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陰鬱な顔つきで溜息を吐きつつ重い足取りで学院長室へと進むレイブ。
学院の通路は時に巨大な竜種や魔獣が立ち入る事も考えられている為、無駄に広く作られていて、ニンゲンが一人で歩くだけでも孤独感が募る事この上ない。
今から説教、若(も)しくは折檻(せっかん)だろう、そう予想しているレイブにはいつも以上に不愉快な道行きに感じられていた。
心の声が思わず口をついて出る。
「畜生、行きたくねえ…… バックレるか…… そうだな、一旦小屋に帰って眠っちまえば良いんじゃないか? そうだよ、そうしよう、寝て起きたら全て解決してるかも知れないしな、帰ろ」(ボソッ)
バーンッ!
小さな声で呟いて踵(きびす)を返した背中に響いた大きな衝撃音。
恐る恐る振り向いたレイブの目の前には赤い肌をした筋骨隆々で年齢不詳の女性、ズィナミ・ヴァーズ学院長が、いつの間にか鼻息が掛かる位の場所でこちらを凝視して居たのであった。
ビクッ!
――――恐えー、真っ赤じゃねーか学院長! 身体強化十枚以上重ね掛けしてんだろコレ? どうしよう、見つかっちまったからには今更逃げる訳にも行かないしぃ…… ってやっぱ角二本しっかり生えてんじゃねーかよぉ! ランディの野郎、適当なこと言いやがってぇっ! あの野郎、今日は飯とか食わせてやらねーからなぁー!
「レイブ随分早いじゃ無いかっ! 良いね、やる気を感じるねえ~! アタシも楽しみでね、今日は早起きして体を解してたんだよ♪」
「は、はいっ! ランディは飯抜きですが、それで良かったですか?」
「は?」
「はい?」
会話自体は壊滅的に噛み合っては居なかったが、暫(しばら)く話し続けた事で何とか意思の疎通が出来た二人、中々我慢強い所もあるようだ、流石。
「じゃあ昨日選抜試験を受けた生徒たちの再試験を俺がやれば良い、そう仰るんで?」
そう訊ねたレイブに答えるズィナミはやや呆れ顔だ。
「だからそう言ってるじゃないか、昨日もあの子、ランディに説明したんだけどねぇ~、うっかり言い忘れたのかね?」
「やはり今日は飯抜きにしますね♪」
肩をすくめておどけた表情を見せたレイブに対してズィナミも笑顔で続ける。
「ははは、じゃあ模擬戦、再試験をして貰う事に異論は無いんだね」
「ええ勿論です、説教や折檻は死ぬほど嫌ですけど、そうでなければ喜んでやりますよ」
歯に衣着せぬレイブの返事を聞いたズィナミは、午後から再試験である事を告げるとご機嫌で自室に戻って行った。
中途半端に時間が出来てしまったレイブは考える。
――――皆はもう狩りに出かけた後だな…… さて、どうしたものか? そうだ、今日ラマスは復活できたのかな…… 様子を見に小屋まで行ってみるか…… 大丈夫だと思うんだけどぉ……
そう考えをまとめると、さっさと学院を出て小屋に向けて走り出すレイブであった。