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──部屋への中へ入ると、開け放たれた扉の向こうに、寝室のベッドが垣間見えた。
そこで真梨奈と……と、想像が浮かんで、喉元を苦い思いが込み上げた。
「……何を、考えていられるのです?」
ベッドから目を離すことも出来ずに突っ立ったままでいる私に、彼が尋ねてくる。
「ああ…昨夜のことを、考えているんですね……」
私の視線の先を辿り、心の奥を見透かしたように、彼が低く呟く。
「……そこで、どんなことをしたのか、教えてほしいですか?」
言葉にもしたくない胸の内を、深くえぐるようにも問われて、
「教えてほしくなんか……!」
と、思わず声を荒げた。
「何を、そんなにむきになっているのです?」
わかっているのに違いないのに、あくまでもわざとらしく尋ねてくる。
「……もう、終わりにしてください、こんなことは……」
真梨奈を抱いたのだろうベッドで、自分が抱かれることなんか考えたくもなかった。
「……終わらせる? あなたはそれで……」
「終わらせてくださいっ!」
語尾を聞かずに、叫んだ。
「仕方ないですね……何を、そんなに苛立っているのですか?」
低く艶めいた響きを持つその声に、両耳を塞ぎ、
「嫌です…もう……」
見つめる視線から逃れるように顔を下に向けると、ずっとこらえ続けていた涙がつとこぼれ出た。