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「氷が愛に変わるとき」
🟦🏺
アイスバースの作品です。
※wt様とアイスバースの話題で盛り上がった結果思いついた話です。同じテーマでそれぞれが書いたものになります。打ち合わせゼロで書いたのですが、ネタバレになるのでなにも言えませんがぜひwt様の作品もご覧ください!!
🧊アイス→体温が常人よりも低いことで判別可能。ジュースと結ばれると数分で身体が溶けて死んでしまう。
🥤ジュース→見た目は普通の人間。アイスと恋が成就し、アイスを溶かしてしまうことで初めて自分がジュースだったと自覚・発覚する。アイスとジュースは惹かれ合う運命にある。
※今作ではアイスとジュースはかなり稀な体質&世間一般的にもほとんど知られていない、という設定です。
※※過去とか家族関係とかいつにもましてガチで色々捏造しているのでご注意ください。
1
太陽のように熱い男の体は氷のように冷たいことに青井が気づいたのは、手遅れになってからだった。
青井は困惑していた。最近、つぼ浦が自分を見る態度がどう考えてもおかしい。
地上班には縁のない屋上で意味もなくブラブラして、青井を見つけると手を振ってくる。しかし証拠品を渡そうとして手が触れたらセクハラ罪だ!と叫びながら逃げていく。
犯人を現行犯処刑して爆発炎上、青井が頭を下げに飛んでいったら埒のあかない問答をどこまでも繰り広げる。しかし服を脱がせて傷口を見てやろうとしたら、罵詈雑言の嵐で遠ざけられた。
堂々巡りの他愛もない話をしかけに来たのに、青井が水分補給で鬼のメットを脱いだらとんでもない顔をして逃げていく。
正直言うと微笑ましい。可愛い犬がじゃれついてきて嫌がる人間は生粋の犬嫌いだけだろう。青井は幸い犬が好きで、同時につぼ浦のことも好ましく思っていた。
つぼ浦の行動は、いわゆる構ってちゃんなのだろうと青井は解釈していた。国家ギャングの暴力装置、特殊刑事課つぼ浦匠にはキャップや青井のような安全弁が必要だ。ボケにはツッコミが必要なように、物事の辻褄合わせを期待しているのだろう、と。
でもどうせじゃれつくなら自分だけに、と思うほどには、青井はつぼ浦のことを好いていた。
今日も犯罪対応を終えて、駐車場で青井はつぼ浦に形ばかりのお説教をしていた。
「次からは、いきなりグレ投げちゃダメだからね」
「投げてねぇっすよ、トラ……」
「トランクの中に入れるのもダメに決まってんだろ。……いや、ちょっと面白かったけど」
MOZUの車と見るやちょっかいを掛けたくなるつぼ浦の前に、運悪くヴァンダーマーの車が通りかかった。職質をかけ、一方的に持ち物検査をしようとしたつぼ浦から逃げようとしたが、その前につぼ浦がトランクを開けていたのが運の尽き。青井が止める間もなく大リーグピッチャーさながらの素晴らしいフォームで投げられたグレネードが逃げる車のトランクにホールインワン、爆発炎上したのが30分前。
「ダメだよー、犯罪してないときは市民だからね」
青井はため息交じりに正論で諭す。正論を言いつつも、南国小僧相手にキレ散らかすヴァンダーマーのことを思い出して鬼面の下で少し笑ってしまった。
「してたんっすよ、花とクスリがたんまり乗ってたんだ」
「だから、お前が爆破したから証拠なくなっちゃったんだよ」
「チクショウあのワクワクおじさんめ、やられたぜ。そういう作戦だったのか!」
「そういう作戦になっちゃったんだよ、なだめるの大変だったんだからね」
つぼ浦のせいで証拠が消えたので罪を帳消しにすること、治療費をつぼ浦が払うこと(しかし金がないので青井が立て替えること)で青井はなんとかその場を丸く収めた。しかし、ギャングのボスであっても遠慮なく正面から突っ込んでいくつぼ浦を思い出して苦笑が止まらない。やりたいように自由に生きる姿は野放しの子犬のようで可愛かった。
でもこの子犬は捕まえようとすると逃げる。青井はおもむろに右手のグローブを脱いだ。自分と手が触れるとなぜか逃げていくつぼ浦に、日頃の対応課としての鬱憤晴らしも兼ねて、ちょっとした悪ふざけのつもりだった。
「でも、つぼ浦さ。次からは俺も本気で怒っちゃうかもよ?」
つぼ浦の腕を掴んで身体を引き寄せ、平坦な声で青井は告げた。いつもなら火でもついたかのように逃げていくのに、つぼ浦は腕を振り払う様子がない。
