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――ふたりぼっちクリスマス( 1話完結 )――


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クリスマスの数日前に行われた世界会議の事。会議が終わるや否や、参加国の大半が身近に迫るクリスマスの予定合わせに慌てていた。 何処で開催するか、何時から何時までか、誰が参加するか、そんなたわいもない予定合わせだ。

まぁ俺には縁のない話だ。国体の中でも嫌われ者の自分に、そんなクリスマスパーティーの誘いなんて来るはずもない。他の皆が和気あいあいと話している様子を横目で見ているだけだ。現に今も、そんな皆の様子を隠れるように眺めている。ただ別に隠れている訳では無い。資料をまとめながらチラリと見ているだけだ。

そうやってコソコソ眺めていたら、フランスと目が合った


「一人寂しそうに資料とにらめっこしてる坊ちゃ〜ん、お前はクリスマス相手してくれる人いるの〜?」


案の定揶揄う様に俺の肩に肘を乗せてきた。重い。


「俺はお前ら暇人とは違って忙しいんだよ、ほっとけ」


これは唯の強がりだ。上司や部下は俺を気遣って有給をくれている。その気遣いも虚しく俺はひとりぼっちのクリスマスを迎えるだろう。

俺は自分から参加すると言えるほど強くもないしその資格もない。言ったところで嫌な顔をされるだけだ。別にひとりぼっちでそういう祝い事を迎える事なんて珍しくもない。

俺は自分が惨めに思えて、逃げる様に会議室を後にした。

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そして迎えたクリスマス当日。普段雨ばかりのロンドンも、クリスマスの人なれば雨ではなく雪が降り積もっている。

今頃皆はクリスマスパーティーを満喫している真っ最中だろうか。対して俺はストーブで温まりながら読書なんて、我ながら寂しいクリスマスな事だ。例年通りの事だこら構うことではあるまいが。

きっと、明日になればフランスやスペイン辺りが煽り散らかしに来るだろう。「寂しいクリスマスはどうだった?」とか笑いながら。考えただけでも殴りたくなる位腹が立つ。

寂しい訳じゃない。唯つまらないだけだ。

重苦しい溜息を一つ吐いたとほぼ同時に、インターホンが鳴った。


(こんな時間に誰だ…?)


俺は誰とも予定を組んでいないし、合わせてもない。増してや誰かとクリスマス関連の会話をした記憶も全くと言っていいほどない。荷物を頼んだ覚えもない。

ならば一体誰だ、なんて疑問を抱きながら扉を開けた。


「……カナダ…?」


なんで…と思わずぽつりと呟いてしまった。

そこには何時もの様にほんわかと笑いながら立つカナダと、カナダに抱えられたクマ二郎が居た。


「アポも取らず来てしまってすみません…今、お時間大丈夫ですか?」

「あ、ああ…でも、お前なんで…他の奴に誘われてたろ…?」


俺と違って裏表もなく、人によって態度を変えることもないカナダは周りからもよく可愛がられている。あの日も、フランス辺りに声をかけられているカナダを俺は見た。

なのに、どうして俺の家の玄関前に嬉しそうに立っているのか分からなかった。


「断ったんです」

「え?」


驚きのあまり唖然としていれば、更に脳を混乱させる事を言われた。

断った?何故?折角の誘いを断って俺の家に来るなんて、もしかしたら頭でもぶつけたのではなかろうか。

でも、目の前にいるカナダは本当に嬉しそうに優しく笑っている。優しく、そして柔らかく。


「僕は他のどんな人とよりも、イギリスさんと一緒にクリスマスを過ごしたかったんです。大好きな人と一緒にクリスマスを過ごしたいって思うのは、不思議な事ですか?」


そう言いながら、カナダは冷えた手で俺の頬を撫でた。

寒さで冷えている手は、何故か酷く暖かく感じた。


「…外、寒いだろ。入れよ」


とっておきの紅茶を淹れてやるから―――

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イギはクリスマス一人で過ごす事が多そうだなーというのが始まりのストーリーでございます。でも例え誰かに誘われても、「自分が行ったら迷惑だよな、邪魔だよな」という自己肯定感の低さが勝って断ってそう。

でも結局はお兄さんや超大国が無理くり参加させてそうです。

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