テラーノベル
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小鳩は『銀華』を操り、外崎を攻撃する。
だが、外崎も言ったように小鳩は近距離戦でこそ光る探索員。
中距離になった時点で攻撃方法が『銀華』と『サウザンドシルバーレイ』のコンビネーションスキルに限られてしまう。
この攻撃手段も悪くはない。
自在に展開させる事のできる『銀華』を変異させて、隙を作り水銀の雨槍で撃ち抜く。
初見であれば見極めるのに相当な苦労と時間を要するだろう。
そう、初見であれば。
小鳩がこの戦い方をするのは対抗戦で2度目。
楠木監察官室のメンバーは事前リサーチを綿密に行う。
普段から機密性の高い任務に従事している彼らにとって、作戦概要の精査はお手の物。
「くぅぅっ! なんと言う素早さですの!? お排泄物のような目が背中にも付いているようですわ! そうやって普段からいやらしい目で女子を見ているのですわね!!」
小鳩の攻撃は外崎にことごとく躱されていた。
だが、外崎も苦戦している。
「ヤメてくれ! 妻子がいるんだ!! すごいな、南雲監察官室! トリッキーだと事前に分かっていたが、スキル攻撃と同時に社会的な攻撃までしてくるなんて! とんでもない集団だ!! 南雲監察官、あなたはそうまでして勝ちたいのか!?」
あらぬ誤解を発信され続ける外崎。
彼は彼で「これ以上塚地さんとの戦いが長引けば、妻に誤解され、娘に嫌われる!!」と、勝負を焦る理由があった。
外崎は武器を取り出した。
それは鎖鎌であり、潜伏機動部隊の標準装備。
彼はその扱いにおいて、部隊で1番を自負している。
「まずは武器を奪わせてもらう! 『蛇の尾突』!!」
「また蛇ですの!? わたくし、対抗戦で蛇の事が嫌いになりそうですわ!! こんなもの!! 『銀華二度突き』!! ひゃあっ!?」
外崎の『蛇の尾突』は分銅が相手の煌気に反応して自律行動し、攻撃を避けながらあらかじめプログラムされていた動きをする、高度なスキル。
その分煌気をかなり消費するが、ここで小鳩を落とす事が出来れば損のない取引である。
「やっ、やってしまいましたわ……! 槍が……!!」
「悪いけど、これで君は防御手段を失った!」
「お、お排泄物!! それで、わたくしにどんないやらしい攻撃をするもりですの!? 緊縛! 緊縛プレイですわね!?」
「よし子ぉぉ! 愛してるぞぉ!! ホントにこの子、アレなんだ! よし子ぉぉぉ!!!」
小鳩と外崎の戦いはクライマックスを迎えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『塚地Aランク探索員、これは大ピンチー!! 彼女の代名詞である槍を場外に弾き飛ばされてしまいましたぁ! えー、念のために解説しておきますと、準決勝のバトルロイヤルは1度場外に落ちたものは、それが武器でも拾う事が許されません! つまり、塚地Aランク探索員! 大ピンチだぁー!!』
裏五条
16,178
#文芸アクション
大正
4,272
#主人公最強
ウサギ様
431
#ダンジョン
夜鐘
777
『外崎は地味だが堅実な戦い方をする。先ほど、小坂を無理して追わなかったのも正解だ。2対1からタイマン勝負に相手が持ちかけてくれるならば、そちらの方がずっと良い。ふむ。うちに欲しいな』
『攻撃スキルにも無駄がありませんね。塚地さんは得意の『銀華』をずっと展開していますが、外崎くんは必要な時に煌気を大量使用する戦法です。こちらは1対1の勝負ですと悪手になりかねませんが、準決勝はチーム戦ですから』
五楼と雷門の評価が高い外崎。
そのまま楠木監察官の探索員育成方法へと話は続いて行く。
楠木は自主性を重んじる方針で、教えを乞われた時にのみ助言をする。
放任主義とは違い、与えられる助言は適切で丁寧。
探索員の得意不得意、長所と短所を見極めているがゆえにできる指導方法である。
『少しずつ劣勢の色が濃くなっていく塚地Aランク探索員! 絶体絶命かぁー!?』
そこに迫っている影については、実況の日引も解説の両監察官も言及しない。
放送によって片方の陣営に有利な状況を作るのはマナー違反。
だが、着実にその影は小鳩と外崎の戦いに割って入る機を探っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……みみっ」