青井は不審に思って顔を見上げた。つぼ浦は熟した柿みたいに真っ赤になって、口をはふはふさせている。ズレたサングラスを直す余裕もない。ただ腕を掴まれただけでそんなになってしまう状況を指す言葉を青井は知っていた。理性より先に身体が反応してしまう、これは恋だ。
点と点が繋がっていく。しかしそれより前に青井は異変に気づいた。冷たいのだ。つぼ浦の腕が、青井の手の熱をはるかに奪うほどに。
青井は急いで左手のグローブも口で噛んで脱ぎ捨てた。その手でつぼ浦の手を握る。ひゃっ、みたいなか弱い声を上げるつぼ浦を無視してその手の温かさをなんとか探そうとする。
「ね、つぼ浦、お前……体温低かったりする?」
「はへ……?お、おう、そうだぜ。夏は涼しいし冬も寒くないんだぜ」
裏返った声でつぼ浦は答える。青井は血相を変えて手を何度も握る。いくら触れても青井の熱が奪われるばかりで、つぼ浦の体温は不気味なほどに低かった。
青井の背筋に冷たい汗が滑り落ちる。鼓動が早まって、口は過剰なほどに酸素を求める。
「お前、まさか、アイス……」
「あ、アイ……?あい、アイ、愛とか、や、やめろよアオセン!そういう破廉恥なのはよよよくないんだぜ!?」
つぼ浦はのけぞりながら青井の手を振り払おうとする。青井にとっては非常にまずい方向に勘違いしていることに気づいて、青井はわざと強く手を振り払った。
「お前さ……知らないの?」
「なにがっすか?!」
「体温、低い理由」
「ア?な、なんだよいいだろ?個性っすよ、個性!いいか、平熱ってのはな、人によってばらつきがあって……」
突然IQが高くなったつぼ浦の詳しい解説を聞き流し、青井は過呼吸で痛む胸を手で押さえた。
「なんで、病院とかは」
「知らないのか?天才は風邪ひかねぇんだよ。俺はIQ99の天才だからな」
「でも子供の頃とか、どこかで診断……」
「んだよ、水掛け論かァ?大丈夫だぜ、生まれつきだからな。チクショウわかったぜ!さてはアオセン、おおごとにしようとしてんだろ?!行かねぇからな!!俺、注射なんか大嫌い……じゃねぇ、俺くらいになると注射のほうが遠慮しちまうからな」
自分がいかに健康で、病院とは縁遠いかをベラベラと喋り続けるつぼ浦の前で、青井は吐き気をこらえていた。幸い蒼白な顔は鬼面のせいで気づかれない。過去のトラウマが脳裏をよぎる。指先が震えないように強く力を込めた。
「……だから、命に関わるようなもんでもねぇし。大げさっすよ」
その言葉で青井は我に返った。目の前ではつぼ浦が大仰に両手を広げてふんぞり返っている。
「……わるんだよ」
「ア?んだァ?腹から声出してくださいよ、そんなんだからギャングに舐められるんっすよ」
「だから、……ッ!!!」
顔を覗き込もうとしてきたつぼ浦を突き飛ばし、青井はその場から走り去った。「暴行罪っすよ!」という声が遠ざかる。
本署のエントランスに飛び込んで、階段を駆け上がり、屋上のドアを乱暴に開く。息を切らしながら数歩、屋上に歩み出て、急に足の力が抜けてその場に膝をついてしまった。
「関わるんだよ、命にっ!!」
頬を伝う汗が気持ち悪い。ツノをつかんで乱暴に鬼のヘルメットを脱ぎ捨てる。汗の雫がぽたぽた床に垂れた。その水滴を見てまた強い吐き気がこみ上げる。
せり上がってきた胃酸を強引に飲み込んで、青井はゆっくり立ち上がった。逃げるようにヘリに乗り込む。機体はあっという間に空に舞い上がり、本署が遠ざかる。
駐車場にはまだパステルカラーの人影があった。この距離で見えるはずもないのに目が合ったような気がして、青井はぐんと高度を上げた。
この瞬間から、じゃれつく子犬が爆弾に代わってしまった。
青井の手ひとつで溶かしてしまえる、氷でできた爆弾に。
*
この世界には稀に第二の性を持つ人間が存在する。それがアイスと、ジュースだ。
アイスは体温が低いことで判別可能だが、ジュースはアイスを溶かして初めて自分がジュースだったと自覚する。普通は自覚できないが、青井には苦い心当たりがあった。
それはもう20年以上も前のこと。小学生だった青井には仲のいいクラスメイトがいた。その女の子は青井の双子の弟、ラディとも仲が良かった。そしてある日、その子が好きな人に告白をしたいと悩んでいるという噂を聞きつけた。自分が選ばれるだろう、自信家の青井は何となくそう確信していた。しかし顔を赤らめながら近づいてきた彼女が口にした言葉は、「ラディくんを公園に呼び出してほしい」だった。
