テラーノベル
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村を離れ、王都へ向かう途中。
「いや、ほんとすごいのなお前って」
ニティアを見るルシオ。
「なにが?」
「いや、あれ飛んでたじゃん?浮遊じゃないでしょ?」
「訓練所でも使ってたじゃない」
「あの時はめっちゃすごい浮遊だと思ってたんだよ!」
「なにそれ(笑)」
そんな会話をしている2人から、だいぶ後ろを離れて歩くアルテアと……顔面蒼白のフィニス。
「あ〜……いってぇ………」
猫背になりながらお腹をさすっている。
フィニスのそんな声が聞こえたのか、ニティアが振り向いた。
「ご、ごめんって……」
そのやりとりにくすりと笑うアルテア。
「フィニスさんを治療する時は注意しないといけないかもしれませんね……(笑)」
「あ、それならアルテアちゃん!俺も死霊に囲まれて大変だったので!回復をお願いします!!」
ルシオも振り向き、目を輝かせる。
「いや、あんたその大きな盾で全部吹き飛ばしてたから怪我して無いでしょ……」
横目でルシオを見るニティア。
「くそぉぉぉ!!何で俺は盾を持ってきてしまったんだァァァァァァァァァァァァァァ!!」
肩を落としたルシオが、前を向いてトボトボ歩き始めた。
こんなやりとりに、アルテアは本当に楽しそうにくすくすと笑いながら歩いていた。
⸻
「皆様、ありがとうございました!」
王都に入り、改めてお辞儀をして3人にお礼をするアルテア。
「原因特定だけではなく……皆様のおかげで、無事に解決することもできました。これでまたあの村も活気が戻ってくれるとことだと思います」
そう言って、アルテアは優しく笑った。
「それでは皆様、お元気で!本当に楽しかったです!」
もう一度深々とお辞儀をし、アルテアは教会の方まで歩いていった。
そんなアルテアを見送った3人。ルシオが口を開く。
「そんじゃうちらも、ギルドマスターさんに報告に行くとしますかね」
「んだな」
「はーい」
⸻
チリンチリーン
ギルドのドアを開ける。いくつか並ぶテーブルの1番奥に、ヴェスパともう1人の男が話をしていた。
「お取り込み中かしら?」
ニティアたちが立ち止まり、しばらく様子を見ていると、ヴェスパが入り口にいる3人に気付いて手を上げた。
「お、もう帰ってきたのか。さすがだな」
ヴェスパの前に座っていた男性も一瞬だけ振り返り、3人を確認したが、すぐに正面を向き直していた。
「無事に解決してきたぞ〜」
そう言いながら、ルシオがヴェスパの元へ歩いていく。
ヴェスパと男の間。テーブルの上には一枚の紙切れ。ルシオがその紙切れをチラッと覗き込んで、つい言葉が漏れてしまう。
「お、おう……まじかこれ……」
フィニスとニティアが首を傾げ、ルシオの後に続いてヴェスパの元へ行く。
「あぁ……こちらは骨董品集めが趣味の貴族……カシェルさんだ。そんでもって、とあるルートである噂を聞いたから調査してほしい……と言う依頼なんだが……」
フィニスもチラッとテーブルの上の依頼書に目を通す。
「まじかこれ!!伝説の紅い魔女を倒した勇者の歯ブラシって……!」
「は?何言ってんの?どれどれ……町外れの湖畔に隠れた遺跡の中に……紅い魔女を倒した伝説の勇者の歯ブラシがある可能性があるようなので調査って……」
大きくため息をつくニティア。
「何で歯ブラシが遺跡なんかに……」
「おっちゃん!これって有名な伝説の歯ブラシのことか!?」
ニティアの言葉を遮って、目を輝かせたフィニスが貴族の方を見た。
「おぉ……!君は知っているのか!?」
先ほどまで険しい顔をしていた男が、急に目を輝かせる。
「当たり前だろ!真っ赤に染まった伝説の歯ブラシだろ?!それくらい知ってて当然だぜ!」
「気に入った!ヴェスパ君。この依頼を是非この子にお願いしたい!」
突然のことに目を丸くするヴェスパ。
「い、いや……ちょっと待ってくださいカシェルさん……」
「物の価値を知らん物には任せられん!報酬は弾む。見つけて持ち帰ってくれたらこの額の倍を出そう」
「……」
「もちろん、他のものであっても、価値のあるものであれば上乗せも検討する。キミ!是非伝説の歯ブラシを探し出してきてはくれんかね!」
「任せろおっちゃん!」
2人は熱い握手を交わしていた。
「なぁ、ニティア……伝説の歯ブラシってなんだ……?」
「知らないわよ……」
呆れ顔で2人を見ているニティア。
そして、勝手に話が進んでいき、ヴェスパは深くため息をついていた。
しかし、実際に遺跡調査ともなれば、予測不能の事態が起こっても不思議では無い。ある程度の戦力が必要であり、場合によっては魔法の知識も必要になってくる。
色々考えてみても、結局はこの3人に任せるしかないのが現状である。ヴェスパは苦笑いをするしかなかった。
「わかりました……フィニス達に調査をさせます」
「おぉ……感謝するぞ!ヴェスパ君!」
「ただし、こいつらはたった今別の依頼から帰ってきたばかりです。そのため、調査に向かうのは明後日からでもよろしいですか?」
「うむ。問題ない。それでは頼むぞ!えっと……フィニス君……だったかな?」
「おう!任せてくれ!」
「よろしく頼む!」
依頼の受注が完了し、カシェルは満足そうにギルドを出て行った。
「はぁ……」
フィニス以外の一同が大きなため息をついていた。
⸻
「なるほどな……奇病の正体は魔族だったと……」
「まぁ、フィニスがやばくなってブチ切れてたニティアが瞬殺してたけどな(笑)」
「べ、別に切れてないわよ!」
顔が赤くなっているニティアを見てルシオがにやにやしている。
ガン!
