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Episode1 君は光
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桜が舞い、鳥のさえずりが春をより一層感じさせる、入学の季節。そんな中季節にそぐわない顔をした中山瀬 雄一(やませ ゆういち)は過去を思い出していた。
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俺は昔から一人ぼっちでよくいじめられていた。暴力や仲間外れは勿論、罵倒だって浴びせられた。
その程度の虐めは慣れていた為無視でやり通していたが、それが奴らの気に触ったのか虐めはより一層過激な物になった。
そんな時、助けてくれたのが彼だった。「大丈夫?」そう声をかけてくれた。虐めの仲裁には入ってくれなかったが、何より声をかけてくれる、それ自体がとても嬉しかった。
それからと言うもの、俺は彼とよく遊ぶようになり3年経った頃には親友、と言っていいほどの仲になった。
気づけば俺を虐めていた奴も何処かへ消え、平和な日々を過ごしていた。
相談事は全て彼に話し、秘密は無し…。のはずだった。そう、一つを除けば。
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ある日彼と遊んでいると彼は急に真面目な顔になり、その瞬間『俺は病気なんだ。』そう告げられた。初めは整理が追いつかず混乱していたが話を聞き、時間が経過するにつれ病気がどれほど深刻なのか理解することが出来た。その話は彼の病気は難病であるが治療法がある。たがその治療法は過酷な物で、亡くなってしまう確率の方が何倍も高いらしい。
彼はその治療法を受ける、だからもう会えない。というものだった。
俺は戸惑った。まだ彼と遊びたい、生きていてほしい、なんで会ってはならない。
そのような類の言葉と同時に涙が零れる。
ぽろぽろと流れる涙を彼は拭い、優しく頭を撫でてくれた。本当は彼が1番辛いはずなのになんて優しく強い人なんだろう。俺はそんな彼の強さに圧倒され『彼みたいになりたい』と強く決心した。
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その日の夜、俺は彼と共に星を見に行った。
彼と過ごす初めてで最後の夜。
空には満面の星空。今まで見た星の中で一番光り輝いていた。
君と過ごす甘い時間。
近くの芝生に腰を下ろすと同時にため息が零れる。
彼と会えなくなるということは忘れようとしても忘れることが出来ない。今思えば、それ程彼の事が好きだったのだろう。だが今気づいても遅い。もう俺達は会うことが出来ないのだから。そう思うと同時にまた涙が零れた。そんな俺を彼は包み込むように抱き締めると、彼は俺にペンダントを渡して、『これは俺の宝物。今はゆうが持っていて。そして、高校1年生になった頃…。また笑顔で返してよ』と言った。また会えるのだと思うと不思議と笑みが零れる、でもそれは心の奥どこかで手術が失敗するだなんて有り得ないだろうと思っていたからだろう。そんな俺を見て微笑むと彼は『ありがとう』とだけ言ってこの場を去った。
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翌年。彼は死んだ。
原因はやはり病気。
母から聞いた話によると彼の病気は治療法が無く難病。出来る事は進行を遅らせる、ただそれのみらしい。
何故彼は嘘をついた?治療法があると彼はそう言ったはず。だから俺は彼を信じたのに、彼は俺を裏切った。そんなに俺が信用出来なかったのか、次々と涙が零れる。そんな彼や何も出来なかった俺に怒りが込み上げる。
彼は生きる理由だった。光だった。なのに彼は死んでしまった。これでは自分の生きる意味が無い。俺はその日から感情を失いかけていた。
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学校でも家でも暗い性格だった俺の性格はより一層暗さを倍増させ、沢山の生徒を睨みつけるように廊下を徘徊していた為気味悪がられた。
友情関係も勉強も何もかも最悪。何にも集中出来ない、そんな俺の人生はどん底そのものだった。
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ある日痺れを切らした母が俺の頬を強く引っぱたいた。その衝撃で俺は目を覚ます。
俺は…何をしていた?彼が死んでから今まで。彼が望むような事は全くしていなかった。むしろ逆だ。このままじゃ彼に笑われてしまう。
俺は彼に貰ったペンダントを強く握り締め彼の言葉を思い出す。「高校1年生になったら返して。」この言葉。俺は彼が死んだなんて信じない…信じたくない。だが生きる意味を見つけることが出来た。高校1年生…高校1年生まで生きよう。そう心に決心して、俺は深い眠りに落ちた
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過去を思い出した後俺はため息をこぼす。
今年が俺にとって最後の年。
これ以上生きる意味が無いのなら死んだも同然だ。バッグに床に散らばる教科書やノートを詰め込みネクタイを正すと「行ってきます…」いつもより暗いトーンで挨拶をし、家を飛び出した。
正直俺はあの頃から変わっていない。
暗くて弱気な性格に低身長…。
彼のために生きると決めたのに彼が喜ぶ事が出来ていただろうか。
俺はそんな不安を抱えながら学校へと直行した。
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新シリーズです。
作品を出すまでに前回と間が結構開いてしまいました…すみません<(_ _)>
これからも気まぐれではありますが続編出していくのでよろしくお願い致します。
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