信じられないくらい不器用な笑顔を取り繕って、砕け散った淡い期待や優越感をゴミ箱に捨てて、青井は承諾した。嫉妬に狂えるほど心は成熟しておらず、憎悪をぶつけるほどの恥知らずにもなれなかったからだ。
破局を期待する暗い気持ちを抱えたまま、青井は告白される弟のことを花壇に隠れて盗み見ていた。告白に驚いて耳まで赤くなる弟と、受け入れられたことを知って涙をこぼす女の子。
───顔は同じなのに、どうして自分は選ばれなかったんだろう。そんな事を考えているうちに青井の視界が歪んだ。
実際に歪んでいたのは彼女だった。まず涙が大げさなほどにぼろぼろと目から溢れはじめた。それは涙ではなかった。眼球自体がどろりと溶けて滝のように頬を流れていた。その頬を抑えていた指先も形なく崩れはじめた。スカートから覗く足が折れ曲がるように溶けて、助けを求めて叫んだその舌が水になって下顎ごとずるりと取れる。
悲鳴を上げてへたり込んだラディの前で、声を出すこともできなくなった人の形をした氷がどろどろ溶けていく。もうどこのパーツかもわからない肉色の氷が無惨に崩れ落ちる。青井は悲鳴を上げた。大声を出すと胃の中のものがこみ上げてきて身体を折り曲げて嘔吐した。声を聞きつけた大人が近づいてきた頃には、女の子の服と華奢なヘアピンだけが水たまりに浮かんでいた。
青井は座り込んだままのラディに抱きついた。放心したラディは何度手を差し出しても無反応だった。
本当の地獄はその後だった。血相を変えた両親からの追求と、女の子の両親の泣き崩れる姿。ショックで寝込んでしまったラディの代わりに、青井は真新しい黒い服を着て震える手で線香をあげた。骨壺もない仏壇には花と写真が置いてあった。可愛らしい写真立ての中で彼女がどんな顔をしていたのかは今でも思い出すことができない。
大人たちからの罵声を浴び続け、青井は自分自身を責めるばかりでラディのことを気遣うことができず、兄弟の間にはいつしか深い溝ができてしまった。
ただ生まれつきジュースという体質だっただけで、アイスという自覚がなかったせいで、一つの命が消えた。それはトラウマなどという一言では到底片付かない。
青井が下した結論は一つ。誰かを好きになったりしない。なったとしても、両思いには絶対にならない。
双子の弟がジュースなのであれば青井もそうである可能性が高いに違いない。体温が低いからといってアイスと診断されず、自覚がない人間はいくらでもいる。何しろこの体質は稀なのだ。
もう二度とあんなことを、少なくとも自分は誰かを溶かしたりしない。青井はそれだけを胸に三十余年を生きてきた。
「……なんであいつがアイスなんだよ」
青井の苦々しいつぶやきが曇天の空に溶ける。何分、何十分飛んだのか自覚もしていないがヘリはあてもなくロスサントスの空を放浪していた。
空一面に広がる灰色の雲は魚の腹のようだ。高度を上げても頭上を覆い尽くす灰色が逆に頭を押しつぶしてくるかのようだった。
恋愛を遠ざけてきたとはいえ青井も鬼ではない。人を好ましいと思うことはもちろん、好意を持つこともあった。しかし久しぶりに強めの好意を抱いた相手がまさかのアイス。密度の濃い恋愛を長年遠ざけるうちにすっかり嗅覚が鈍っていて、つぼ浦のあからさまな好意はもちろん自分の本音にも気づけなかった。
つまり手遅れだった。つぼ浦が向けてきた無邪気な眼差しの意味をもう青井は知っている。そして青井がつぼ浦を見ると思い起こす感情の意味も。
なにしろアイスとジュースはお互いに惹かれ合うようにできている。この性質を世に放った神はアイスはジュースの手の中で溶けて死ぬのを美としたのかもしれない。
あの日、兄弟で同じ子を好きになりラディが選ばれたように。青井もまた無意識にアイスのつぼ浦に惹かれてしまったのかもしれない。
「どうせあいつ、好きだと思い込んでるだけだろ。俺がジュースだから。騙されてんだよ」
そしてつぼ浦も、青井がジュースだから惹かれているに違いない。青井は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
つまるところこの恋は「勘違い」なのだ。厄介な性質が見せた錯覚。本能が引き起こしたバグ。ジュースの腕の中でアイスが溶ける、美しいエンディングを迎えさせようとするどこかの神の悪ふざけ。
