僥倖
(キルゴン短編①)
キメラアント編~ 原作、アニメ一通り一読視聴済ではありますが、殴り書き&うろ覚えすぎて解釈の不一致等ありましたら申し訳ないです。
「なぁ、ゴン」
休日の昼時ながらも、人の出入りが少ない駅前のファーストフード店。 キルアに声をかけられたゴンは、今まさにかぶりつこうとしていたハンバーガーを口周りから離してトレーの上にそっと置く。
「あのさ。」
「うん?」
「俺、ゴンの隣にいたい……んだけど……。
お前は……どう思ってる。 」
突然告げられたゴンに対するキルアの思い。それは何処と無く無邪気な質問にも見えるが、キルアからしてみればとてつもなく重たい質問であった。
キメラアント討伐戦、 死を覚悟にして結ばれた制約と誓約。 一時は強靭なる力を手にし、恩師カイトへの復讐の意を込めて王直属護衛軍であるネフェルピトーを倒したゴンだが、その代償は大きく。 失った右腕、少年の面影など何処にも無いボロボロの体、顔も見えないぐるぐる巻きの包帯、呼吸器は正常に機能しているがいつ命が絶たれるかは分からない。 そのような状況下の中、重傷を負ったゴンをナニカに治して貰った後、ゴンとキルアはお互いの目的を胸に長い旅にコンマを打った。 今回は、互いの都合を合わせキルアの妹アルカには留守番を頼んだ上で、久し振りに2人の時間を過ごすことにした。
────
──やはり、言わなければよかっただろうか。 隣に居たい、だなんて。
今も脳裏に張り付いている一言が未だ、キルアの心を締め付ける。 麻縄で心臓を縛られる感覚だ、ぎゅうぎゅうと圧迫されている気がしてならない。
『 キルアはいいよね、 冷静でいられて 』
『 ──関係 ないから。 』
嗚呼、 今もだ。 時折思い出すと目頭がじわじわと熱くなって泣きたくなる。 取り消そう、さっきの言葉は。 無かったことにしてもらえば、ゴンも気にせず過ごすことが出来るだろう。
ぎゅっ、と自身の履いている紺色のハーフパンツを握りしめると顔をあげる。
「あ〜… やっぱなんでも…」
「オレもね…。 キルアと離れて寂しかったんだ。 あんなこと言っちゃったのはすごく後悔してる、今でも思い出したら罪悪感とか色んな感情のせいで泣いちゃって。 その度にミトさんに笑われちゃうんだけど……。
でも、やっぱり2人で居た時間が長かったからこそ少しでも離れちゃうと心にぽっかり穴が空いたみたいになっちゃうんだ。
…… どうしよっか。 キルアにはアルカちゃん居るし。 2人の邪魔はしないから、それでもいいならオレもキルアの隣に居たいな…っ」
『 なんでもない 』 そう言いかけた時、食い気味にゴンも自身の思いを語ってくれた。それがなんだか嬉しくて、先程の縛られている感覚が一気に開放されたような気がした。ゴンも、少しはキルアと同じ心境だったのだろう。
ちょっと恥ずかしいね。 なんて頬を赤らめながらはにかむゴンは、優しい目をしていて大人に見えた。けれど12歳という年相応の明るく、可愛らしい笑顔でもあった。
「そっ……か……」
まさかの返答に上手く言葉を繋ぐことが出来ないキルアはただひたすらにゴンの顔を見るだけだった。ゴンの瞳は曇りなく、透き通った飴色に輝いている。 その瞳に何度救われたのかは分からないが、これからも彼と同じ道を歩んでいけるのかと思い、口角を上げれば口を開いて一つ深呼吸をしたら、一言を発する。
「もう一度言うけど…… オレもお前と居たいよ、ずっと。」
「うん、オレも。 2人でさ… いや、 3人でさまた長い旅を続けようよ。 」
─── 向かい風と知っていても、それでも。 それでも進む理由がある。
こうしてまた、 長旅の物語はコンマの先へ先へと続いていくのであった。
~ 終 ~
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