芽衣の残った煌気量は極めて少ない。
元から煌気総量の少なさが弱点の彼女が、この戦いでは大スキルを使い過ぎた。
だが、木原芽衣は自分の無計画な戦い方を反省する事が出来る乙女。
失敗と向き合うのにはそれなりのエネルギーが求められ、それが直近のものならばひとしおである。
にも関わらず、芽衣は「自分にできる最後のワンプレー」を計算していた。
「……っ! なるほどですわ!! 『銀華』!! アレンジスキル!! 『乙女の花道』!!」
小鳩は視界の端に芽衣を捉えた。
彼女とはまだ、わずか数週間の付き合い。
だが、彼女を信頼するのにはそれだけの時間があれば充分であった。
小鳩は『銀華』を地面に敷き詰めることで、足場を阻害していた外崎の『地雷飛び苦無』を無効化する。
「そんな使い方もあるのか! だけど、今さら足場を安定させたからと言って!!」
「ええ! わたくしに出来るのは、もうこの程度ですわ! ですが、あなたを落とせるのではあれば悪くない手でしてよ!!」
「どうやって落とすんだ!? 君はもう、槍を持たない! さらに衛星を全て足場に使ってしまっていては、スキルも満足に使えどぅふっ!?」
塚地小鳩、腰を落とした良いタックルであった。
先ほど六駆がやったように、相手に攻撃する手段は別にスキルでなくとも良い。
もちろん、虚を突かれた外崎は動きを封じられたが、それだけでは彼を攻略できない。
小鳩の役割は、外崎の動きを止める事。
あとは彼女の出番である。
「木原さん! わたくしごとやってくださいまし!! 遠慮は無用! 最大出力でお願いしますわ!!」
「ほがっ、なにぃ!? 木原さん!? いつからそこに!?」
「ずっといらっしゃいましたわよ? 煌気感知ばかりに気を取られて、目視による確認を怠るだなんて、あなたもまだまだですわね! そんなあなたに良いようにされた、わたくしもまだまだですわ!!」
芽衣は静かに右手の残った煌気を集中させる。
続けて、小鳩の作った『乙女の花道』の上を走って、拳を振りかぶる。
「みみみみっ!! 行くです!! 『発破紅蓮拳』ぉぉぉっ!!!」
「どぅおっふぅっ!!!」
「お見事ですわ! 木原さん!! あと、外崎さん越しでも割と痛いですわね……」
芽衣の残った煌気全部乗せ『発破紅蓮拳』が外崎と小鳩に直撃。
2人は場外に吹き飛ばされる。
「みみみっ! これで芽衣も煌気が空っぽです! 師匠たちの邪魔にならないようにするです!! みみみみっ!!」
そう言うと、芽衣は自分から武舞台を降りた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『これは奇策が炸裂したぁ! 塚地Aランク探索員、なんと自分ごと仲間の木原Cランク探索員のスキルで場外落ちを選ぶー!! さらに、木原Cランク探索員も煌気を使い切り、自分からリングアウトー!! これで南雲陣営の残りは3人! 対して楠木陣営は4人となりましたぁ!!』
『思い切りの良い作戦だったな。塚地と木原の意思疎通が潤滑でなければ決まらなかっただろう。1人落とすのに2人かけたのは数字で見れば愚策だが、既に戦力ではなかった木原が1人落としたことに意味がある』
『す、素晴らしい、友情でした! ウ、ウウ、ウグッブーン! ゴノ、ごの世には、まだまだ綺麗な友情がァァァ、ブッヒィフエエエーーーーンン!! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中はまだ、捨てたものじゃないデーーヒィッフウ!!』
『はい。雷門監察官、ありがとうございました! さあ、いよいよ佳境に差し掛かって来たかぁ! 準決勝第2試合ぃ!!』
『日引。貴様の司会進行能力、すごいな……。私ですらちょっと引くぞ……』
数字の上では劣勢のチーム莉子。
だが、残っているメンツが非常に濃い。
次の一手はどう出るのか。
チェックメイトは目前まで迫っている。
コメント
1件
第246話、めっちゃ熱かったわ!小鳩と芽衣の連携プレー、まさか自分ごと仲間の攻撃で落とすとは思わなかった。あの「乙女の花道」からの「発破紅蓮拳」、小鳩のタックルも含めて二人の信頼関係がガチで伝わってきて痺れた。外崎の「妻子いるから焦る」って理由も妙にリアルで笑ったけどな。楠木の自主性を重んじる指導方針、良いな。