朝食を終えてから、俺は窓の外に目をやった。
街はまだ眠っているように静かで、灰色の空が広がっている。
「なあ、元貴」
若井の声が背中から聞こえた。
「今日は何したい?」
その質問に正直に答えるのは難しかった。
「特にない」って言えば楽だけど、それじゃ何も始まらない気もした。
「んー、じゃあさ、外に出てみるか?」
若井は少しだけ微笑んだ。
彼のその笑顔を見て、俺は少し勇気が出た。
「うん、行く」
外の空気は冷たかったけど、少しずつ体が目を覚ましていく。
若井は俺の手を取って、駅前のカフェへ連れて行ってくれた。
その道すがら、彼は普段通りの明るい口調で話しかけてくる。
「お前、こういうとこ来たことある?」
「いや、あんまり」
「そっか。まあ、これからたくさん連れてってやるよ」
カフェの中は暖かくて、コーヒーの香りが充満していた。
若井は黒い服に赤い髪が映えていて、まるで映画のワンシーンみたいだった。
俺はココアを注文した。
小さなカップに入った温かい飲み物が、
冷えた体をじんわり温めてくれる。
「少しずつ、前に進もうな」
若井の言葉が、胸に染みた。
俺たちはそんな小さな約束を交わしながら、
新しい日常の一歩を踏み出した。
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