テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「わーかーい!」
あの声で、世界が一気に現実に引き戻される。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、視界に飛び込んできたのは――
2025年の、あの日のままの大森家のリビングだった。
「やっと起きたな〜寝ぼすけサボり若井」
にやにや笑いながら、涼ちゃんが横から覗き込んでくる。
「サボってねぇよ。休憩してただけだし……」
思わずそんな返しが口から出た。
……なんだ、戻ってきたのか。
全部夢だったんだろうか。
でも、妙に体が軽い。心の中にあった、説明のできない“後悔”が、少し消えてる気がした。
「若井、30分くらい寝てたよ」
涼ちゃんが時計をチラ見しながら、俺の隣に腰を下ろす。
たった30分。
でも、俺の中では――10日分の、全部が詰まってた。
「……なぁ、元貴。アルバム、また見せて」
「え、さっき見たじゃん?」
「……もう一回、ちゃんと見たい」
「んー?……まぁ、いいけど」
差し出されたアルバム。
胸が、静かに高鳴る。
ゆっくりとページをめくり、探すのは――“あの空白だったページ”。
2020年7月8日。
指先が止まる。
(……あった)
そこには、写真が1枚、しっかりと貼られていた。
メンバー5人が笑顔で並ぶ写真。
綾華がちょっと心配そうに目を開いて、高野が微妙に半目で、
真ん中には、涼ちゃんが肩を寄せて笑ってて、そして――
俺と、元貴が肩を組んで、同じ方向を見ていた。
「これ……」
「フェーズ1の最後の日のやつじゃん? ほら、5周年の日」
「え、ちょ、待って……これ、元貴、最初“写真撮ろう”って言ってなかったよね?」
「うん、最初は……何となく言い出せなくて、しんみりしてたし」
「……でも、若井が言ってくれたんだよ。“今しかない”って」
(……あの日と、同じ言葉)
「お前のおかげで、空白にならなかった」
「……ありがとう」
そう言って元貴が微笑んだ瞬間。
俺の中で何かが確かになった。
――これは、夢なんかじゃない。
ちゃんと、俺が行って、言って、変えた未来なんだ。
“君のアルバムに残る方法”
それは、ただ“写ること”じゃない。
君の心に、行動で刻むこと。
「……ふふ」
「なに笑ってんの」
「いや、ちょっと嬉しいだけ」
「お前、やっぱ寝起きテンションおかしいな〜」
そう言って笑う元貴の頬には、確かにあのときと同じ表情があった。
俺の胸には、あのときの記憶と、
今、ここに写っている“証拠”が確かにあった。
(ありがとう。もう、絶対忘れない)
⸻
そして、アルバムの最後のページ。
「2020.07.08 若井が“言ってくれた日”」
そう、小さく書かれた手書きの言葉があった。
⸻
📘To be concluded…