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Nozomi💜
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Rapi_
78
#クイズノック
あお
1,338
58
お久しぶりです、天羽です。
ここの垢は放棄いたします。代わりに自分のお気に入りのmngnと、pixivとプリ小説のリンクを置いておくのでそちらをよければ。pixivの方が浮上率高めです。
それでは。
ーー
pixiv
https://www.pixiv.net/users/109734294
プリ小説
https://novel.prcm.jp/user/bd37e2d9d3c4129ec954e664088e7fce2a2819bd
ーー
ミーン、ミンミンミンミンミーン。
蝉が鳴いている。
部屋の床に寝っ転がって、窓を全開にして、涼しく気持ちの良い風がすっと入って来る。
――クイズ大会で負けた。
紙抜けはした。壇上でボタンを押して答えを叫んだし、なんなら決勝まで進んだ。
決勝の相手は奇しくも双子の兄だった。同じクイズをし、ずっと一緒にいた、片割れ。
俺はその相手と二人きりでクイズをした。
知っている相手。身内の相手。だからこそ、今までにない緊張だった。
俺はそこで、1点も取れなかった。
7○3×の3本先取で、1点も。ただ取られて、誤答をして、スルーをしただけ。
こんな負け方は初めてだった。
屈辱。そんな気持ちが俺を支配して、涙が溢れた。
「言ちゃん…」
優勝者から伸ばされた手を俺は振り払った。
「悔しい、悔しいよ…!」
優勝者に拍手が送られている中、俺は彼に叫んだ。
同じクイズをしていたはず。では、何が足りなかった?
――分からない。どうして、お前はそんなに強い?
自分への苛立ち。もっと強くなれ、兄弟など関係なく。
――どこかで、”兄より優れた弟など存在しない”と聞いたことがある。
俺はその言葉に強い憎しみを抱いた。たった18分の差で、こんなに強くなれるものか。
問とは無言のまま学校に帰って、俺はクイ研に立ち寄った。問はそのまま寮に帰ったらしい。
「どうだった?」
同級生にそう問われる。
「…自分がしみじみ弱いって感じた」
同級生は不思議な顔をしていた。
「…問に、1点も取れなかった」
驚きの声が部内全体から上がる。
[[rb:WA > ウイニングアンサー]]の正解音が聞こえた時のことを思い出す。
苛立ちが収まらなかった。椅子を乱暴に引いて、身を投げるように座る。目の前にあるボタンを握り締めた。
強くなりたい。クイズに、もっと強くなりたい。
そう思って、また、クイズをした。
それが、2日前の話。
とっくに夏休みに入っていた。あれきり、問とはすれ違っているのか会っていない。
そうやってゴロゴロしていると、部屋に友人が入って来た。
「問がカレー食べながら泣いてたよ。『僕が強すぎたから』って」
「強者だけの特権かよ」
ガリガリ君のソーダ味を差し出されて、封を開けた。二人で床に座り、シャリっと、爽やかな音を立てる。
美味しい。1口、また1口と、口の中に放っていく。
「1点も取れなかったからって兄に当たるなんて、酷い人だね」
「問に当たってる訳じゃない。自分に怒ってる」
「今日問クイ研行くって。お前も行ったら?」
窓際に飾った風鈴が音を立て、七夕の短冊がひらひらと揺れる。
短冊には”たくさんのクイズができますように”と、”東言”の名前が書いてある。
「…迷ってる」
「なんで?お前が愛してやまないクイズだぞ」
「このまま部屋でゴロゴロしててもいいな、って」
ため息をつかれて、俺はまた一口食べた。
「泣いてんのに、いいの?」
「あいつは俺のために泣いてんじゃないよ。それで俺を釣って自分がクイズするためだ」
“はァ?”というデカい声が耳元で響く。
「でもいいじゃん、クイズできる」
「問に今の状態で会ったら、俺が憤死する」
食べ終わったガリガリ君の棒の裏表を見ても、何の字も書いていない。
「でも、ひとりで行きたくないから着いてきて」
友人が笑って言った。
「どうしても行かせたい訳?」
大きく頷かれて、俺は棒をゴミ箱に投げ捨てた。
教室のドアを友人が開けて、俺も続けて入った。