そんなものに踊らされるつぼ浦が不憫で青井は舌打ちした。自分が溶けることも知らずにぬるいジュースに飛び込もうとする氷だ。つぼ浦なら、あるいは真実を知っても飛び込むかもしれない。あの突拍子もない男がなにを考えてどう行動するのか青井にはいつまで経っても読めない。今はそれがあまりにも致命的だった。
思考は堂々巡りをするばかりだった。青井はポケットから煙草を取り出そうとしてやめた。つかの間の空中散歩は気分が晴れるどころか垂れ込める雲を吸い込んだかのように余計に胸が重くなってきた。警察ヘリを私用で占有するわけにも行かず、青井は本署へとヘリを向かわせた。
上の空でもヘリは見事な着陸を見せた。運転席から降りてヘリをガレージに格納し、大きく背伸びをした青井の耳に小走りに近づいてくる足音が聞こえた。
「オーイ、アオセン!なにしてたんすか?」
少し斜に構えたような、若者らしいハリのある声。青井はギョッとして声の主を見た。先ほどとても親切とは思えない別れ方をしたのに、つぼ浦は変わらず笑顔で手を振っていた。
「おまッ、なんで……」
話しかけようとして青井は言葉を飲み込んだ。今目の前にいるのは青井が一言「好きだ」といえばすぐに溶ける氷だ。少しでも隙を見せて好意を漏らせば死んでしまう。青井は鬼の顔の下で唇を強く噛んだ。決断しなければならなかった。
つぼ浦は片手に持っていたなにかを青井に見せようとした。それに一瞥もくれず、青井は顔を背けて屋上のドアへと歩いていこうとした。
「待てよ、これ!忘れてるっすよ、まだ若いんだからしっかりしろよォ?」
呆れた声を上げて、つぼ浦は青井の手を掴んで引き止めた。左手には先ほど脱いで地面に落としたままだった青井のグローブが握られていた。
「あ……りがとう」
感謝の言葉が反射的に出た。忘れ物を取ってきて目をキラキラさせる子犬が青井の目の前にいた。
しかし青井の手を掴むその手は、氷のように冷たかった。
好きだからこそ溶かすわけにはいかない。青井はなにか言いたげなつぼ浦を乱暴に突き飛ばし、早足で屋上をあとにした。
2
その日から青井は明確につぼ浦のことを避けた。当然会話はしないし、近づいてくると露骨に部屋から出て、現場対応が重なりそうになると後輩に押し付けたり適当な理由をつけて逃げた。冷たくするたびに叱られた子犬のような顔をするのが心をささくれ立たせる。好きだと思った時間の分だけ青井が受けるダメージも大きかった。
青井にはあの常人では推測もできない突飛な行動をする衝動の塊が、なにをすれば諦めるのかがわからない。自然消滅。それだけが青井の願いだった。
ロスサントスの犯罪対応の中でも花形業務、パシフィック銀行強盗対応を終えて青井は本署の屋上で休憩していた。マスクを脱いでタバコを口に運ぶ。ほろ苦い煙を空に吐き出し、こっそりあたりを見回した。
人影は、ない。あのパステルカラーのアロハシャツ、常夏気分の姿はどこにも見当たらない。牢屋対応を終えた後輩たちがせわしなくヘリの世話をし始めたのを見て、青井は邪魔にならないように屋上の端へ移動した。
連日避け続けた結果、ついにつぼ浦は青井に近づいてこなくなった。それは青井にとっては勝利宣言であり、苦い恋の終わりでもあった。
不意に軽い足音が近づいてきた。心臓を鷲掴みにされたかのような緊張感が走り、青井は勢いよく振り向いた。
「らだおー、おつかれさま!」
「なんだ、マンゴーか」
可愛らしい猫がぴょこぴょこ近づいてくる。いくらなんでも足音に過剰に反応していたことに気づいて青井はため息をついた。
「パシフィック、すごかったね。らだおのおかげでいっぱい倒せタヨ」
「へへ、まぁね。マンゴー、尻尾付いてるからサーマルでわかりやすいんだよ」
どれだけ指示を出したところで青井はあくまで上空から状況を監視するだけだ。地上でどんな相手にも打ち勝つ最強猫がいるのは心強い。青井のすぐ横に寄ってきたマンゴーの頭をぽんぽん撫でると、本物の猫のように手に頭を押し付けてくる。こうやってマンゴーと二人の時間を過ごすのは久しぶりで、青井の表情も思わずゆるんだ。
事件対応も終わり、本署はつかの間のチルタイムだった。後ろで整備を終えたヘリが試運転してはガレージに格納される音がする。横のマンゴーがなにか言いたげな、ソワソワしていることに気づいて青井は体ごと向き直った。
「どしたの?なんか用だった?」
「らだお、最近特殊刑事課のコトあんまり対応してないネ?」
正面から急所を突かれて青井は鋭く息を飲んだ。いつものクセで驚きと恐怖が顔に出た。今は鬼面を被っていないことを思い出し、すぐに笑顔を取り繕う。
