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あれから数日。及川と陸は少し気まずくなっていた。
岩泉も流石に不審に思ったらしく、「…おい」と話し始めた。
「お前ら何かあったのか?」
及川と陸は二人揃って真っ赤な顔になって言った。
「な、何もない!何もない!ね、徹君!」
「そ、そうだよ?岩ちゃんどうかしたの!?」
あまりの勢いに「い、いや…」と狼狽えてしまった岩泉に気づいているのかいないのか。
陸は両手で顔を覆い、及川は口元を隠している。
(少女漫画じゃねーんだよ…)
岩泉は心の中で頭を抱えながら二人に言う。
「ほら、早く学校行くぞ」
遅刻ギリギリになりながら虫の息で席につく。
陸の頭の中ではずっと岩泉の言葉がぐるぐると回っていた。
(俺だって分かんないよ)
あのキスの意味をずっと考えて何日も経つ。
まだ答えは出ない。
(徹君は、何で俺にキスしたの…?)
あの柔らかい感触がまだ唇に残っている。
あれから及川からは主将とマネージャーとしての会話しかしていない。
何も話してくれない事が余計に及川を意識させる要因になっている。
そのせいで全然勉強に集中出来ない。
陸は机に突っ伏して呟いた。
「徹君のばか」
陸が教室に入るのと同時に及川も教室に滑り込んだ。
「セーフ…」
席に着き、教科書やノートを出す。
板書を写し、先生の下らない思い出話を聞く。
気づけば陸と自分の相合傘を書いていた。
「?!」
すぐさま消そうとするが、すぐに手が止まった。
及川の脳裏に陸の姿が思い浮かぶ。
男なのに華奢で小さな体、大きな瞳。濡れ羽色の髪。そして暖かな笑顔。
自分では気づかずとも及川は陸を幼馴染みとしてではなく、恋愛対象として見るようになっていた。
(いつからだったんだ?)
この感情をどうすれば良いのか分からない。
この前は衝動的にキスをしてしまったが、流石にダメだと自分でも気づいている。
(けど、動揺して顔真っ赤にした陸…可愛かったな)
できれば、あれをもう一度見たい。
いつからだったのだろうか。あまりにも自然だったもので答えは出せないけれど、未知の感情は『陸への恋心』として成長を果たしていた。
「これからどうしようかな」
昼休み。岩泉は及川と陸を弁当に誘った。
何故か。それは、気まずくなっている理由を明らかにするためであった。
「お前ら、マジで何かあったろ」
ポテサラを食べながら言うと、「やっぱりわかっちゃった?」と陸が恐る恐る訊ねた。
「何年お前らの幼馴染みやってると思ってやがんだ」
すると、及川が小声で、陸に聞こえないように言った。
「岩ちゃん、実は…」
それを聞いた瞬間、某宇宙猫のようになってしまった。
陸が除霊出来ると知ったとき以来だ。
だが、これだけは確かだった。
「クソ川が悪い」
いつもなら及川が「ひどい!」と叫んでくるはずなのだが、「そうだよね…」としおらしくしている。
陸はおにぎりをもくもくと幸せそうに食べていた。
岩泉が頭を抱えているのにも気づかず食べていた。