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【双子だからって全てが一緒なわけじゃない】
🍣…兄
💎…弟
僕は二卵性双生児で生まれた双子の弟。
僕のお兄ちゃんは生徒会長。
成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗で交友関係も広い。いわゆる陽キャに分類されるタイプ
生徒会長じゃなくても学年関係なく絶対みんな知っていそうな人。
それが僕のお兄ちゃん。
対して僕は成績は下から数えた方が圧倒的に早いし、運動神経もめっちゃくちゃ。
容姿もいい方じゃないし、友達とかって言える人もクラス内には0。 お兄ちゃんと違っていわゆる陰キャに分類されるタイプ
今日は前期テストの結果発表の日。
うちの学校はテスト結果を職員室前の掲示板に貼っている。
個別で成績表が配られるから見る必要はないものの、誰かと競ったりする人は見る必要がある。
必要以上に人が集まるからか掲示板の前は多くの生徒でごった返していた。
教室には僕以外に窓側で何人かが参考書を開いて机と向き合っていた。僕は勉強する気になれなくてなくて頭を抱えるようにして机に突っ伏した。
十数分してから出入り口付近が騒がしくなった。
少し顔を上げると、クラスの一軍グループが教室に入ってきた。
僕を見つけると獲物を見つけた猛獣みたいな目を向けてこちらにツカツカと歩いてきた。
「あんたさ、また最下位に近い点数とったよね」
朝から甲高い声を上から向けられて頭がキンキンする。顔を上げないようにしながら目をぎゅっと瞑る。
いきなり後頭部の髪を引っ張られ、強制的に顔を上げさせられた。
「なんとか言ったらどうなの?この私が話しかけてやってんのに」
別に話しかけて欲しいとか一言も言ったことないのに、と 心の中で悪態をついてチラリと視線を下に向ける。
その瞬間左頬に痛みが走った。軽く左頬を抑えて目の前に立つ人と目を合わせる
「目逸らさないでよ。私より立場が圧倒的に下なあんたが私に逆らえるとでも思ってんの?」
と言ったタイミングで先生が教室に入ってきて、僕の周りの人たちも静かに席についた
帰宅後
成績表をダイニングテーブルに置いて、自分に部屋に戻る。
今日はお母さんもお兄ちゃんも帰るのが遅いから道具を押入れから引っ張り出して収録をする。
こんな僕でも応援してくれるリスナーさんがたくさんいて、僕の新作歌ってみたを楽しみにしてくれている。
収録をしていると、リビングからお母さんが僕を呼ぶ声がヘッドフォン越しに聞こえた。
リビングに降りるとお母さんが成績表を片手にソファで足を組んでいた。
「この点数はなんなの?また最下位に近いじゃない」
冷たくそう言われ、無意識に俯く。
黙ってテレビの横に立っていると、お母さんはため息をついてキッチンで夕飯の準備をし始めた。
部屋に戻りMIX作業をしていると、ドアがノックされた。
いつもは何も考えずに開けることができるのに、今日だけはお兄ちゃんの顔が見たくなかった。
「いむ。お母さんのこと気にしないでね」
ドア越しにきっと僕を励ますために言ってくれているんだろうけど、僕には煽っているようにしか聞こえなかった。
「お兄ちゃんなんかに…わかるわけないじゃん」
何も考えずに、小さく呟く
「お兄ちゃんなんかに僕のことがわかるわけないじゃん!成績優秀でスポーツもできて交友関係も広くて学年関係なくみんなに慕われててさ!僕と違って毎日充実してていいよね!僕なんか毎日毎日いじめられてて毎日毎日傷を増やして帰ってきても家族の誰にも気づかれない!お兄ちゃんはかすり傷一つでお母さんに気づいてもらえて心配されていいよね!僕のことなんてどうせあいつらと一緒で自分よりも下だからって見下してるんでしょ!?」
一度口にしてしまうと、溜め込んできたことが一気に言葉として放たれる。頭の片隅でもしかしたらって考えてたことまで言ってて、自分が話してるのに自分じゃないみたい。
少しして、ドアの前で物音がした。きっとドアの前に座り込んだのだろう
「俺は、いむに憧れてた」
突然そう言われる。なんのことかわからないままドアの前に立つ
「好きなことを好きなようにやってて、楽しそうでさ。正直めちゃくちゃ羨ましかったし、俺の憧れだった」
小さく、でも通る声をしているしドア越しだから聞こえた
「俺さ、いむのファンなんだよね」
突然の告白だった。
僕のファン?お兄ちゃんが?一軍に属する陽キャが?お兄ちゃんが推し活?
頭の中がはてなでいっぱいになった。
でも今ドアを開けてお兄ちゃんと顔を合わせて話さないと、これから先お兄ちゃんと分かり合える気がしなかった。
静かにドアを開けると、僕の足にお兄ちゃんの後頭部がぶつかった。
「やっと開けてくれた…って、なんで泣きそうな顔なの?」
僕の足に頭を乗っけたまんまそう聞いてくる。
何も答えられずに俯いていると、お兄ちゃんは静かに立って何も言わずに抱きしめてくれた。
そういえば、小さい頃は僕が泣きそうなときお兄ちゃんがいつもこうやってくれてたっけ
そう思いながらお兄ちゃんの背中に腕を回す。
小さい頃は同じくらいの身長だったのに、関わりが減っていくうちにお兄ちゃんに身長を越されていた。
しばらくすると、お兄ちゃんが目線を合わせるように屈んで、覗き込むようにしてみてきた
「うん。もう大丈夫だね」
小さい時から変わらない。僕が落ち着いたかいつも確認してくる。
「お兄ちゃんありがとう」
何に対してのありがとうか分かっていないお兄ちゃんは目をパチクリとさせる。
そんなお兄ちゃんを今度は僕から抱きしめる。
驚いていたけど、にこっと微笑んで優しく抱きしめ返してくれた。
お兄ちゃんと双子でよかった
初めてそう思えた