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「まあ、僕は要らなかったって知れただけ良かったよ。」
少年はそう言うと、窓を開けて星を指差しました。
「あれ、冥王星って言うんだって。僕みたいな星なんだよ。」
あいにく星に疎かったので曖昧に頷くと、彼はより悲しそうな顔をしました。
何か取り返しのつかないことをしてしまった気がしましたが、気の所為だと思うことにしました。
外に目をやりますと、灰色の鳥の大群が目の前を通り過ぎていきました。
少年は鳥が入ってこないよう、そっと窓を閉めました。
もう一度見ましたが、冥王星とやらがどれなのか分からなくなってしまいました。
「じゃあ僕、そろそろ降りるね。」
「降りるって、駅までもう少し在るはずだろう。」
「うん。でも、僕はここじゃなきゃ駄目なんだ。」
その声はまるで、我儘を言う子供に聞かせるような口ぶりで、とても少年のものとは思えませんでした。
「そうか。ひとつ聞いてもいいかい。」
「勿論だよ。」
「この汽車は何処へ行くのか、君は知っているかい。」
すると彼はとても驚いてみせました。
知っていて当然ではないか、と言わんばかりの顔に少しむっとしましたが、相手は少年だと思い直します。
「私は無知なものでね。教えてくれないか。」
「……本当に幸せな人だ。」
それだけ言うと、彼はくるりと背を向け走り出しました。
「ちょっと。」
慌てて着いていきますと、丁度少年が扉を開けたところでした。
「おや、まだ着いてきていたの。」
こちらを少し振り返ると、優しく微笑みかけました。
「まだ引き返せるかも知れない。よく考えてね。」
そう言うと、彼は飛び降りました。
冥王星は、当初は太陽系だったものの、惑星の条件を満たせず太陽系から除外された星なのだそうです。