15
そして、しばらく歩き、
林を抜けると…
先ほどとは全然違った雰囲気の場所に出る。
ここが無法地帯か。
入り口前に、銃をぶら下げた男が立っている。
『やあ!門番お疲れ様!1人お客さんを連れてきたけど大丈夫だよね?』
五十嵐さんが、銃をぶら下げた門番に言う。
門番は僕を見たあと、
『コイツは入れられねーな。』
と言われる。
『え、なんでだよー』
五十嵐さんが言う。
『コイツは、一匹狼だろ?今、面倒な状態なのにあぶねー奴を入れたくねぇんだ。』
『面倒なこと?何かあったのか?』
門番の言ったことを五十嵐さんが訊く。
『犯罪組織の一部が無断で入って来てるんだ。今は、その対応中だ。』
『それなら大丈夫、彼は良い人だ。俺が憧れた人間だからな。俺が保証する!』
『お前が憧れている奴って一匹狼だったのかよ!』
『イエス!』
五十嵐さんがカッコつけて言う。
『カッコつけんな。ケツに弾丸ぶちこむぞ!』
『うわーやだわー』
門番の言う言葉に対して、五十嵐さんは棒読みで言う。
『ふざけやがって。んでお前、名前は?』
突然門番に名前を訊かれた。
『銅甘です。』
『チッ!特別だぞ!早く通れ!』
僕の名前はスルーされたみたい…
でも、中に入れさせてくれるみたいだ。
『よっしゃあ!じゃあ、行きましょ!』
僕たちは中に入る。
ボロボロなアスファルト、今にも崩れそうな建物、ゴミ箱はゴミが溢れるほどある。
歩く人々はほとんど、見えるように銃を持っている。
『そういえば、一匹狼さんの名前は銅甘って言うんだな。』
『はい、言いそびれてましたね。』
名乗るのを忘れていた。
『なかなか変わった名前ですね。』
と、蒼さんが言う。
『まぁそうかもしれない。』
琥珀さんのことを思い出す。
琥珀さんが付けたんだよな。
と、
『よぉ、買い出しご苦労さん。』
1人の男に声をかけられた。
僕にではないだろうけど…
『おう!ヤマッチも見回りお疲れ様ッス!』
ヤマッチと言われた男は手を軽く上げ、拳を握る。
五十嵐は男の拳に、自分の拳を当てた。
そして別れ、すぐ近くの建物に入る。
『ここでーす!』
この建物も結構古そうだ。
横にあるサビの酷い階段をのぼり、2階へ。
『俺らの拠点にとーちゃーく!』
そこは小さな部屋だ。
『今は俺と蒼とあと1人、柳原.海斗[ヤナギハラ.カイト]っていうツンデレと3人のメンバーでやってます。』
そうか…
ツンデレか…
『あと、俺たちは無法地帯の人々を守っているんだけど…』
ドカーン!
近くで、爆発音が聞こえた。
そういえば、犯罪組織が入って来てるって…
『そうだった!俺たちの出番だな!』
そう言って外に出ようとする。
『何してるんですか?手ぶらで戦う気ですか?』
蒼さんが言う、
『そりゃやべーッスわ』
と言って戻る。
1人で騒がしい人だな。
と、
棚から…銃を取り出した。
!?
五十嵐さんはライフルガンを、
奏さんは小型銃を、
持つ。
『銅も手伝ってくれ!』
と、ハンドガンとボックスを差し出して言う。
僕は、戸惑いながらも受け取る。
ボックスの中には、弾丸が入っていた。
そして、建物を出る。
近くで煙が上がっている。
あそこだ。
煙が上がっている所まで走る。
と、
近くに、顔を黒いマスクで隠した人が数人いる。
こちらに近づいている。
犯罪組織の奴らみたいだ。
『よし、行こう!』
五十嵐さんの合図で2人が銃を構え、撃つ。
ドドドド!
僕も戦おう。
まずは近くにあるコンクリートブロックに身を隠す。
そして、銃を構え、近づく人に向け、撃つ。
バン!