「やめろよマンゴーまで、対応課とか言うの。不名誉なんだから」
「名誉ナイんだ?」
「ないない、あれは押し付けられたの!……俺じゃなくてもいいんだよ」
「アー、だから最近はつぼ浦さん、成瀬が対応してるんダネ」
「え……成瀬が?」
頭に石でもぶつかったかのように、青井の意識が一瞬飛んだ。突発的に胸の奥になにかがこみ上げた。
「……まぁいいんじゃない?」
表情を繕えず青井は顔を歪めたまま苦笑した。あのかんしゃく鉄砲玉を押し付けられた成瀬がどんな顔で「対応」しているのか、青井も少しだけ気になった。しかし口プに定評のある成瀬なら青井よりも馬が合うかもしれない。
口から生まれた男同士の対決はさながらゴジラVSメカゴジラか、エイリアンVSアバターか。成瀬に言い負かされるつぼ浦のことを想像して青井の口角が勝手に上がる。どんな情けない顔をするのだろうか、どんな突飛な論理を出してくるのだろうか。そんなことを考えると自然と笑えて、そして胸が痛くなる。
青井はつぼ浦を遠ざけただけだった。事ここに至ってもなお、青井はつぼ浦を嫌いになれたわけではなかった。
「らだお、それでいいんだ?」
「へぇッ?なにが?」
唐突にマンゴーに問い返され、青井から首を絞められたニワトリのような声が上がる。
「つぼ浦さん。成瀬でいいノ?」
「いいもなんも……かわいそうなのは成瀬のほうじゃない?あんなの押し付けられて。手綱握れるといいけどね、難しいだろうけど」
「ンー」
しかしマンゴーは不満そうな声を上げている。何を言おうとしているのかが理解できず、青井は折れそうなくらい首を傾げた。
「マァいいや、がんばってネ」
「え?あぁ、うん……?」
青井の背中をポンポン叩いてマンゴーは走り去っていった。一連の会話の意味がわからず、青井は指元を焼くほど短くなっていたタバコを慌てて投げ捨てた。
自分の代わりを成瀬が務め始めた、という話を青井はゆっくり咀嚼する。それはつまりつぼ浦はもう青井には前のようにまとわりついてこないということ。少なくともつぼ浦の命を守ることはできた。それだけで肩の重荷がだいぶ降りた。
そんな青井の耳につぼ浦のクソデカい大声が遠くから聞こえてきた。ぎょっとして姿を探すと、屋上から見下ろす駐車場につぼ浦の姿があった。距離があることに安堵してため息をついた直後、そのつぼ浦が誰かに駆け寄っていくのが見えた。赤いサンタ帽にペンギンマスク、成瀬だった。
「……これでいいんだよ」
小さく呟き、青井は煙草を取り出そうとポケットに手をやる。潰れた箱の中で引っかかった煙草が2本出てきてイライラしながら邪魔な1本を戻そうとする。そんなことをしているうちに、また内容は聞き取れないがつぼ浦の大声が聞こえた。つい目を向けてしまった青井は息を飲んだ。
「なんだよ、お前……」
この距離でもはっきりと分かるくらい、つぼ浦は顔を真っ赤にして成瀬の前で大げさな動きでヒョコヒョコしている。成瀬がなにか言うたびに地団駄を踏んだり、頭を抱えて悶えたり。
青井は急に思い出した。あのときのつぼ浦の恋に舞い上がる顔。気性の荒い大男がまるで少女のように頬を赤らめていたあの顔。目線のはるか下で、つぼ浦はその顔をしていた。
「ッく……」
声が漏れそうになって青井は口を閉じた。信じられない罵声が飛び出すところだった。
腹の底からこみ上げて口から零れそうになるのは、どす黒い嫉妬だった。自ら終わらせようとしている恋への嫉妬だった。
ポケットから無理矢理引っ張り出した煙草が2本とも屋上に転がり落ちた。拾う気にもなれず、深い溜め息が風に溶ける。外したままだった鬼の面を被り直し、青井は屋上の縁から離れた。
青井の中では何一つ間違ったことは起きていなかった。つぼ浦と両思いになればつぼ浦が溶けて死ぬこと。だから突き放した結果、つぼ浦は成瀬を好きになったこと。結末を見れば全て正しく正解だった。
しかし心が納得しない。警鐘が鳴り止まない。なにかがおかしい。
「……いやなんであいつ、成瀬なんだ?」
屋上のドアの横に貼られた成瀬の「見てるぞ」というステッカーを見て青井は考え直した。
青井の知っているつぼ浦は、恋愛に関しては純粋で無垢な男だった。女性と手をつなぐのはもちろん、猥談にも飛び上がって逃げるし恋バナなど振られた日には退勤までしかねない、それくらい恋には臆病だ。
アイスとジュースは惹かれ合う運命にある。だからその臆病さをも乗り越えたのだと青井は思っていた。では成瀬は?
