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寧々 side
放課後、劇団の稽古が終わった後、おばさん──類のお母さんに声をかけられた。
「類が、またご飯ちゃんと食べてないみたいなの。見に行ってくれる?」
……はあ、またか。
正直、少しだけ面倒だったけど、放っておけるわけもなくて。
私は類の家へ向かった。
インターホンを押してみても、応答はなし。
「類ー? るーい! ……いないの?」
静まり返った玄関。
まあ、鍵は預かってるし……いいよね?
私はスペアキーを使って、玄関を開けた。
中は、静かで。
本当に、誰もいない。
キッチンへ足を運ぶと、棚の中には──大量のカップラーメン。
「……またこればっかり……」
呆れる気持ち半分、心配半分。
もう、やれやれって感じ。
──時間もあるし、部屋、ちょっとだけ見ていこうかな。
類の部屋は……うん、ひどかった。
「うわ、……なんでこんなゴミだらけなの」
床は紙ゴミや服で埋まりかけてて、座るスペースもなかった。
ため息をついて、私は手を動かし始める。
掃除なんて、するつもりじゃなかったのに。
でも、見て見ぬふりなんてできなかった。
──そんなとき、目に入ったのは、本棚の奥にある、一冊の本。
「……ん? なにこれ……」
漫画? 類が漫画なんて読むんだ。
気になって、表紙をめくってみた、その瞬間。
「……っ!?」
顔が一気に熱くなる。
……ちょ、なにこれ……えっちじゃん……!
こんな本、持ってたんだ。
というか、私……こんなに……
影、大きかったっけ……?
慌てて本を閉じた、そのとき。
「──やあ、何してるの?」
背後から聞こえた声に、心臓が飛び跳ねた。
「ひゃっ!え、あっ、る、類!? いつの間に……!」
「僕の家だからね。帰ってきても不思議じゃないだろう?」
涼しい顔をしてるけど……顔、赤いんですけど……!?
「で、寧々。それ、なに読んでるの?」
「え、えっと……その、おばさんからお願いされて……それで、部屋の掃除してたら……!」
「へえ。で、つい手が伸びて、読んでみたわけだ?」
「……う、うぅ……!」
私は本を胸に押しつけて、目をそらした。
「……類の、えっち……!」
思わず口に出してしまって、もっと顔が熱くなる。
すると類は、少しだけ苦笑して、
「そういうの、男なら普通だよ。……僕も、男だから」
その言葉に、またドキッとした。
当たり前なのに、なんだか胸がざわつく。
……じゃあ、類って、私のこと……どう見てるの?
ふと、そんなことが頭に浮かぶ。
「ねぇ、類。私のこと……どう思ってる?」
言葉が、自然と口からこぼれた。
類は明らかに戸惑って、けれど、逃げなかった。
「……僕の本心を言うなら、」
一拍置いて、真っすぐに私を見て。
「──好き、かな」
心臓の音が、うるさい。
「え、それって……」
「うん。恋愛対象として、好きだよ」
「……私もっ!」
言葉が勝手に口から飛び出た。
「私も、類のこと、好き!」
類の目が見開いて、そしてゆっくり笑って。
「そっか。嬉しいよ、寧々」
そして、少しだけ声が震えていた。
「寧々、改めて言うよ。……俺と付き合ってください」
涙が止まらなかった。
恥ずかしくて、嬉しくて、信じられなくて。
「うんっ……! 私も、大好き!」
少し泣き止んだあと、類がいたずらっぽく笑って聞いてくる。
「ねぇ、寧々。他には、僕がどんなこと考えてると思う?」
「え……どんなことって……?」
問い返したその瞬間──ぐいっと、肩を引かれて、私はベッドに押し倒された。
「……こういうこと、とか?」
類が、意地悪そうに笑う。
「──っ、ば、ばか……!」
この日、たぶん私は眠れない。
いろんな意味で。
類 side
今日も気づけば、食事はカップラーメンで済ませてしまった。
