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ルナが心のモヤモヤの原因に気づいてから早3日、オルタナが用意してくれたお休み期間も終わって再びいつもの冒険者としての日常が戻ってきた。


しかしルナは未だに自分がどうするべきなのかに対しての答えが出ておらず悩み続けており、パーティのことに関してもまだギルドへと正式な返答は出来ていなかった。


パーティ勧誘への正式な返答期限までまだ少しだけ猶予があるのでまだ答えが出なくても大丈夫ではあるが、彼女としては出来るだけ早めに答えは出しておきたい。



「今日はこの依頼でいいか?」


「あっ、はい!大丈夫です」



考え事を一時中断させてオルタナが見繕って来た依頼に目を通す。もちろん異論などあるはずもなく二つ返事で了承した。





そうしてオリブの街を出発して昼頃に依頼の魔物が生息する地域に到着し、小一時間ほどで討伐対象の討伐に成功した。


予定よりも少し早めに終わったためにオルタナの研究で使えそうな素材を集めることになり、あっという間に時間が過ぎていった。




二人が街に帰ってきたのはもうすぐ日が暮れそうな頃合いでオリブの街は家路を急ぐ人たちや商人たちの店仕舞い、あるいは夜から営業を始める店などで賑わっていた。


オルタナとルナはすぐにギルドへ向かい、達成した依頼の報告を済ませた。何の問題もなく無事に依頼を達成し、報酬を二人で分け合ってギルドを後にする。



二人でギルドを出て少し歩いたところで突然オルタナがルナに声をかける。少し考え事をしていたルナは少し反応が遅れたがすぐにオルタナの方へと視線を向けた。



「ルナ、パーティ選びのことで悩んでいるのか?」


「えっ…わ、分かりますか?」


「ああ、何となくだがな」



ルナ的にはいつも通りを心がけて周りに悟られないように気を付けていたのだが、どうやらオルタナには悩んでいることがバレていたようだ。


実際のところ、周りから見て彼女の様子は特段変わったところはなく多くの人が平常通りだと思っていた。しかしオルタナはルナのほんの少しの雰囲気の違いなどから感覚で彼女の異変に気付いていた。



「やっぱりオルタナさんは流石ですね」


「いや、しばらく一緒に居るから何となく分かるようになっただけだ。それよりも悩みがあるなら話ぐらいは聞こうか?結論はルナ自身が出さなければいけない問題だが、相談ぐらいなら俺にも手伝えるからな」


「…」


「…まあ無理に言う必要もない。もし相談したいと思ったらいつでも頼ってくれていい。遠慮する必要はないということだけ言っておこうと思ってな」



やはりオルタナさんは優しいな…とルナは心が温かくなっていった。


そんな彼の優しさが詰まった言葉を受け取ったルナはやはり少しだけでもオルタナに頼りたいという気持ちが強くなっていった。


そしてそのままどっちつかずでどうすればいいか悩んでいた心の天秤が傾き始め、彼女は意を決して行動へと移すことにした。



「お、オルタナさん。少しお話しよろしいですか?」


「ああ、もちろん」



オルタナはルナのお願いに当たり前だと言わんばかりの表情で答える。その様子に少し安心感を得たルナは少しだけ笑顔がこぼれる。


そうして二人は騒がしい街道から少し離れた街が一望できる高台へとやってきた。ここであればこの時間帯は人が少なく、落ち着いて話が出来る。



「…」


「…」



二人ともベンチに腰掛けるがそのまましばらくの間、無言に時間が流れる。オルタナはルナが話し出すまで急かさずに様子を見ているようだが、一方のルナは頼りたいと思ったはいいもののどのように相談すればいいのか分からずに話し出せずにいた。



「あ、あの…その、ですね…」


「ああ」


「私、悩んでいるんです。どうすればいいのか分からなくて…」



どう言えばいいのか分からなかったルナは結果的に物凄くあやふやな相談の仕方になってしまった。


ルナ自身も自分が口にした言葉が明らかに適切な言い方ではなかったとすぐに後悔したが、言ってしまった言葉は無かったことには出来ない。



「…そうか。俺はルナが何に悩んでどんなふうに思っているのかは分からないが、今の俺がアドバイスするのであれば…『どの選択が楽しそうか』は重要だと思う」


「『楽しそうか』…ですか?」


「ああ、それくらいの気軽さでいいということだ。いろんなことを考えて悩んだ挙句、動けなくなるぐらいなら『面白そう』『楽しそう』で選んだ方が意外と上手く」


「で、でもちゃんと考えないと他の方に迷惑が…」


「法や道徳に反していなければ、迷惑をかけてしまうと思っても前に進んだ方がいい。もしそれで迷惑をかけてしまったら謝って、かけた迷惑以上のお返しを相手にしようと努力すればいい。ただそれだけの話だ。それに…」


「それに…?」


「その相手がもし俺ならば迷惑かどうかなんて全く気にする必要はない。この前の禁魔獣以上の厄介な案件じゃなければなんとも思わないからな。いや…あと貴族関係も極力なしで頼む」



