テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
入学式のあと、僕たちは一年一組の教室に集められた。
担任の先生が言う。
「今日から一年間、この班で行動します。前から順に出席番号で並んでください」
黒板には五つの班の名前が貼られていた。
1班 窓側
2班 その横
3班 真ん中
4班 廊下側
5班 特別班(委員中心)
僕の番号は一番端――**1班(窓側)**だった。
席に向かうと、そこにはすでに狐さんが座っていた。
ゆっくり顔を上げ、軽く手を挙げてくれる。
狐「阿形くんも、1班なんですね!よろしくお願いします。」
阿形「よ、よろしく…!」
静かで落ち着いた声。
慣れてない僕でも話しかけやすくしてくれる、その距離感が優しい。
次に狐さんの隣に座ったのは、おかめ。
おかめ「また同じ班なんだ。なんか安心したな」
阿形「うん、僕も」
その笑顔に、自然と肩の力が抜けた。
だが次の瞬間、机が勢いよく動いてきた。
横の席に腰を下ろしたのは――般若。
般若「おい阿形、また同じ班だぞ。面白くなりそうだな」
阿形「え、う、うん…そうだね」
般若は軽く笑ったけれど、目線は僕じゃなかった。
狐さんを真っ直ぐ見ていた。
般若「狐も同じ班か。へぇ、これは楽しくなりそうだ」
狐さん「そうですね、みんなで協力できたらいいなと思います!」
二人の言い方は穏やかだ。
だけど会話の中に、見えない力が交錯していた。
班の後ろには隈取がゆっくり座った。
静かに机の位置を整えながら言う。
隈取「なんか…この班、濃くないか?目立つメンバー揃ってるよな」
阿形「そ、そうかな?」
隈取「いや、悪い意味じゃなくて。刺激が多そうって意味だぜ、」
それを聞いたおかめが笑った。
おかめ「刺激って、どこの誰が起こすの?笑」
般若「決まってんだろ。阿形だと思うぜ」
と、般若は僕の背中を軽く叩く。
阿形「え、僕!? な、なにもしないよ!」
般若「いや、阿形は色々巻き込まれるタイプだって意味」
狐「うん、そんな感じはしますね、。いい意味でですがね、笑」
三人に同時に言われて、何も言えなくなる。
だけど、不思議と嫌じゃない。
班の空気は明るくて、ぎこちなくて、だけど居心地がいい。
たった一日で、僕はこの班が好きになり始めていた。
しかし――
この“同じ班”が、僕たちの関係を大きく変えていくことになるなんて、
その時はまだ、誰も知らなかった。
チャイムが鳴る。休み時間。
般若が立ち上がりながら言った。
般若「狐、あとで中庭来いよ。話がある」
狐「えぇ、承知しました」
ふたりは歩き出す。
背中を追うように僕も立ち上がろうとすると、
隈取が袖を軽くつかんだ。
隈取「行かなくていい。今のはふたりで話したい話題」
阿形「……喧嘩とかじゃないよね?」
隈取「違う。たぶん…火花みたいなやつ」
言葉の意味が分からなくて黙っていると、
おかめがそっと口を開いた。
おかめ「阿形はね、注意して見てないと、本当に気づけないよ」
阿形「え……何を?」
おかめ「争われてるってこと」
その意味は頭にすぐ入ってこなかった。
でも、おかめは淡々と続ける。
おかめ「ふたりとも同じ人が好きになる気がする。まだ気づいてないだけで」
僕は言葉を失った。
狐さんのことだ、と理解するのに数秒もかからなかった。
胸の奥が、熱いのか痛いのか分からない感覚でいっぱいになった。
――これは、ただの班替えなんかじゃなかったんだ。
青春も、友情も、恋も。
全部、この日から静かに動き始めていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!