「あいつそんなすぐ別の人好きになるようなやつじゃないだろ……多分。まさか成瀬も……?」
嫌な予感が膨れ上がる。そもそもつぼ浦が青井を好きだといい出したこと自体が厄介な性質による勘違いだと青井は思っていた。その青井から簡単に乗り換えるとしたら、成瀬もジュースだとしか思えない。
青井はもう一度、屋上から駐車場を恐る恐る覗いた。成瀬が首まで赤いつぼ浦の肩に手を回し、顔を近づけてなにか囁いている様子が見えた。直後にスーパーシャウトもはるかに超えて屋上までつんざくつぼ浦の悲鳴が聞こえてきた。
どすん、と膝が硬いものに当たってはじめて青井は自分がその場にへたり込んだのだと気づいた。
「……これでいいんだよ。成瀬はきっと普通の人間で、俺に冷たくされたつぼ浦が成瀬の人の良さに惚れだんだろ」
つぶやきながらも拳にギリギリと力が入る。青井にはジュースと自覚する事件があったが、世間一般のジュースは破滅を迎えるまで自覚がない。「もし成瀬がジュースだったら」と「いや全部勘違いだ」の2つが頭の中をぐるぐる回る。
心臓が痛いほどに強く拍動し、喉が閉まって呼吸が苦しい。青井の理性はなにもするなと諭してくる。しかしあの日の記憶が次第に強くフラッシュバックする。
あの日、青井は選ばれなかった。その結果、弟が一人のアイスを溶かした。
つぼ浦はアイスだ。もし成瀬が違ったとしても、これから先の人生の中でまた別のジュースがつぼ浦を溶かすかもしれない。
愛する人を自分が溶かすのと、他の誰かに溶かされるのと、どちらがいいか。
青井は責任を取らなければならなかった。
3
つぼ浦は飛び上がりそうになる心を抑えて愛車のジャグラーを走らせていた。ここのところずっと冷たかった青井から突然「会いたい」という連絡が来たのはつい先程。一も二もなく私用なのにパトカーを引っ張り出して待ち合わせの場所へと向かっていた。
青井が指定した場所は海上レストランの奥、桟橋だった。明らかに車で入ってはいけない桟橋をゴトゴト走らせると、青井が以前誕生日にもらったトレロが停まっていた。その横にジャグラーを停めてつぼ浦はなるべく自然に見えるように堂々と歩いて桟橋の階段を降りた。一番奥に、素顔の青井が立っていた。
「なんすかァ?話って。小言だったらカンベンしてくださいよ」
久しぶりに間近で聞くつぼ浦の声を耳にして、青井はもたれていた桟橋の柵から身体を起こした。日焼けした肌にいかつい刈り上げた髪型、オレンジのサングラスの向こうで緩やかに垂れる目が青井を見ている。
目の前に歩いてきたつぼ浦からはなんとなくいい匂いがした。どうせ成瀬の香水だろうな、と気づいて青井は小さく息を吐いた。
黙ってしまうと荒波が桟橋に打ちつける音が身体にまで響く。春のロスサントスは今日も曇天で、嵐の前触れかのように海は荒れていた。
つぼ浦を前にして青井はつい目を泳がせてしまう。ここに至るまでの間に何度も何度も考えたのに、いざ相対すると決意が揺らぐ。
ひときわ大きな波が桟橋の上までしぶきを上げた。それで我に返りつぼ浦の顔に視線を戻すと、平常心を装おうとしているのにウキウキ、ソワソワ、そんな気配がダダ漏れだった。
「ごめんね、呼び出して。ちょっと話があるんだけど」
「ったく、勤務中っすよ?まー今回はタダで許してやるぜ」
青井が目を合わせるとすぐにつぼ浦が目をそらす。つぼ浦が様子をうかがうと青井が目を背ける。そんな鍔迫り合いのようなことを繰り返し、ようやく青井が意を決してつぼ浦を真っ直ぐに見た。
「つぼ浦ってその……好きな人いる?」
「ガッ」
つぼ浦の喉からとんでもない音が出た。
「な……ん、なん、なんだよ急にィ!?」
青井が予想した通り、つぼ浦は顔を真っ赤にして慌てている。
「あー、言い方変えるわ。つぼ浦って、俺のことが好き?」
青井の真っ直ぐな目に射抜かれて、つぼ浦は顔を背けられなくなった。頭に火がついて顔がどんどんのぼせていく。
その様子を見ても青井は冷静だった。選ばれなかったあの日が、苦い過去だけが青井の首を掴んでいた。
つぼ浦は言葉を失ったかのようにただ唇を震わせる。
「ちげぇ、俺は……」
「え。違うの?」
「そうじゃねぇ!ッ、あーー、ちげぇ、俺はもうできるんだ舐めんなよ!!」
無茶苦茶な大声で迷いと恥じらいを吹き飛ばし、ダンッ!と一歩踏み出してつぼ浦は青井を見据えた。
「アオセン、アンタが好きだ!!」
音に驚いて桟橋のカモメが飛んで逃げた。ハァハァと肩を上下させるつぼ浦を、青い目が呆然と見つめていた。
「さ、最近、話聞いてくれねぇし、アオセン……そんなつもりないかもしれねぇけど、俺は、アンタが好きなんだぜ」
青井がなにも言えないでいるうちにつぼ浦がぽつりぽつりとさらなる愛の言葉を吐き出していく。その顔はいつもの狂犬とは思えないほどに優しく、愛おしげだった。
それら全てが、導火線に火のつく音だった。
