テラーノベル
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西木さんは「なーんだ」とちょっと残念そうに息を漏らす。
「あの人なら知ってるわ。深山さんだっけ。前にも何度か来てたよ。ひとりでは初めてかもしれないけど。あのとき咲坂さん、いなかったっけ。情報セキュリティの会社の社長さんなんだって」
「社長なの? あんなに若いのに?」
どう見ても二十代後半、いっていて三十代前半だ。
「ほら、前にさ、顧客情報が漏れたときがあったじゃない。あの後、セキュリティ強化するために入れた業者だよ。あの人もイケメンだけど、作業に来てくれた人がまた格好良くてさー、私はそっちの人が好み」
「そうなんだ」
そういえば会社名自体は聞いたことがある。作業の人となら会ったことがあるかもしれない。
「あの、すみません」
声をかけられ、私と西木さんは我に返って笑顔を作る。
「はい。いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします」
昔からの付き合いのある、パッケージ会社の営業さんだ。
私を見て、少しだけ不思議そうな顔をしていたけれど、「ただいま担当のものが参ります。こちらでお待ちください」と言うと、考えるのをやめたように笑顔になった。
談話スペースヘ案内して、お茶を出している間に担当者がやってきた。
私がお客様の相手をしている間は、西木さんが来訪者の対応をしてくれる。
受付の仕事は、大体がこんなことの繰り返し。
お客様に失礼のないよう、朗らかな笑顔でい続け、気持ちよく入って気持ちよくお帰りいただくのが務めだ。
受付スペースに戻り、背筋を伸ばして前を見る。
そう。私はここで、できるだけ無害な笑顔をつくって、来客者を見送る。
そうすることで、自己満足の復讐を続けているのだ。
臣桜
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鷹槻れん

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#溺愛
星キラリ

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鷹槻れん

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コメント
1件
こんばんは、寺島あおいです。 ラストの一文、心臓をぎゅっと掴まれました。それまでの朗らかな受付の日常――西木さんとの他愛ない会話やお茶出しの描写――が、すべて「無害な笑顔」っていう仮面だったのかと思うと、胸が苦しくなりますね。咲坂さんの内面に少しずつ迫っていく伏線の置き方、本当に巧みだなあと。次が楽しみです…!