突然の急用が入った為、至る所に設置された監視カメラの管理室を離れなければならなくなった。
数時間経てば帰って来ると近くにいた看守にその場を頼み、僕は持ち場を離れた。
約束通り、急に入った仕事を終わらせ、数時間で帰ってみればそこに看守はいなかった。
監視カメラを操作し、廊下で駄弁っていた看守を一発ぶん殴ってやろうかと思ったが、生憎下のやつにかけている時間も惜しい。
なんせ彼が帰ってきたかもしれないから。
なるべく早く仕事の全てを終わらせ、早く帰りたかった。
幹部の総隊長から無線機を貰い、彼を寝かせておいたという寝室へとカメラを向ける。
しかし驚いたことに、彼の姿らしきもの、人物は一切形を映そうとしなかった。
総隊長は彼を森林の、しかも頂上に近い場所で捕まえたそうだ。
酸素の薄い場所に長時間滞在して早々、まともに動けるほうが化け物じみている。
彼ならやりかねないだろうけど。
クズ総統に指示されていない場所の監視カメラを起動する。
本来なら起動することは一生ないが、緊急時のためと称し、クズから巻き上げた金で制作したものだ。
彼の手にある金が可哀想だ、回してあげなきゃ。
地下にある監獄に、誰かの通った痕跡があった。
クズに言われたものではない、報告していない独自のプログラムを駆使し痕跡を調べれば、一番に出てきたのはあのクズだった。
そのあとに続いている足跡には見覚えがないらしく、プログラムも検索結果がないと表記した。
左上にあったモニターに見覚えのある人影が映り込むと、激しい砂嵐と共にモニターが途絶えるのを視認する。
無機質な音を立てる無線機に手を当て、電源をつける。
「監獄に連れて行かれた」
口は報告を語り、手はもう一つの足跡の正体を調べていた。
エンターキーを押すと同時に出てきた人物に、自然止めが細まる。
「同行者はクズと同じ転生者。気をつけて」
左上のモニターが自動的に再起動に移行する。
それと同時に右下に位置する監獄モニターに、激しく交差する光が飛んでいく。
背もたれに凭れ掛かると、ギイィと情けない音を出す長椅子。
この椅子は本来、前総統が使っていたものだ。
彼の優しい匂いに包まれながら仕事のできるこの空間を意外と気に入っているのだ。
絶対彼に言うことはないけど。
右下のモニターに黒い煙が映る。
それとほぼ同時に、椅子が置かれた地面に揺れを感じた。
「やってんねェ…w」
さて、「新しい」総統でも見ていますかぁ。
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コメント
1件
凄く面白いお話ですね!✨ 続き待ってます!