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#いるなつ
3e1
718
# 梅雨の妖精
209
翌日。
なつは朝から少し気になっていた。
昨日のすちの電話。
そして兄たちの様子。
ただの過保護ではない気がした。
何か理由がある。
そんな気がしていた。
🦈「おはよー!」
教室にこさめが入ってくる。
いつも通り元気いっぱいだ。
🍍「おはよ」
なつが返す。
🦈「今日ね、朝すっちーがお弁当作りすぎたの」
🍍「また?」
🦈「四人分くらいある」
🍍「何人家族だよ」
🦈「四人家族」
🍍「そういう意味じゃない」
こさめが笑う。
いつものこさめだ。
昨日のことなんて何もなかったみたいに。
でも。
なつは少しだけ気になっていた。
昼休み。
みことが迎えに来て、こさめは屋上へ向かった。
なつは購買でパンを買い、教室へ戻る。
すると。
教室の後ろで女子たちが話しているのが聞こえた。
女子1「こさめくんってさ」
女子2「うん」
女子1「昔、私とは中学違ったんだけど」
女子1「噂ではね‥?」
なつは思わず耳を傾けた。
女子1「結構いじめられてたらしいよ」
女子2「え?」
女子1「男の子なのに可愛いとかで」
なつの手が止まる。
女子2「そうなの?」
女子3「え、それ私もなんか聞いたことある」
女子2「ひど」
女子たちはそれ以上知らないらしく、すぐ別の話題になった。
でも。
なつの頭にはその言葉が残った。
いじめ。
こさめが。
あの明るいこさめが。
放課後。
帰り道。
🍍「なぁ」
🦈「ん?」
こさめが振り向く。
🍍「そういやさ、入学してから結構たったけどさ」
🍍「中学って楽しかった?」
何気ないふうに聞いた。
すると。
こさめは少しだけ目を丸くした。
🦈「急だね」
🍍「なんとなく」
少し考えてから。
こさめは笑った。
🦈「今の方が楽しいよ」
その答えは。
質問の答えになっているようで、なっていなかった。
その時だった。
👑「こさめちゃーん!」
聞き慣れた声。
みことだ。
🦈「みこ兄」
👑「お迎え〜」
🦈「近いのに」
👑「だめ?」
🦈「だめじゃない」
結局嬉しそうなこさめ。
なつは少し笑った。
すると。
みことがなつを見る。
👑「なつくん」
🍍「はい?」
👑「ありがとうね」
🍍「何が?」
👑「こさめちゃんといつも仲良くしてくれて」
その言葉に少し引っかかった。
きっと普段のなつなら引っかからないだろう。
仲良くしてくれてありがとう。
普通の兄なら言わない気がした。
まるで。
こさめが一人にならないように願っているみたいで。
その日の夜。
なつは偶然、駅前で買い物帰りのすちと会った。
🍵「こんばんは〜」
🍍「あ、どうも」
すちはいつも通り穏やかだった。
🍵「こさめちゃん元気だった?」
🍍「元気だったよ」
それを聞いてすちは安心したように笑う。
本当に安心したように。
心の底から。
🍵「よかった」
ぽつりと呟いたその言葉に。
なつは思わず聞いていた。
🍍「そんなに心配なの?」
すちは少し驚いた顔をした。
🍵「え?」
🍍「いや、なんか」
なつは言葉を探す。
🍍「兄弟仲良いよなって」
すちは少し黙った。
そして。
優しく笑った。
でもその笑顔はどこか寂しかった。
🍵「守れなかったことがあるからね」
なつは固まった。
🍍「え?」
すちはすぐに首を振る。
🍵「あ、ごめん」
🍍「いや」
🍵「なんでもないよ〜」
そう言った。
でも。
その目は。
なんでもない目じゃなかった。
なつは家に帰ってからも、その言葉が頭から離れなかった。
守れなかったことがある。
いじめの話。
兄たちの過保護さ。
全部が少しずつ繋がり始めていた。
だけどまだ。
本当の過去までは知らなかった。
知らないままの方が楽だったのかもしれない。
でも。
もうすぐ。
なつは知ることになる。
兄たちがどうしてあそこまでこさめを守ろうとするのかを。
コメント
1件
こんにちは、寺島あおいです🤍 第11話、読ませていただきました。 なつが少しずつ“違和感”を言葉にし始めた回でしたね。女子たちの噂話で「いじめられてたらしい」という情報が出てきたところ、すごく心が痛みました。あの明るいこさめくんが…と思うと胸がぎゅっとなります。 特に最後のすちさんの「守れなかったことがあるからね」というセリフが重くて。優しいのに寂しい笑顔、すごく印象に残りました。なつが「知らないままの方が楽だったかも」と思う気持ちも分かるような気がします。 次が気になりすぎます…!