〜凛side〜
確かにあの女だったのに
今更何を隠そうとしているのか
こっちは分かってんだよ
下駄箱を開け学校を出ようとした時、霧のように降りしきる雨に傘を持っていないことを自覚した
冷えた雨が自身の体温を奪っていくのを感じていると後ろから名前を呼ばれた
振り返ると一瞬瞳を揺らした例の女が自分の傘を傾けてきた
断ったはずだが聞こえなかったのか自分が濡れることを躊躇せずに傾け続ける
うぜぇ また歩みを進めると急に腕を引っ張られた
動揺を隠せずに固まっていると真剣な眼差しでタオルを寄越し、傘を持つように言うとそそくさと去っていった
その背中にドクリと心臓が跳ねたような気がした
俺にしては珍しく礼を言ったが、やっぱり聞こえなかったようで もう一度言うように言われ腹がたったが、仕方なく再度同じことを口にすると
一瞬驚いた顔をしてニコリと笑って来た道を戻っていった
変人か
濡れた髪をかきあげながらボソリと呟いたそれは雨の中に静かに溶け込んだ
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