近づく人に当たるが、倒れない。
防弾服を着ているのか。
同じく、何度も弾丸を当てる。
もう1度、もう2度と撃つ。
やっと1人倒せた。
近くの敵を倒してもすぐに後ろからくる。
物陰に隠れる。
玉を入れ替えて、また撃つ。
こちら側の仲間も近くにいたようで、皆で撃つ。
銃を撃ち続ける。
と、
近くに何かが転がってきた。
それは…
爆…
『そこから離れろ!』
男の声がした。
1人の男に手を引っ張られる。
そして、
ドッカーン‼︎
大きな音を立てて爆発した。
爆風で吹き飛ばされる。
煙が上がっている。
そしておさまると、
先ほど盾にしていたコンクリートブロックが、無惨な姿に…
敵は殺しにかかっている。
敵が多すぎる。
このままでは、押し切られてしまうかも。
どうすれば良い?
どうすれば…
ドォン!
?
なんだ?
何の音だ?
爆発しているわけではない。
だが、敵がどんどん倒れていく。
みるみるうちに敵が減っていく。
『おぉ、柳原か!』
五十嵐さんが言う。
柳原さんが倒しているのか?
そして、
『クソ!覚えておけよ‼︎』
と、残った敵が逃げていく。
『よし!終わったな!』
五十嵐さんが言う。
『みんな、お疲れ様!』
『お疲れ様でした。』
そして2人がそれぞれ言う。
僕も、
『皆さんお疲れ様です。』
なんとか終わったみたいだ。
『いやー楽勝だったぜ!』
『苦戦してましたよね?』
苦戦していた。
柳原さんがいなければ、厳しかったかも。
『ははは!いいじゃないか!』
何がいいんだろう。
『あ、柳原さんだ。』
蒼さんが見ている先に1人の青年が歩いている。
スナイパーなのか?
長い銃を持っている。
『ありがとよ!柳原!』
五十嵐さんが近づいていく。
柳原と言われた青年はうざったそうにしている。
『今日もノリ悪いな〜。暗いぞ、笑え!』
『・・・』
五十嵐さんの言葉に対して何も喋らない。
目を逸らした。
『おいおい、どこ行く気だ?柳原の憧れている、一匹狼さんが今ここにいると言うのに…もったいないぞ!』
五十嵐さんはまだ話しかける。
『憧れてなんかない。』
柳原さんが静かに言った。
『おいおい、恥ずかしがってんのか?今なら…』
『ウザい、黙れ。』
柳原さんは五十嵐さんの言葉を最後まで聞かず、冷たくあしらった。
そして、何処かへ行ってしまった。
『おい、今日くらいは…』
五十嵐さんは追いかけようとしたが、蒼さんが止める。
『柳原さんは1人が良いのかもしれません。やめといた方がいいでしょう。』
『その通りかもしれないけど、せっかく一匹狼さんがいるのに…』
五十嵐さんは残念そうだった。
拠点に戻る。
『あ、この銃とボックスは返しますね。』
『あぁ、ありがとう。』
五十嵐さんはまだ残念そうだった。
悲しそう、でもどうすることもできない。
『すまんな、実は柳原にもどって来て欲しくて、来ないかと誘ったんだ。でも、俺が銅さんに憧れているのは本当だ。』
『そうだったんですね。でも戻っては来なかった…』
『まだチャンスはあると思いますよ。』
蒼さんが言う。
『また、会いに来てくれると嬉しいッス!』
『今日はありがとうございました。』
と2人から言われる。
『また会いましょう。』
僕はそう言って、別れる。
2人は手を振ってくれていた。
僕は街の方に戻る。
どうしようかな。
暇なので、街を色々見ながら歩く。
でも、気になるものなんてない。
そのまま、家の前に着く。
少し気になっていた。
でも、ここはもう、
僕がいていい場所ではない。
行こう。
僕は、背を向けて歩く。
そうだ。
山を登って景色を見ようとしてたんだった。
今から行ってみよう。
ここから登れるかな。
山を登る道があった。
僕は、その道を歩いていく。
日は傾き、落ちて来ている。
今、何時だろう。
わからない。
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