栄養なんて気にしてる暇はない。劇の脚本が煮詰まっていて、どうにも気持ちが落ち着かない。
──ガチャリ。
玄関の鍵の開く音。
聞き慣れた足音。
ああ……来たんだ。
どうせ母さんが頼んだんだろう。
最近また、食べてないじゃないって言ってたし。
気づかれないよう、部屋のドアの影に隠れて息を潜めた。
彼女──寧々は、ため息混じりに呟いていた。
「……もう、またゴミだらけじゃん……」
苦笑が漏れた。
掃除しに来たのか……優しいな、やっぱり。
俺は部屋の隅で黙ってその様子を眺める。
口を出すタイミングを逃していたのかもしれない。
──そして、彼女は見つけてしまった。
棚の奥に置いたはずの、あの本。
思わず、息を止めた。
手に取り、ページをめくった彼女の顔が、みるみる赤く染まっていくのが見えた。
「……っ」
予想以上に動揺していて、すこし、焦った。
けれど……同時に、可愛かった。
たまらなく。
もう、いいか……
──────出るか。──────
「──やあ、何してるの?」
そう声をかけると、寧々は飛び上がるように振り返った。
「ひゃっ!え、あっ、る、類!? なんで今ここにっ……」
「僕の家なんだから、ね?」
わざと平静を装うけど、内心は正直焦っていた。
よりにもよって、あれを見られるなんて。
「……で、その本は……?」
「え、えっと……おばさんから頼まれて、それで、部屋の掃除を……」
動揺しながら弁解する寧々が、なんとも言えず微笑ましくて。
僕はゆっくりと彼女に近づいた。
「……る、るいの、えっち……」
その言葉には思わず目を見開いた。
けれど、次の瞬間には、思わず笑っていた。
「はは……まあ、否定はしないよ。男だからね、僕も」
事実だし、隠すようなことでもない。
だけど──今、彼女がどんな目で俺を見ているのか、気になって仕方がなかった。
そして、彼女は問いかけた。
「ねぇ、類。私のこと……どう思ってる?」
──その質問は、想像していなかった。
一瞬、心臓が跳ねた。
逃げることも、はぐらかすこともできた。
けれど、僕、いや、俺は──ちゃんと、答えたかった。
「……好き、かな」
言葉にした瞬間、思ったよりも胸が熱くなった。
「そ、それって……」
「恋愛対象として、好きだよ」
その時の寧々の目が、うるんで見えた。
そして──
「私も、類のこと、好き!」
その一言が、たまらなく嬉しかった。
まるで、何かの劇のクライマックスみたいだな、と思った。
「そっか。嬉しいよ、寧々」
自然と、口角が上がる。
「寧々。改めて言うよ。俺と、付き合ってください」
涙を流しながら頷いてくれる彼女を見て、思った。
こんな風に誰かを好きになれる日が来るなんて、信じてなかった。
「……寧々。大好きだよ」
そう言えたことが、ただ、誇らしかった。
泣き止んだ彼女を見ていると、ふと、
頭の中に言葉が浮かぶ。
「ねぇ、寧々。他には、僕がどんなこと考えてると思う?」
「え……どんなことって……?」
言葉で答えてもいいけれど──ちょっとだけ、ずるいことをしてみたくなった。
彼女の手を引いて、軽くベッドに押し倒す。
「……こういうこと、とか?」
目を丸くして、真っ赤になった寧々を見て、思う。
今日の夜は、彼女も眠れないだろうけど……
俺も、同じだよ。
──たぶん、一睡もできない。
この小説は終わるが、
類と寧々の物語は終わらない──────
いえーい!!!!
戻ってきました〜!!!!香普らてでーす!!
あの……間違えてアプリ消してですね、……そのまま、アカウント連携してなくて、戻れなくなったんですよ、……。まぁ、これからも見てくれると喜びます。好きなカプやアニメなどは変わってません。じゃあ、また会いましょう。
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