オルタナの最後の本当に嫌そうな一言が面白くてルナは少し笑みが溢れる。


そして何かが吹っ切れたような顔つきになったルナは改めてオルタナの目を見る。



「…オルタナさん、お願いがあります」


「何だ?」


「わ、私を正式にオルタナさんのパーティメンバーとして受け入れてもらえませんか…?」



ルナはほんの少しだけ声を震わせながら想いを伝える。


思い切って想いを伝えたはいいものの、やはりルナはどんな答えが返ってくるのか不安で仕方がないようだ。



「…戦姫の剣舞はダメだったのか?」


「いえ、リサさんたちは本当に素敵なパーティだと思います。ぜひ戦姫の剣舞に入りたい…そう思います」


「ならどうして…」


「私も最初は戦姫の剣舞に決めようと思っていたんです。でもいざ決断しようと考えた時、ふとオルタナさんと一緒にパーティを組んで活動した日々のことが頭に浮かんで何故だか分からなかったのですがモヤモヤした気持ちになってしまうんです」



ルナは静かに話を聞いているオルタナに対して必死に自分の想いを伝えようと少し前のめりになる。



「最初は何でか分からなかったのですが、ようやく分かりました。私、オルタナさんと一緒にパーティを組んでいた日々がとてもとても楽しくてそれが終わってしまうことが嫌だったんです。迷惑かけてばかりで何かオルタナさんにお返しが出来るのかまだ分からないですが、もし良ければ私を…正式なパーティメンバーにしてください!」



ルナは自身の想いの丈を全て伝え切ってオルタナに頭を下げた。


オルタナがどんな反応をしているのか、彼が何て言うのか不安で仕方がない彼女はぎゅっと瞼を強く閉じていた。



「…ルナ、君のことを思えば俺よりも戦姫の剣舞と一緒にいた方がいいと思っている」


「…」


「だが、君が俺とパーティを組みたいとそう言ってくれるのであれば俺がそれを断る理由はない。ルナが良ければ正式にパーティを組もう」


「お、オルタナさん…!」



ルナは顔を上げ、目に若干の涙を浮かべながらとても嬉しそうな表情でオルタナを見つめる。



「ほ、本当に私がパーティメンバーで大丈夫ですか?」


「ああ、もちろんだ。確かに最初は申し訳なさがあってルナと臨時パーティを組むことになったが、今の君は共に戦うメンバーとして信頼に値する実力と人柄を兼ね備えていると思っている。それにルナはさらに強くなれる可能性を秘めていると思っている。だから何も後ろめたく思う必要はない」


「お、オルタナさん…!そんな風に言っていただけるなんて…う、嬉しいです!!!」



ルナは今まで感じていた不安感が一気に安堵へと変わり、その反動なのか自然と目から大粒の涙を流していた。


そして涙を拭って晴れ渡った気分のルナとオルタナの二人は固い握手を交わした。


そうして彼らは正式なパーティとして改めて活動開いていくこととなった。






=====================






そして後日、ルナとオルタナは直接リサたちの元へと出向いて包み隠さず事情を説明した。


本来なら戦姫の剣舞に加入するつもりだったということを直接伝えていた訳ではないが、彼女たちと一緒に冒険した際の会話の中で一番印象が良かったなどという少し匂わせ的なことを言ってしまっていたのだ。


そのため一応謝っておきたいというルナ自身の気持ちからそのような機会をミーシャに設けてもらえることとなった。



「ルナさんの事情は把握しました。残念ですがルナさんが決めたことなら仕方ありませんね」


「リサさん、あんなに良くしていただいたのに本当にすみません」


「いえいえ、気にしないでください。それにこれで完全に縁が切れるという訳でもないのですから、これからも良かったら仲良くしてください」


「は、はい!もちろんです!!こちらの方こそよろしくお願いします!!!」



ルナとリサは互いに笑顔で握手を交わす。その様子を嬉しそうに見ている戦姫の剣舞のメンバーたち。



「また機会があったら一緒に冒険しましょうね!」


「ルナならいつでも大歓迎だぜ!」


「はい…!ぜひまた…!」


「ライザさん、ロアさん、レミアさん…!ありがとうございます!!」」



温かな彼女たちに囲まれて幸せそうなルナ。その様子を見ていたオルタナは彼女たちと一緒にいた方がルナは幸せになれるんじゃないかとふと思ってしまう。


そんな時、戦姫の剣舞のリーダーであるリサがオルタナに話しかけてきた。



「オルタナさん、私がこのようなことを言うのは変かもしれませんがどうかルナさんのことをよろしくお願いします」


「…ああ、もちろんだ」



リサの言葉を聞いたオルタナは先ほどの考えを撤回した。彼女たちの方が…ではなく彼女たちよりもルナを幸せに出来る努力をするべきだと、それが選んでくれたルナに対する自身のすべきことなのだと感じた。


ルナがオルタナと冒険をしたいと思ってくれたように、オルタナもいつの間にかルナと一緒にいることが当たり前に感じていた。


だからこそ今回のルナの選択はオルタナにとっても嬉しいものであり、それに対する最大限の礼を尽くさないとと思っていた。



「それと、も、もし良ければオルタナさんも…仲良くさせてもらえたら嬉しいなぁ…何て…」


「もちろんだ。こちらこそ同じ冒険者として今後ともよろしく頼む」



オルタナのファンであるリサは彼のその言葉に興奮を隠し切れずに顔を真っ赤にさせて、テンションが鰻登りになっていた。


そんなリーダーを必死に宥めながら戦姫の剣舞たちはすぐに部屋から退出していった。



そんな彼女たちを見送ってからオルタナたちも部屋を後にする。


そうして新たにルナとオルタナの新生パーティの活動が正式に幕を上げたのであった。

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