青井はゆっくり目を閉じた。あの日と違い、青井はついに選ばれた。だから責任を取らなければならない。あの日なにもできなかった責任を。
「つぼ浦、俺もね。……お前が好きだよ」
ひゅう、と高い音を立ててつぼ浦が息を飲んだ。目をまんまるに見開いて、言葉の意味を噛み締めて徐々にその目が細められていく。ワナワナ震える手で赤い頬を押さえ、その指先までも桜色に染まっていた。
なんてきれいな恋の成就だろう。青井は思いの通じ合った嬉しさに震えるつぼ浦の顔を、記憶に焼き付けるようにじっくりと見つめた。
「アオセン、おれ、おれ……、ずっとどうしたらいいかわかんなくて」
「うん」
「れ、練習とかしたんだぜ?」
「告白の?」
「チクショウ、そうだぜ!だからすげぇ、ッ、嬉しくて」
「うん、うん、上手だったよ」
つぼ浦の声がふるふる揺れ始めた。目から涙がこぼれていた。
青井はつぼ浦の両手をとった。ひどく冷たいその手を胸に引き寄せて、少しでも温まるようにと手で挟む。
つぼ浦の涙は止まるどころか大げさに服にまでボタボタ垂れている。青井の記憶の中の女の子も目から溶けていた。
つぼ浦の形をした氷についた導火線は、ついに氷本体までたどり着いた。
「……ごめんねつぼ浦。大好きだよ」
「へ?」
青井はつぼ浦を強く抱きしめた。突然の抱擁につぼ浦の力が抜けた次の瞬間、桟橋を蹴って強引に海へと飛び込んだ。
白くしぶきを立てる荒波が二人を一瞬で真っ黒な海に飲み込んだ。
肺から空気が抜けきり意識が消えるその時まで、青井はつぼ浦のことを強く抱きしめて離さなかった。
やがてつぼ浦は海に溶け、その海に沈んで死ねるのなら。
あの日選ばれなかった青井は、愛する人を溶かして一緒に沈む道を選んだ。
4
「兄貴はいつもそうだ」
懐かしい声で青井は目を覚ました。暗闇で倒れる自分の横に同じ顔をした弟、ラディが立っていた。
あの世にしては殺風景で、しかも自分はともかくラディがあの世にいては困る。夢現の狭間、顔を上げようにも身体は動かず、青井はラディのいつもの物言いに苦笑した。
「はは、そう?」
「人の話を聞かないし、なのにわかったような口を利くし。お前なんか嫌いだ」
「ごめんねラディ、でも俺、今回は選ばれたよ。だからどうするか選んだんだよ。やっと取れたんだよ、責任を」
「そういうとこなんだよ。なんもわかっちゃいない、本ッ当に嫌い」
吐き捨てるような声が懐かしく、青井は笑ってしまった。それを見てまたラディは呆れたように溜め息をついている。
「でもさラディ、俺はあの時なにもできなかったじゃん。お前のことも、あの子のことも。でも、だけど今は……」
「だってあれは俺の罪なのに。なんで兄貴が背負おうとしてんだよ」
「え」
突然ラディの声が遠ざかった。
割れるような音が青井の耳いっぱいに飛び込んできた。口に柔らかいものが触れ、重苦しい胸に温かいものが吹き込まれ、空気を失った身体を再び動かそうとする。
「……ン、アオ……センっ!!」
「ッはぁ!!?」
耳元で大声で名前を呼ばれ、青井は目を見開いた。呼吸が戻ると肺にまだ残っていた海水を押し出そうと咳が反射的に出る。口から砂混じりの水を何度も砂浜に吐き出した。
青井の霞んだ目がやっと人影を捉えた。砂浜に倒れる青井の横に膝をついて、つぼ浦が青井の顔を覗き込んでいた。サングラスを流されたのか素顔で、青井と目が合うやボロボロと泣き出した。
「へ、は、つぼ……うら?」
「よか……ッた、なんすかマジで!?アオセンの地元だと告白したら海に飛び込む風習あんのかよ?!それに耐えられたヤツだけが恋愛界で生きられるってことか?チクショウやられたぜ!」
「なん、なんで?なんで生きて……」
「なんでって?俺が頑張って運んだんだぜ!!」
「なんで……」
蘇生されたばかりでひどく痛む頭で青井は必死に考えた。
つぼ浦は溶けていない。では恋が成就していなかったのではないか?しかし青井の唇には今も柔らかい感触がしっかりと残っている。吹き込まれた優しい息。あのつぼ浦がためらわずに人工呼吸をした意味は考えるまでもない。
「なんで、じゃあそんな、うそ……おれが、違った……?」
独り言を漏らす青井の横で、つぼ浦はまだ泣いている。いくら泣いても目玉は溶けないし、もちろん海にも溶けなかった。
青井は、ジュースではなかった。
ここにいるのはアイスと、ただの人間だった。
そこには運命も本能も存在しない。つぼ浦はただ青井のことを好きになり、青井もつぼ浦をただ好きになっただけだった。
騒動のあとに残されたのは、何にも動かされない純粋な愛だけだった。
青井は身体を起こそうとしたがうまく力が入らない。つぼ浦が背中を支えて上半身を起こさせる。
「ったく、次はやんなよ?危うくカニくんに電話して聞くとこだったぜ、普通恋が叶ったら海飛び込むのかってよ!!」
「え、なんで成瀬?」
