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荒れ果てた大地に伸びる光の道を進む三人。 斎藤零士が描き出した古い魔法の印は、まるで彼らを導くように淡く輝き続けていた。
シオンは歩きながら、零士の背中をじっと見つめていた。 彼の態度は軽薄だが、魔法の扱いは明らかに素人ではない。 それが逆に、シオンの警戒心を強めていた。
アリエルが小声で囁く。
「ねぇシオン……あの人、本当に信用していいのかな。」
「分からない。でも、今は頼るしかない。」
そう答えながらも、シオンの胸には不安が残っていた。
しばらく進んだ頃、零士が突然立ち止まった。
「……来よったな。」
その声は、これまでで一番低く、鋭かった。
シオンとアリエルは反射的に身構える。
「来た?何が——」
アリエルが言い終える前に、周囲の空気が震えた。 地面の影が揺れ、黒い霧のようなものが立ち上がる。
「魔物……いや、違う。これは……」
シオンが目を細める。 霧の中から、ゆっくりと人影が現れた。
フードを深くかぶったその人物は、三人の前に立ちふさがるようにして姿を現した。
「前衛隊の……者か?」
シオンが問いかけると、フードの人物は静かに首を振った。
「違う。私は“門番”。前衛隊へ向かう者を試す者だ。」
その声は男とも女ともつかず、どこか機械的ですらあった。
零士が舌打ちする。
「めんどくさい奴が出てきよったな……」
門番はゆっくりと手を上げる。 すると、三人の足元に複雑な紋様が浮かび上がり、空気が一気に張り詰めた。
「前衛隊を探す者よ。まずは己の“真”を示せ。」
アリエルが息を呑む。
「試練……ってこと?」
門番は答えず、ただ静かに手をかざした。
次の瞬間、三人の視界が白く染まる。
シオンが目を開けると、そこは見覚えのある場所だった。
「ここは……俺の村……?」
だが、村は炎に包まれ、崩れ落ちていた。 幼い頃に失った故郷の光景が、まるで再現されたかのように広がっている。
「これは……幻覚か……?」
背後から、聞き覚えのある声がした。
「シオン……助けて……」
振り返ると、そこには幼い頃の妹が立っていた。 シオンの心臓が大きく跳ねる。
「まさか……」
同じ頃、アリエルもまた別の場所に立っていた。
そこは、彼女がかつて仕えていた神殿。 だが、神殿は崩壊し、仲間たちが倒れている。
「どうして……こんな……」
アリエルの手が震える。
そして零士もまた、別の空間に立っていた。
彼の前には、誰もいない荒野。 ただ一つ、地面に突き刺さった黒い刀だけが存在していた。
零士はその刀を見て、わずかに表情を歪める。
「……またこれかいな。」
彼の声には、いつもの軽さはなかった。
三人はそれぞれ、自分の“過去”と向き合わされていた。
門番の声が、どこからともなく響く。
「前衛隊を求める者よ。 己の傷を越えられぬ者に、前へ進む資格はない。」
試練は始まったばかりだった。
シオン、アリエル、零士。 三人がそれぞれの過去と向き合う中、心の奥底に封じていた“真実”が姿を現す。
零士の過去に眠る黒い刀は何を意味するのか。 アリエルの神殿崩壊の記憶は、彼女の運命をどう揺さぶるのか。 そしてシオンが再び見る“妹の影”は、幻か、
次回「心の檻」