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「おいどこまで行くんだよ!💢」
その声で自分が思っているより遠くまで歩いてきたことに気づく。
「あ、すみません…それで……さっきなんて言ってたんですか?」
そう聞くと彼は心底嫌な顔で長いため息を吐きながら
「……ありがとなっつったんだよ」
そこで彼がここまで何が言いたいのかが聞き取れた。
「あー、まぁ、仕事ですから」
「あれもだよ」
あれ?そう言われても私には全く検討がつかない。
私が本当に分からない様子を見て彼がしびれをきらして
「ちょい前、〇〇町で爆破事件があっただろ?」
爆破…あ!
「もしかして……あの時の…」
「はぁぁぁ…」
彼はやっと思い出したとばかりにため息をついた。
あの時は助けられるのなら助けたいと思ったのだ。
だから顔までは見ていなかったと彼に伝えた。
……真実も混ざっているが、ほとんど嘘だ。
忘れてはいたが、彼がプロヒーローなのは分かっていた。
苦し紛れすぎたのか、彼の眉間はどんどん深くなる。
「……仕方ねぇからてめぇの言ったこと信じといてやるよ…💢」
というような感じで、納得はされていないらしい。
正直、ヒーローと関係を持ちたくない。
周りからなんて言われるか分かったこっちゃない。
「用事はそれだけでしょうか?」
私は一刻も早くこの場から去るために言葉を紡ぐ。
「それなら私もう行きますね。これからもヒーロー頑張ってください」
早口になりながらも身体を動かすと
「待てや💢」
彼に肩を掴まれた。
一瞬振りほどこうとも考えたが、力差がその選択肢を消した。
「てめぇは話をちゃんと聞くことも出来ねぇのか?あぁ?💢」
なんでこの人はこんなに怒っているのだろうか…。
「…じゃあ、なんなんですか?」
そう言うと、彼は手を私の肩からおろし、
「……てめぇを、うちの事務所の専属エンジニアにする。」
その言葉を聞いたとき、周りの空気が無くなった気がした。
事務所専属のエンジニア?しかもヒーローチャート上位の?
とてもじゃないが信じられない。
「おい、聞いてんのか?」
彼の声で現実に戻された。
「あ、すみません!……えっと、なんで私が?」
疑問を投げかけると彼はつらつらと話し始めた。
「元々、メカに詳しいやつが居てもいいなっつって話してたんだよ。サイバー犯罪も増えて来たからな。そんでお前が最適じゃねぇかってこった。」
話を聞く限り、私がというよりはたまたまタイミングが良かっただけらしい。
「言っとくが拒否権なんてねぇからなぁ?断ったら……分かってんだろうな?」
う、脅されてる…。
だが、正直悪い話ではない。
事務所専属ということだから、フリーランスでやるよりかは給料はあるだろう。
それに、この仕事を途中でやめた場合もキャリアにはなる。
そう考えると、断る理由は中々見つからなかった。
強いて言うならこの人とちゃんとやっていけるかということぐらい。
その時、私はふと自分の家を思い出した。
1人の部屋。隣から聞こえる家族団欒。誰も居ないリビング。美味しいはずのご飯。
それを思い出し何かを思った訳ではない。
だが、次には言葉が出ていた。
「分かりました。この仕事受けさせてもらいます。」
そう返事をすると彼は不敵に笑うのだった。