「ン゛ッ?!アー、相談してたんっすよ。だってアオセン、急によそよそしくなったりするし、なんつーか……どうしたらいいかって」
「ふ、なーんだ、そういうことだったの」
恥ずかしそうにモゴモゴしゃべるつぼ浦を見て、全て理解して青井は笑ってしまった。おそらくマンゴーも成瀬の差し金だろう。全てが杞憂だったことを察して、気が抜けた青井は身体を支えるつぼ浦に体重をかける。
「えー、じゃあ本当にやったの?告白の練習」
「ぐっ……やったぜ!も、あんなん恥ずかしすぎてダメだ、アオセンよりカニくんのほうが恥ずかしかった」
「え、俺より?!どうせイケメンじゃないですよ」
「おおお、おれがやったのはペンギン相手だ!アオセンはイ、イケメンだぞ!!」
「そお?つぼ浦も、グラサンない方が可愛いよ。なんか、濡れた犬みたい」
「そりゃ今濡れてるからだろ!てか見んなよ人の顔!!」
「やーだ、可愛いもん」
つぼ浦が腕を離したら青井はまた倒れてしまう。なので腕を離すわけにもいかず、つぼ浦は至近距離で顔をジロジロ見られる屈辱に耐えた。
その代わり青井の端正な顔立ちを間近で見ることができた。ずっとしかめっ面で苦い顔をしていたのに、今の青井は吹っ切れたような顔をしていた。
雲間から夕日の差し込む砂浜で、二人はどこからどう見ても幸せなバカップルだった。
なんのしがらみもない愛だけがそこにあった。しかし片方の愛はもしジュースに奪われれば溶けてしまう。青井は自力で体を起こし、つぼ浦に向き直った。
「ねぇつぼ浦、俺のこと好き?」
また真剣な顔で聞かれ、つぼ浦は少し戸惑った。この心配性の先輩はずいぶんとゴールに遠回りをする。つぼ浦の中では答えは最初からずっとシンプルだった。
「好きだぜ、何度でも言えるぞ」
練習の成果もあってか自信満々の顔だった。青井の胸に熱いものがこみ上げる。
「お願い、ずっと好きでいて。俺を、俺だけを」
青井はつぼ浦に強く抱きついた。その冷たい身体をぎゅうぎゅうに抱きしめる。
今まで青井は自分が溶かすことばかり気にしていたが、今度はつぼ浦が誰かに溶かされないように生きなければならない。それが青井の新しい責任だった。
「な、なんだァ?!苦しいってアオセン!」
「いいから!だって、そうしないとお前っ、これからは俺が守るから!」
「埒が明かねぇな、好きだって!!チクショウ、なに言えば満足するんだ?アオセンはヘリうめぇし、えーっと色々頼りになるし、あとドリブルもうまいぞ」
「お前、はッ、アイスなん、だよっ!」
いつの間にか青井の顔を滝のように涙が流れていた。調子の良いことを言うつぼ浦を遮るように、勢いに任せて青井は真実をぶちまけてしまった。
つぼ浦はきょとんとしてから頬をピンクに染め、恥ずかしそうに青井を見つめた。
「アァ?愛す……って?俺をか?!んなの言うまでもねぇ、お、俺だって愛すぜ、アオセンのこと」
「は?いやお前、あいす、ってのは……」
真実を伝えようとした口がぱくぱく空転し、青井は言葉を失った。
丁寧に紡がれた愛の言葉で、青井の中の「責任」という名前の呪いが溶ける音がした。
───つぼ浦は、何も知らない。知る必要もない。
青井が守る必要すらない。二人が愛し合い続ければ氷は決して溶けない。
ただ幸せに生きること。それだけでつぼ浦は永遠に守られるのだから。
「俺も愛すからね、お前のこと。ずっとずっと」
つぼ浦の前で青井は静かに涙を流していた。その理由はサッパリわからないが、つぼ浦は自信満々に青井の背中に手を回した。
決して氷を溶かすことのない温かな手がつぼ浦を優しく抱きとめた。
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過去トラウマ捏造失礼しました!
青井は自分が選ばれず、あんな事件が起きた、という劣等感と自責の念を解消するために、本来ラディが処理すべき事件の責任を勝手に肩代わりしようとしてきたんですね。選ばれなかった事実をごまかして当事者になろうとした。でもラディからすると俺が守るから、とか俺ならわかるよ、とか言われても罪を負った当事者としてはお前なんやねんってなっちゃうよね。
しかも青井の想定していた責任のとり方は、アイスを溶かしたジュースも責任をとって死ぬこと。
でもそれは前提から覆されて……という感じでした。
愛し合うことが死の引き金だった二人が、愛し続けることで生きられるようになった話でした。
そしてぜひwt様のアイスバースもご覧になってください!!!
奇跡が起きています。一粒で二度美味しいです、私は悶死しました。
コメント
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もう最高です!!バース系二つも出てくると思わなかったので、しばらく放心状態でした。wt様の方を読んでからこちらに来たのですが、どちらも最高です!!バース派生どんどんお願いします!!長文失礼しました