蹴り飛ばされた。
「そもそも魔族だったかも怪しかったし……会話もしてこなかったから、見た目がそれっぽかっただけで、ただの魔物だったかも……」
「でも、コアに傷があって白く濁っていたんだろ?」
フィニスは以前戦った魔族の言葉を思い出していた。
【この辺りに魔力の高いニンゲンがいるだろう】
(俺が戦ったやつは、魔力の高い人間を……。今回は何だ?奇病……灯……魔法……魂……。そしてコアのヒビ割れと濁り……)
「多分魔族だよ。俺が前戦った奴もコアが欠けてて
濁ってたし。」
その言葉に驚くルシオ。
「フィニスも魔族と戦ったことあるのかよ!?……お前らすげぇな……さすがはジャヌスさんの弟子だ……」
「まぁね♪」
そう言い胸を張るニティアの頭を、フィニスは軽く小突いた。
「いたっ」
「お前らの時と同じで、コアが欠けていたんだよ。多分何らかの理由で魔力供給がされなくて、弱っていたんだろうな」
そうみんなに言い放つと、振り返り店の出口の方へ歩き始めた。
「そんじゃ俺は、歯ブラシのある遺跡について調べてくるんで♪」
笑いながらギルドを後にするフィニス。
「なんなのよ……もう……」
小突かれた頭を摩りながら、ニティアはギルドの入り口の方を恨めしそうに眺めていた。
⸻
翌朝の宿屋。
ニティアが起き、フィニスの部屋を覗いてみるが、既に誰もいない。
昨日のあの様子だと、おそらく歯ブラシか勇者に関する情報でも探しに行っているのだろう。
「はぁ……」
自然と大きなため息が出る。
図書館の使用許可証についても、おそらくまだできていないだろう。かと言って、フィニスのように今回の依頼についての情報を集めるという気にもなれない。
もしかしたら自分1人でもできるような小さな依頼があるかも知らない。そう思い、朝食をとった後、ニティアはギルドに向かうことにした。
⸻
チリンチリーン
「おはようございます」
ギルドの扉を開けて、挨拶をして入るニティア。
ギルドの人たちが数名、食事をしたり談笑をしているようだが……
「あ、おはよう。えっと……ニティアさんでしたよね?」
「まだマスターもルシオさんも来てないよ!」
ニティアに気づいた人たちが教えてくれた。
ルシオもヴェスパもまだ来ていないようだ。
「あ、わざわざありがとうございます」
お辞儀をしてギルドを出る。特にやることがなくなってしまったニティアは、術式の研究をする為、宿屋に戻ることにした。
「えっと……ニティアさん?」
後ろから聞いたことのある優しい声。振り返らなくてもわかる。
「アルテア?」
言葉と同時に振り返る。
「昨日……ぶりですね」
少しだけ困ったように笑うアルテアがいた。
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甘泉めあʚめめあ・めあちɞ
175
羽海汐遠
10,439
#創作
こと-koto
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コメント
1件
おっ、第34話読了!今回も安定のギャグとシリアスのバランス、月白さんうますぎィ。フィニスの「伝説の歯ブラシ」に食いつくテンション、思わず笑ったわ!冒険者って本当に変な依頼引き受けるんだなって…でも遺跡探検ワクワクする。ニティアが呆れながらもフィニスのこと心配してる感じ、ちゃんと性格出てて好きだな。アルテア再登場したし、次からどう絡むのか気になる!完結じゃなくて続きが楽しみな終わり方だった!