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コメント
1件
うわ、これ……刺さりすぎて息苦しくなったわ。 「みんなのふりをしている」って言葉、めちゃくちゃ重かった。 教室の雑音が全部同じ大きさで聞こえる描写から、もう主人公の感覚がひしひし伝わってきて、読んでるこっちまで疲れちゃったよ。 最後の「そのままでも、ここにいていいよ」って一言を求めてるところ、本当に優しくて切なかった。 **ゆろ**さんの空気感の描き方、すごく丁寧で好きです。続き、絶対読みたい。
「難しいこと」
朝、教室のドアを開けた瞬間、いくつもの音が一度に押し寄せてきた。
椅子を引く音。
誰かの笑い声。
窓の外を走る車の音。
黒板をこするチョークの音。
机の上で転がる消しゴムの音。
どれも、ほかの人には気にならない音なのかもしれない。けれど僕には、全部が同じ大きさで聞こえた。頭の中に、たくさんの人が一斉に話しかけてくるみたいだった。
「おはよう」
隣の席の子が言った。
僕は返事をしようとした。でも、声を出すタイミングがわからなかった。相手はもう前を向いていた。
「無視された」
そう思われたかもしれない。
先生が今日の予定を説明している。僕は黒板に書かれた文字を写していた。けれど、先生の話を聞きながら、板書を見て、教科書のページを開いて、周りの音を我慢することはできなかった。
どれか一つをしている間に、ほかの二つが抜け落ちる。
「では、隣の人と相談して問題を解いてください」
その言葉を聞いた瞬間、胸が苦しくなった。
隣の人と、どうやって相談すればいいのかわからない。突然話しかけるのか。それとも相手が話しかけてくるのを待つのか。どれくらいの声の大きさで話せばいいのか。目を見たほうがいいのか。
考えているうちに、隣の子は別の友達と話し始めていた。
「ごめん、僕、入れない」
小さくつぶやいた声は、自分にしか聞こえなかった。
休み時間、廊下に出ると、友達同士で楽しそうに話している人たちがいた。僕もその輪に入りたかった。でも、話の流れが速すぎた。
冗談なのか本気なのか、わからない言葉が飛び交う。誰かが笑ったから、私も少し遅れて笑った。
「今の、笑うところじゃないよ」
誰かが言った。
顔が熱くなった。
笑わなければ「空気が読めない」と言われる。笑えば「変なところで笑う」と言われる。黙っていれば「感じが悪い」と言われる。
どれを選んでも、間違えてしまう。
放課後、先生に呼び止められた。
「あなたは、もう少し周りを見たほうがいいと思う」
その言葉は、何度も聞いた。
周りを見る。
空気を読む。
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普通にする。
ちゃんとする。
でも、僕だって見ている。見すぎるくらい見ている。みんなの表情や声の変化を気にして、嫌われないように、迷惑をかけないように、一日中考えている。
ただ、考えていることが多すぎて、動けなくなるだけだ。
家に帰ると、母が「今日はどうだった?」と聞いた。
「普通」
僕はそう答えた。
本当は、朝からずっと疲れていた。何度も間違えた。何度も恥ずかしくなった。何度も消えてしまいたいと思った。
けれど、それを説明する言葉が見つからなかった。
自分でも、自分がどうしてこんなに疲れるのかわからない。みんなが簡単にできることが、僕には一つひとつ大きな課題になる。
靴をそろえること。
忘れ物をしないこと。
話を最後まで聞くこと。
適切な返事をすること。
泣かないこと。
怒らないこと。
失敗しても平気な顔をすること。
僕は毎日、みんなのふりをしている。
でも、ふりをすればするほど、本当の自分がどこにいるのかわからなくなる。
ベッドに入ってからも、今日の失敗が頭の中で繰り返された。
あのとき、もっと早く返事をすればよかった。
あの言い方は、怒っているように聞こえたかもしれない。
また変だと思われた。
明日は、もっと気をつけなければいけない。
目を閉じても、頭の中は静かにならなかった。
「普通になりたい」
そう思った。
でも本当は、普通になりたいのではなかった。
ただ、間違えても笑われない場所にいたかった。
うまく話せなくても、無視したわけではないとわかってほしかった。
疲れて動けないときに、怠けていると決めつけないでほしかった。
そしてできれば、一度くらい言ってほしかった。
「そのままでも、ここにいていいよ」と。