時間) 程かかってしまった。


買取りは魔石 (小) が10バース、魔石 (中) が300バース、今回はないが魔石 (大) 以上は時価じかになるそうだ。


ミスリル鉱石に関してはギルマスも同様に驚いており、今回は8,000バースの買い取りとなった。


(ピュ~ッ! いけね、口笛を吹きそうになったよ)


今回のダンジョン調査依頼の報酬は1人15,000バースだった。


結構な報酬であるが口止め料も含めてのことらしい。


――なるほどね。


さらに ”第一発見者” である俺にはダンジョンが認可されれば莫大な報酬が支払われるとのことだ。


ひょぇ~、いいの? 遠慮なく貰っちゃうよ!


これで真実にまた一歩…………。


いやいやいや、貯めますよ、ちゃんと貯めます!


お金は大事! すご~く大事!


魔石やミスリル鉱石は合わせて11,600バースになった。


1人頭3,860バースだね。


それに報酬を合わせると、今回の稼ぎは18,860バースとなった。


また、今回のダンジョン発見に対するギルドへの貢献度は計り知れないものらしく、冒険者ランクもCランクへ上がった。


冒険者ギルドの依頼で出向いた先にたまたまダンジョンができていた訳で……。


すこし心苦しくもあるが、幸運だったということだな。


普通の冒険者パーティーなら間違いなく命を落としていただろうし。


さらにランクアップ試験をクリアすればBランクまで上がれるという。


それはまぁ、おいおいということで……。






さて、久しぶりの我が家に帰りますかね。(マクベさん家です)


そして、シロを連れてギルドを出ようとしていると、


「ゲン、ちょっと待ってくれ!」


アーツから声が掛かった。


他の冒険者の邪魔にならないように出入口を避けて端に寄った。


何か、やり残した事でもあったかな? そう思い振り返ってみると、


「疲れているところをすまない。明日は何か予定はあるか?」


「えぇ――、デートのお誘いですかぁ?」


そんな問いに俺はワザとおちゃらけてみせる。


「ちっ、違うわ――――! デートなどではない!」


声がデカいため皆が注目してしまった。


「ちょっ……、ちょっとこっちに来い!」


真っ赤になった顔で俺の腕をつかみ引っ張っていく。そして、


「まったく、おまえというやつは。……まぁいい。それで明日なんだが、この町のスラムで炊き出しをやるんだ。そこでだな、もし良かったら……」


「いいですよ! 何時にどこに行けばいいのですか?」


俺はかぶせ気味に返事をした。


「そうか来てくれるのか……。すまないな」


やさしい顔で微笑むアーツ。


集合する場所と時間を告げると、


「じゃあ、明日はよろしく頼む!」


そう言って俺の前から去っていった。

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