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俺の弟は地味だ。
正直言ってほとんど目立たない。俺は光を浴びてのびのびと育った。その時には、カナダは俺の影になってしまっていた。
俺だって、本当はもっとカナダと対等な関係で居たいし、カナダと横を歩いて居たかった。
初めの憧れの視線も、いつしか妬みに溢れていた。
カナダは言う
「兄さんはいつも人に囲まれてて羨ましいな。」
「そうか?俺はカナダの穏やかなところが好きだな。ずっと仲良くいような。」
別に主役は1人じゃなくてもいいと思うんだ。
――――――――――――――
「カナダ、アメリカ、今日は大事な客が来るんだ。失態を犯さないように。」
「わかった。父さん。」
声が響くうちの大広間。天井に吊ってあるシャンデリアはその場の雰囲気を裂くように光っている。
カナダはいつも通り憂鬱そう…
「ようこそ日本。」
「イギリスさん。今日は招いて下さりありがとうございます。」
「「…」」
「久しぶりですね。アメリカさん、カナダさん。」
「お久しぶりです。日本さん。」
「久しぶりだな!日本!」
堅苦しいのは嫌いだ。
俺は目の前の小さい国に、明るく声をかけた。
「ふふっ。相変わらず元気ですね。」
「お前は相変わらずちっこいな。弱っちいからかw」
「ちょっ!」
カナダが焦り気味に言った。どうしたんだ?
シーン…
…あー、やっちまった
「驚かれましたよね、日本さん。すみません、兄のジョークは唐突なんです。」
「…あっはは。気にしないでください。」
何とかなったみたいだな…
「…すまんカナダ。助かった。」
「…うん。」
さすが俺の弟だ。すかさず助けてくれるなんて…。
次からは流石に俺も気をつけないと、兄の顔が無いからな。
――――――――――――――――
む…これは…?
よく分からんな…誰かいないか…
(辺りを見回す)
!
「あ、いい所に。ロシア!」
「なんだ、アメリカ。」
「これ、どうすればいいんだ?こうじゃないし、こうでもないだろ。」
「ん…あぁ、これはこうすんだよ。」
「なるほど!Thankyou!」
「はいはい。」
ふぅ、ロシアがいてくれて助かった…
やっぱこういうのは大国に聞くのが1番だな。
「っ…」
「って、カナダ。そんなところで突っ立って何してんだ?」
「あ、え、はっ?あ、あぁだっ大丈夫。うん、なんでもない。」
「そ、そうか…?まあ、ゆっくり休め。」
カナダのやつ、最近様子おかしいよな…。俺が誰かと話してるとぼーっとし始めるし。
疲れてんのか?
―――――――――――――――――
…最近の仕事難しくないか?誰かに聞くか…
でも、この書類は他国に見せられんし…親父にするか。
「なあ、親父ぃ。こr」
「アメリカ、私はこれからお前と距離を取ろうと思う。」
「え」
いきなり何を…
「お前のこれまでの失態。そして、私に隠していた各国とのいざこざ。」
「や、ちょっ」
「反省するまで、距離を置かせてもらいます。」
バタンッ(部屋を出る)
違う違う違う。俺はそんなことやってない!
なんでそうなる!?違うッ!違うんだって!
そうだ他のやつは…親父が勘違いしてるだけかもしれないし…
「すみませんアメリカさん。少しそっとしておいて下さい。」
「アメリカ、お前には失望した。話しかけないでくれるか?」
「アメリカ、近づかないでくれアル。」
「イオ、ちょっとアメリカが苦手になっちゃったんね。」
「おい、みんな…どうしたんだよ?」
はぁッ!おかしい。みんなおかしいッ!