問が顔を上げて、こちらを見据える。まるで獣のような、獲物を必ず捉えると言わんばかりの表情。
「言」
こちらに向かってきて、胸ぐらを掴まれた。壁に追い詰められたが、無抵抗でいる。
「お前は、本気でやったのか?本気で、クイズをしたのか?」
問の腕には強い力が入っていた。片腕を掴んで力を込めながら、返答を口にする。
「勿論。それでも尚、お前に勝てなかった」
「そんなわけない。1点も取れない訳がない。お前は、俺と同じくらいクイズが強い」
泣きそうな声が教室に響く。教室中の注目が集まっている。
「それも幻想だったんじゃない?お前ほど、俺はクイズが強くなかった」
「そんなわけないだろ!お前が手を抜いたとしか思えない」
自分がさっき思っていたことと逆の言葉が出ていく。
「俺を過信するのはもうやめろよ」
“兄より優れた弟は存在しない”。
そう口にすると、問に頬を叩かれる。
「いい加減目を覚ませよ」
頬がヒリヒリと痛い。問の言葉が痛い。
「俺たちは”双子”なんだよ。たったの、18分の違い」
たったの。
問は、”たったの”と言った。
「目を覚ますのはどっちだよ」
ここで引く訳にも行かない。言い返す。
ピリピリとした空気になる。こんなことは望んでいなかった。
「お前だよ、言」
問がより一層腕に力を込めた。
「俺は性格が悪いんだよ。クイズにおいては、常にお前を潰すことを考えてる」
「嘘なんか、つかなくていいから、」
問の腕を振り払って、椅子にゆっくり座った。ボタンを触る。
「だったら、来いよ」
問を挑発するように、人差し指で手招きをする。
彼は俺の隣に座って、ボタンを持った。
「問題はなんでもいい。長文難問でも、短基でも、なんでも」
他には誰もボタンを持たなかった。あの時と、同じ状況。
ピーン。
ピンポンピンポーン。
ピーン。
ピンポンピンポーン。
ボタンが光る音。
人が解答する声。
正誤判定機の音。
あの時俺がもらったのは、問いに対する誤答の刻印だけだった。
――お前はこの問いに間違えた。
その、示しだけ。
22対、22。
活動時間の終了によって、強制的に決着がついた。
「ほら、言ったでしょ?」
問が笑いかけてきた。さっきのことなど、嘘のように。
俺はボタンの片付けをしてもらうことを断って、問の手を引いて、自分の部屋へふたりで入る。
エアコンを付けず窓が開けっ放しだったため、部屋は蒸し暑い。だが涼しい風が入って来て、心地よい。
ふたりで床に座って、口を開く。
「問題の相性が少なからずあるとはいえ、俺は弱かった。そう、今でも言い続ける」
山奥。誰も聞いていないふたりだけの部屋で、俺は静かに涙を流した。
「憎んだよ…兄より優れた弟はいないって、誰が言い始めたんだ」
問は目を伏せて、何か遠くのものを見ているようだった。
「…僕は、怖かった」
彼は風鈴に目を向けた。再びチリンチリンと鳴る様子に、夏を感じずにはいられない。
「そんなわけない、言は僕と同じくらい強い、なのに、答えてくれない。ボタンを押すのをやめようと考えたけど、それはクイズに対する冒涜になる」
それでも――。
「言はさっきのフリバで、僕と同じ点数を取った。みんな見てただろ」
問が、短冊を見て言った。
気分が悪い。あらゆる気持ちが入り交じって、気持ち悪い。
「お前がクイズを愛していることはよく知ってる。それに、僕と張り合うくらいに強いことだって…!」
「知らないよ、そんなの」
俺は涙を拭いながら、そう言った。
「そのあとのフリバでいくら正解を積めたとはいえ、あの大会の決勝で1点も取れなかったのは事実。俺はあの大会の問題傾向と合わなくて、お前はすごく合致した。それで、もうこの話はおしまい」
部屋を出ていこうとすると、問が慌てて追いかけてくる。
「どこ行くの」
「少しだけ」
ポケットから外出届を出して見せると、問は驚いた。
「待って、」
「早く来いよ」
職員室へ走る問を見届けて、俺は外へ出た。
「…暑いね」
両親に送ってもらった自分のスマホと財布を持って、ふたりで山の中を歩いていく。
「これから夏休み終わるまで俺はもう寮には戻らない」
俺に着いてきたってことは、お前もそれでいいのか。
そうやって問うと、頷いた。
「これから大阪まで電車で行って、そこから新幹線で鹿児島に行く」
「じいちゃんばあちゃん家行くの?」
「そう」
