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バイトが終わって更衣室で制服に着替えていたら、ちょうど同じタイミングで奏斗も出てきた。
「美桜ちゃん、今日もお疲れ」
「奏斗も、お疲れ様」
まだ”彼氏”っていうのが照れくさくて、普通に返事をしてしまう。
というか、付き合い始めてからまだそんなに経ってないけど、これってどういう感じになるのが正解なんだろう?
奏斗とはバイト仲間として普通に話してたし、”彼氏”になったからって急に何か変わるものなのかな?
「美桜ちゃん、今日この後時間ある?」
「え?」
「ちょっと駅前まで一緒に歩かない?」
「あ、うん、いいよ」
自然な流れで、奏斗と二人でバイト先を出る。
***
「今日、仕事大変だった?」
「んー、まぁまぁ。でも、夕方のお客さん多くてちょっとバタバタしたかな」
「だよな。俺も途中、ドリンクオーダーめっちゃ溜まって焦った」
「私もホール回しながら飲み物運んでたよ」
「だよなー、美桜ちゃん、めっちゃ動き早かったもん」
何気ない会話。でも、今までもこうやって話してたはずなのに、奏斗が”彼氏”になったことで、どこか意識してしまう。
隣を歩く奏斗が、私の方をちらっと見た。
「美桜ちゃんってさ、こうやって帰り道一緒に歩くの、緊張する?」
「えっ!?そ、そんなことない……と思う、けど?」
バレてるの!?
「いや、なんかちょっとぎこちないなーって思って」
「……だって、付き合い始めたばっかりだし」
「そっか。まぁ、俺も実はちょっと緊張してるんだけどね」
奏斗が笑う。
え、奏斗も緊張することあるんだ。
「でもさ、美桜ちゃん、”付き合う”ってどういうことだと思う?」
「え?」
「俺、今までバイト仲間として美桜ちゃんと仲良くしてたけど、”彼氏”ってなると、どうすればいいのかなーって思って」
それ、私も考えてたことだ。
「私も……まだ、よく分からない」
「そっか。でも、それなら一緒に考えていけばいいよな?」
「……うん」
奏斗の言葉に、ちょっとホッとする。
「じゃあ、まずは”彼氏っぽいこと”してみる?」
「……え?」
そう言った瞬間、奏斗が私の手をふわっと握った。
「……!」
「ほら、手つなぐとか、カップルっぽくない?」
突然すぎて、顔が熱くなる。
「いや、急に何!?」
「試しにやってみただけ」
奏斗は楽しそうに笑ってるけど、私は心臓がバクバクしてる。
(付き合うって、こういうこと……?)
ちょっと戸惑いながら、でも私はその手を振りほどかなかった。