みんなして俺に濡れ衣着せてきてッ…ウッ…
「兄さん。」
「あっ、カナダ…お、お前もっ…俺が…きらっ、嫌いになったのか…?」
カナダまで俺に失望したら…俺っ…
「ふふっ、兄さん。大丈夫だよ。僕は兄さんを嫌いになったりしないよ。」
「うぅっ、ふ、あぅ」
涙出てきた…良かった…味方がいて良かった…
暖かいな…
「兄さん。僕は兄さんの味方だよ。安心して、僕だけ頼ってればいいんだよ。」
「っ…うん。うん。」
――――――――――――――――――
「カナダ、これ…どうすればいいんだ?」
「あぁ、これはこうするのが1番いいかな。」
「わかった。ありがとう。」
俺は自分でもわかるくらい、大人しくなった。
正直、驚いてる。
あ、フランスだ。
「あ、フランス。こんな俺なのに仲良くしてくれてありがとうな。」
「大丈夫だよ、アメリカ。ジュは君の味方だよ。」
「ありがとな、これからもよろしく。」
「あぁ、またね。」
フランスはカナダの他で唯一俺の事を信じてくれた。これには本当に感謝しかない。
…カナダ?そんな顔で近づいてきて何があったんだ?
「ねぇ兄さん。何で僕だけを頼ってくれないの?」
「え…だってそれは兄弟だし当たり前じゃ…」
「兄さんは僕が居なきゃ何も出来ないんだよ!僕だけを頼ってればいいんだよ!」
こいつは…何を言ってんだよ…
どうしちまったんだよ…意味わかんねぇよ…
「それは!お前の面倒見がいいだけだろ!どうしち
まったんだよ!」
「兄さん!」
「何だよ!俺が悪いって言いたいのか!?確かにお前を頼ってた…けど……俺が、悪い…?違う…違うはず…」
俺の肩を持つカナダの手は心做しか震えている。こんなに必死なカナダは久しぶりに見た。
「兄さん、違う。違うんだよ…。兄弟ってよりかはもっと…」
カナダは下を向いた。少しイラついてるように見える。
「…くそっ!」
カナダは床に本を投げつけた。
こんな事をしているカナダは見たことがない。
「お前、ちょっと頭冷やしてこい。」
俺はそのまま部屋を出た。
ドアを閉じた時、目から涙が溢れた。俺の弟は…あいつは…本当に、カナダなのか…?
俺が…悪いのか…?いや、そんなはずは…
「ちくしょう…」
しかし俺はその時、微かだが、確かにカナダからの気持ちに喜びを覚えた。
――――――――――――数週間後…
あれからまともにカナダと話していない。自分で突き放した手前、話しかけるのも…
俺はあの日から、自分の心にぽっかりと穴が空いたような物足りなさを感じている。
もどかしい…
俺はやっぱり、カナダの言ったように、あいつが居ないとダメなのかもしれない…うん…そうだな。
「…っなあ、カナダ。」
「に、兄さん?どうしたの…?」
あぁ久しぶりだ、この心地よい声。
「やっぱり、お前が居ないと…ダメみたいだ。」
「兄さん…!僕も、兄さんと話せなくて辛かった。」
「…!嬉しい。」
カナダも…俺と同じ気持ちだったのか…
俺のあの時の微かな喜びは、今や俺の心を支配している。
「2人だけの世界を作ろう兄さん。面倒なものは全部捨てて。」
「あぁ。」
「僕以外を頼っちゃダメだよ?」
「もちろん。」
――――――――――――――――――――――
あぁ、幸せだ…
俺らしか居ない、素敵で暗い世界。
もう離れたくない。カナダは、俺だけのものだ。
俺も、カナダだけのもの。
――――――――その後…
「なあ、カナダ。最近他のやつのこと考えなくなったよ。」
「…それでいいよ。兄さんには僕だけいれば十分だから。」
「そっか。」
俺の弟はやっぱり少し地味だ。
でも、俺にはこいつしか居ない。かっこいいところも、可愛いところも、俺だけが知っていればいい。
いつまでもお前だけ見てるよ。
「壊れるほど近くにいような。」
――――――――――――――THE END