「クイズは?」
「みんはやでいくらでもできるだろ」
しばらく歩いて、電車に乗って。問は俺に寄りかかって眠ってしまった。
窓の外を眺めた。雲がいかにも夏という感じがして、思わず微笑んだ。
夏の雲が好きだ。夏の雲が好きだから、今日という日のことも好き。
部屋に飾った風鈴を思い出す。同部屋の奴に”風鈴をなぜ飾るのか”と問われ、”夏だから”と答えたら不思議な顔をされた。夏が好きでないと、風鈴も好きでないのかとこちらが不思議に思ったくらいだった。
駅に着いて、問を叩き起こす。
「チケット取ってあるの?」
電車から降りて、足を進めながら言われた。
「勿論」
これは、計画的な亡命なんだ。
ずっと前から、考えてきた。
「…お前、本当に着いてきてよかったのか」
コンビニで夜食代わりのおにぎりを買って、椅子に座って食べながら訊いた。
問はサンドイッチのレタスを咀嚼しながら、勿論と言わんばかりの表情で頷いた。
「なんで?僕に相談もしないで行くってことは、よっぽどのことでしょ?」
「別に、そんなんじゃなかったんだけどなぁ…」
でも、案外そうなのかもしれない。
あの監獄から逃げたかったから、誰にも相談せずに逃げた。
逃げようと、した。
「言ちゃんは、逃げたかったんでしょ。[[rb:あそこ > ・・・]]も[[rb:ここ > ・・]]も、合わないから」
俺より問の方が、よっぽど俺のことを分かっているのかもしれない。
「それに加えて、僕が大会でトドメ刺しちゃったんだ」
まだその話をするか。俺は頭を抱えつつ、最後の一口を口に入れる。
結局は、前々からあの監獄から逃げたかったことになる。
「時間だ」
立ち上がって歩き出す。
「ん、待ってよ」
問はサンドイッチを口に詰め込んで、俺を追いかけて来た。
そこに着いたのは、夜になる頃だった。
「なんだか、わくわくするなあ」
それからまたバスに乗って、祖母と祖父の家まで。
「母さんに言ったの?」
「言ってない。父さんにも言ってないし、じいちゃんばあちゃんにも言ってない」
「じゃあびっくりするね」
問との逃避行。なんだか特別な感じがして、心做しか自分もわくわくしている。
その内家の前に着いて、チャイムを押す。
ガラガラと扉を開けたのは、祖母だった。
彼女は目を見開いて、口を開けたまま。
「来ちゃっ、た」
問と一緒に、笑ってみせた。
チリンチリン。縁側に下がった風鈴を眺めながら、夏の風物詩であるガリガリ君のソーダ味を食べる。
その隣には問がいて、梨味のガリガリ君を食べている。
「夏だね」
「うん、夏」
言ちゃんのソーダ味も美味しそう、と問は言って、強引に俺の口に舌をねじ込んだ。
何を考えているんだ。息ができなくて苦しい。
「ッ…!このバカ!」
口を離したその間に、問のガリガリ君をかじる。
「だって言ちゃん、ヤキモチ妬くくらいには僕のこと好きなんでしょ?」
ドクンと、心臓が高鳴る。
「俺はお前のクイズの強さに妬いてんだよ!」
「じゃあ僕のこと好きじゃないの?」
「そんなこと、言ってないだろ…」
下を向いた俺を問は抱き締め、頭を撫でた。
「分かってるよ。ごめんね」
「お前は…クイズでも日常生活でもそうだ、俺よりいつも、一枚上手」
「でも、言ちゃんに心理戦はいつも負ける。賭けだって、それこそクイズだって」
「そうじゃない!お前は問題の相性がいいゾーンがデカいんだよ…」
どれだけお前を羨んでいるのか、分かってるのか。
そう言いかけて、キリキリと歯を食いしばる。
「言ちゃんは、僕になりたいの?」
「そういう訳じゃないって、」
俺は生まれ変わるなら、東言か都会の椋鳥がいいんだ。俺は、俺でクイズに強くなればいい。
「結局、何が言いたいの?」
「…お前が、好き」
顔が真っ赤になっている自信がある。蝉はミンミンミンと、鳴き続けていた。
fin
コメント
1件
重くて綺麗な話でした……。 クイズの勝敗じゃなくて、その奥にある“お前が好き”っていう感情の持っていき方がすごく刺さりました。 言ちゃんが「俺はお前のクイズの強さに妬いてんだよ!」って叫ぶのに、そのすぐあとの「お前が好き」って……もう、全部受け止めたくなる気持ちになりました。 夏の風景と風鈴、そして逃避行の2人。闇と光のコントラストが本当に美しかったです。 てんばさんの紡ぐ言葉、ずっと受け止めていたいと思いました🌙🤍