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涙を呑み込んで、愛してた。/ 白瀬なる
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#1 ー サヨナラの痕跡
君は本当に酷い人だったね。
『あんなにナギのために作った料理美味しいって言ってくれないし手も合わせてくれないし…浮気するし_ 』
『うそ、嘘吐き、なんでそんな嘘つくの。本当は私じゃなくてあの子 のことが好きなんでしょ_ 』
君は本当にずるい人だったね。
『 …本当にユアの料理美味しかったよ、好きな味だった_ 』
『 ユア…俺1年後とか2年後とかそこら辺には仕事が安定してくると思うんだ。だから、その時は結婚しよう_ 』
ナギは私の最後の嘘に気づけたかな、私は、ナギの嘘ちゃんと分かったよ、ちゃんと嘘って分かってた…。ナギとの別れ話で冷えた心をカフェのミルクラテで温めた。それでも芯からは温まれなくて あの場 へと戻った。
ガチャ…
「ただいま」
ナギはもう出ていったのかな。…荷物はまだ全部出されてないけど、所々詰めてあって…もうこれで最後なんだなって思うと 色んな思い出が波のように押し寄せてきて実感 というものを痛感した。あそこのリビングでテレビの取り合いにもなったし、ナギがあそこで寝てるから掃除の邪魔だって怒ったのにナギが結局甘えてくるから掃除がまともにできなかったり…あそこのキッチンで2人で料理もしたよね、不器用すぎて ユアがいないと生きてけないって弱音吐いてたよね。そんな私と君はもう終わりなんだよね…5年間付き合ってて結婚の約束もしたのに…こんな終わり方ってないよね…っ
もう君の荷物はダンボールに少しずつ詰められてあって2人分から1人分になるというのは結構変わって、あんなに家具沢山だった部屋が少なくなって、少し私の声が響きやすくなった部屋に、私は1人で想い出を思い泣いた。ナギとお揃いのあのコーヒーカップ、喧嘩もしたりイチャイチャしたり、楽しかったこの部屋は もうもぬけの殻で 悲しい想い出の場所 になってしまった。
…私どれだけナギのこと好きなんだろう?あの人から浮気したくせに、裏切ったくせに、私の料理美味しいって言ってくれなかったのに 最後まで悪役になれなかった君は最後の最後で美味しいって言ったよね。
『 私とお揃いだったペアリング、どこ行ったの? 』
『 私もうナギの彼女じゃないからこれ無くすね 』
あの瞬間から私たちは終わった。もう、元に戻らない、と自分を説得し自分の声が響きやすくなった部屋を整理整頓をする。…これが本当の最期だと自分に言い聞かせるように_
#2 ー 2人の最後の時間
「整理整頓も終わったし、今日はこの位でいいかな」
ガチャ、、
ードクンッ…ドクッ、ドクッ、
この優しく歩く足音、慣れた手つきでドアを開けた音、ナギ帰ってきたのか…そっか、もう夕方だもんね。まだ完全に退去してないからまだ、ナギの家だよね…
彼がリビングに繋がるドアを開けた瞬間に彼の手に持っていた袋は音を立てて床に落ちた…
「…ユ、ア…っ」
「……」 そんな愛おしそうな顔で、そんな悲しい声で、私の名前呼ばないで。
「…なに?」
「…っユア」
「私たちもう終わったはず、だよ」
「そうだよな、ごめん…」
別れたとは言え、終わったとは言え…あの ペアリング 最初から最後までつけないんだ…。
「この家いつ出ていくの?もう荷物半分以上終わってるように見えるけど」
「荷物は半分終わったけど服とかまだ詰み終わってなくて。あと1週間後かな…此処を出たら俺、北海道行くよ」
「ほっ、かいどう…?あの女の所についていくの?」
「ううん、あいつとはもう別れた。…今更になるけど本当に最低な人でごめん、ユアの時間無駄にしてごめん」
「…そうだよ。私あんたといる時楽しかったのに、あんたはそれを、5年間を…無駄にしたんだよ」
「 …… 」
「ナギこの家に長くいれるの最後だから、料理くらいは作るよ…何食べたい?」
「…みかんヨーグルトと、ハンバーグ」
「…っ」
『 とうとう一緒に暮らせるんだねー!ユアと毎日一緒にいられるの俺すげえ楽しみ』
『へへ、私も!楽しみだよ、せっかくだから2人でなんか作りたいなーカレーとか?』
『俺、料理とか苦手なんだよね…ユアの料理美味しいから何食べても美味しいのは間違いないんだけど…ハンバーグとみかん好きだし、みかんヨーグルトとハンバーグ食べたい』
『…!!うん!張り切って作るね!』
「…みかん、ヨーグルトとハンバーグ、かぁ…」
「だめ、か?」
「ううん、ダメじゃない。作るから待ってて」
みかんヨーグルトとハンバーグ、合わないかもしれないけどナギには特別って感じたようで、あの献立を美味しいって、気に入ってバクバク食べてくれたんだ。あの頃はお互い幸せで、お互い、好きで…
「…っふ、うう…っ」
リビングに流れる お笑い番組のテレビの音と料理する音…そんなテレビ番組の音に紛れて私の泣き声は君には届かなかった。近いのに、遠い距離の感覚、最後になる料理、君は美味しいって食べてくれるかな…きっと終わりの味だとしても、悲しい味だとしても最後だから笑って、「美味しい」って食べてね…ナギ。
「ナギ、できたよ」
「うん、ありがとう。」
いただきます…その仕草にさえ私は泣きそうになった。
もう、スマホを見ながら、食べないんだね。もう、私の目を見ないで、いただきますって言わないんだね…今の君はちゃんと美味しいって笑顔で言ってくれるし、いただきますって私の目を見て言ってくれる…美味しいって言ってくれるんだね、ちゃんと私の目を見て、言えるようになったんだね…。
