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ガーベラが咲くころに
第5話 文化祭と転校生
夏が終わり。
校庭の木々が少しずつ色づき始める頃。
烏野高校は文化祭の準備で賑わっていた。
「望ー!」
「こっちの看板、手伝ってー!」
「今行く!」
教室中を走り回る望。
クラスの出し物。
生徒会の仕事。
文化祭実行委員との打ち合わせ。
さらに放課後は「教えて!のぞみ先生!」まである。
誰もが「忙しいだろう」と思うほど予定が詰まっているのに。
望は今日も笑っていた。
「相変わらず超人だな……。」
日向が呆れたように言う。
「体力どうなってるんですか。」
影山も感心している。
「毎日コツコツやってるから、忙しくないだけだよ。」
望は笑って答える。
「それが普通じゃないんです。」
月島がため息をついた。
教室中が笑いに包まれる。
少し離れた場所で。
菅原はそんな望を見つめていた。
(ちゃんと笑えてる。)
母親の入院以来。
ガーベラの丘では涙を見せることもあった。
でも学校では。
みんなを安心させるように。
いつもと同じ笑顔だった。
(無理してないといいけど……。)
そう思う自分がいた。
🌼
文化祭準備も終盤。
昼休み。
「望。」
清水がスマホを片手に近寄ってくる。
「これ、見て。」
画面には一枚の写真。
夕日に照らされながら飾り付けをしている望。
髪が風に揺れ。
優しく笑う横顔。
「昨日、由香が撮ったやつ。」
#音駒高校マネージャー
アウラウラ
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「投稿していい?って聞かれたから、いいよって返事したんだけど……。」
「どうしたの?」
「一日で五万いいね。」
「……え?」
望は思わずスマホを見つめた。
コメント欄には。
『この子かわいすぎる。』
『文化祭行こうかな。』
『モデルさん?』
『烏野ってこんな美人いるの?』
「すごいね……。」
望は苦笑した。
「なんか恥ずかしい。」
「いや、これは文化祭大変だと思う。」
清水が小さく笑う。
その予想は。
見事に当たった。
🌼
文化祭当日。
校門には。
例年以上の人だかり。
「今年、人多くない?」
西谷が目を丸くする。
「SNS効果じゃない?」
田中が笑う。
校舎の中でも。
「あの写真の子どこ?」
「希咲さんって?」
望を探す人が後を絶たない。
「……望。」
菅原は小さくため息をつく。
(人気ありすぎだろ。)
嬉しい。
でも。
少しだけ落ち着かない。
🌼
午後。
文化祭がひと段落した頃。
担任の先生が教室に入ってきた。
「みんな。」
「紹介したい人がいる。」
教室が静かになる。
「時期は珍しいけど、転校生だ。」
扉が開く。
入ってきたのは。
背が高く。
整った顔立ちの男子生徒。
「桜路蓮です。」
「東京から来ました。」
「よろしくお願いします。」
その瞬間。
女子たちがざわつく。
「えっ!」
「桜路蓮って、あの俳優!?」
先生が笑う。
「芸能活動と学業を両立するために、こちらへ転校してきた。」
教室は一気に騒がしくなった。
そんな中。
桜路の視線は。
最初から一人だけを見ていた。
希咲望。
その姿に。
菅原は気づく。
(あれ……。)
(視線が。)
(望から離れない。)
🌼
放課後。
「希咲。」
先生が呼ぶ。
「桜路くんは転校したばかりだから、学校を案内してあげてくれないか?」
「菅原も一緒に頼む。」
「はい。」
三人は校舎を歩き始めた。
「ここが体育館。」
「図書室は二階。」
望はいつも通り丁寧に案内する。
桜路はその横顔を見つめながら。
静かに笑った。
「ありがとう。」
「優しいんだね。」
「そんなことないよ。」
望は照れくさそうに笑う。
その笑顔を見た瞬間。
桜路は決意したように口を開いた。
「実は。」
「文化祭の日に君を見た。」
望は驚いて振り返る。
「写真より。」
「本物の方が、ずっと素敵だった。」
「……え?」
「だから。」
「転校したら、一番最初に仲良くなりたいと思ってた。」
静かな言葉。
だけど。
その意味は。
誰が聞いても分かった。
菅原は思わず拳を握る。
(ライバル……か。)
ガーベラの花が揺れるように。
穏やかだった恋にも。
少しずつ。
新しい風が吹き始めていた。
コメント
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みぅ🤍🥀です。第5話、読みました。 SNSでバズってしまう望の可愛さが眩しい反面、菅原さんの「少しだけ落ち着かない」気持ちがすごく伝わってきて…胸がぎゅっとなりました。そして転校生・桜路蓮くんの登場! 彼の視線が最初から望だけを捉えていた描写、一瞬で空気が変わった感じがして鳥肌立ちました。ガーベラの花が揺れるように、物語に新しい風が吹き始めた予感…続きがすごく気になります!