「…あの頃となんも変わらない味…すげぇ、美味しいよ…」
「…ん、」
「ユア」
「……」
「…ユア」
「ん…?」
「…最後の人とか無いだろうけど、俺の最愛の人が君でよかった。」
「私も、ナギが最愛で良かったよ」
お互いにとって君はもう過去の人で、終わった存在。だから「好きでよかった」って過去の言葉を吐く_
#3 ー 5年間の片隅 - ナギside
「ナギ、出発まであと数日だけど、どう?」
「…あぁ、終わったよ」
もう数日なのか、雪の国へと足を向かせようとするまであと数日なのか、…ユアと離れるのもこの数日の時間だけ。俺が悪い癖に、俺が浮気したくせに、ユアの言った通り最後なんてなかった癖に、俺は何をしているんだろう…。あの子と別れたからって何の償いにもならないのに。
「…?ナギ」
「ごめん、考え事してた、どうした?」
「…これ、あげるって言うか、返す」
そうして手渡されたのは 5年間を写真に撮った2人のアルバムだった。ーー『 こうしてアルバムにしておけばいつでも見れるよ! 』
「うん、…ありがとう」
キミとの思い出いつでも見れるし、このアルバムがあったらいつでも君を思い出して泣けるよ。
「…本当に今までありがとう」
「……」
ーー俺は、クズでしかなかった。
#4 - 涙を呑み込んで、愛してた。 - ユアside
ーーピピピピッッ
6時半を知らせるアラームの音を止め、寝癖で汚くなった髪を優しくゆっくりくしでといて、エプロンをつけてキッチンへ立つ。
「…」
「…」
「…」
_無言に身を任せ、ひたすら無言で 2人分 の料理を作る。
「おはよ」
「ナギ、おはよう。朝食食べたら空港行くんでしょう?」
「うん、」
「わかった、車で行くからキャリーケースとか後ろに積めてね」
「うん…」
ご飯を食べ、空港へと行く。
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涙を呑み込んで、愛してた。/ 白瀬なる
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ーーー「ほら、起きて。空港に着いたよ?」
ーーー「あと少し」
ーーー「 もう、間に合わないでしょ。」
無理やり起こして、自分の荷物を持たせ飛行機の乗り場へと向かう。…これで本当にさようならだよ、ナギ。結婚しよって指を結んだあの日…永遠の愛を誓ったのに、…叶わなかった。未練なんて無いって言いたいのに、あんなに酷いことされたのに、自分からさようならをしたのに、矛盾しすぎてる自分が大嫌い。…本当は私ナギのことどう思ってるの?
「ユア、じゃあね…」 君は悲しくないの?
「…ユアっ」 なんでそんなに悲しそうなの?
「…もう会えないけど、頑張ってね」 何を頑張るの?
「あの頃もいつも俺ばかりが喋ってたよね、」 …まだ覚えててくれてるんだ。
「…ナギ、っ…」 涙を堪えた私の声は掠れてて君に聞こえてるのか分からない。けど伝えたいー。君が酷い人でもずるい人でも。私の最愛の人だった事には変わりない。
「ナギ、…今、までありがとう…っ」
「…ずっと幸せだったし楽しかったよ」
最後だから、最低な人だから、矛盾してる私だから、せめて言わせてね。
「大好きだった」
「ユア…、俺も好きだった。ごめんね浮気して」
…っ いつもずるくて最低で私の欲しい言葉なんかいつも言ってくれなかった癖にこういう時だけ私の欲しかった言葉を今更言うの…。
『 さようなら 』 お互いに手を振ってさようならをした寒い冬…5年間の私の恋はこれでドアを閉めた。…色々あり過ぎて自分でも何が何だか分からないけど、本当に楽しかったなぁ。
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涙を沢山呑み込んで、苦しくても呑み込んで_
出た答えは『愛してた』
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車を家に走らせ ナギの部屋だった 部屋を開け見渡す。ふとクローゼットが気になってゆっくりと開ける。
「…っえ、」
私は恐る恐る それ を手にしゆっくりと開けた。これは、ナギからのプレゼント…?いつの間に、?
小さい白色の箱に入っていたモノは キラキラと輝く指輪でその箱の下に紙があり空けて読んでみると…
『 本当はもっと早く渡したかったんだけど、渡すの遅くなっちゃっていつ渡したらいいか分からなかった。…けどいつかユアがこの箱を見つけて手に取ってくれるまで待つよ。いつか言えたらいいな。結婚してください、愛してるよ…。』
…本当に最低で最後まで愛おしくて、本当に最後まで何を考えてるのか分からなくて最後まで何をしているのか分からなかった 私の過去の人 。今更こんな形でこんなもの受け取ってもどういう反応したらいいか分かんなくなるじゃん。 もう彼は、ナギはもう雪の国へと旅立ち 過去を葬り 今を生きようとしている。
ナギも、ナギと過ごした時間もこの指輪も手紙も…全部過去だと思って私はそれに封をする。…君のせいでたくさん泣いて、不安になったけど、たくさん悩んでもたくさん泣いてもたくさん想っても最後に出た答えはいつだって「愛してる」だったけど今君のことを思ったら…『愛してた』いつだって言える。キミのこと本当に愛してた。
(1)愛を呑み込んで、さようなら。〜さようならの痕跡 <前編>
(2)涙を呑み込んで、愛してた。〜2人の未来 <後編>