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日独伊+世界
旧国注意
日独伊露=日帝ナチイタ王ソ連
明記はしていませんが、カプ表現があります。ご注意を
「で、これが噂の…?」
「はい、僕たちが死ぬ気で開発したカメラになります。過程はシークレットですよ」
イギリスと日本がニコニコとタチの悪そうなお面を貼り付け、笑っている。こんなに面白い物があるのなら使う他ないという魂胆だろう。
「ほう、一体誰が何のために?」
「ふふ。僕たちが、娯楽のために」
洒落た物語のセリフかと錯覚するほどの言葉を並べ、しかし瞳は新しいおもちゃを見つけた子供のように輝いていた。世界会議後なのも相まり、ぞろぞろと他国達も集まってきて、小さなお祭り状態であった。
「具体的にどの国が開発したんだ? 日本だけじゃないだろ、その口ぶりだと」
「あぁアメリカさん。えぇ、その通りです、読解能力に長けてますね」
「親父の真似か? 最近仲良いもんな〜」
ぷすー、と顔を膨らましながら嫉妬を全面に押し出すアメリカ。正直全然可愛くないな、と思いながらもそれを悟らせない表情で日本は言う。
「まさか。これは僕の意見なので…はは」
「さて、開発国でしたよね。まあ大方予想は付くと思いますが…」
「日本さんとドイツでしたよね、確か」
「あぁイギリスさん、言っちゃいましたね? 悲しいことに正解ですが」
イギリスが口を挟んだことに文句を言いながら、面白そうだなとアメリカは呟く。日本とドイツが共同で開発した娯楽用品は、質が高いと踏んでるのだろう。実際その通りである。
そのアメリカの考えを知ってか知らずか、アメリカに肩を組まれた日本はカメラの解説を隣にいたドイツに頼む。
「ドイツさん、さあさあ、早く説明を!」
「まあ待て日本。そこまで走ることないだろ? せっかくなんだ、俺たちだけじゃなくてイタリアも呼ぼう」
「グッドアイデアです。あの国が居れば、遊ぶという点ではこの上なく楽しめますからね」
にひひ、と二国は愉快そうに笑った。流石旧友と呼ばれるだけあるのか、息がピッタリな日独にイギリスは思った。
(私の方が古い仲なのに…)
悲しいかな、そんな幼児のような嫉妬心を口に出せるほど子供では無いのが彼だった。アメリカに釣られてやって来ていたカナダはそれを見透かし、一言。
「あはは、父さんってばいつまで思春期拗らせてんの」
ステッキで顔面にパンチが入った。
「それで、二人が一生懸命作ったのがそのカメラなんだね! うわあ、早く使いたい!!」
「場の空気が明るくなった。流石イタリアさん」
「これで借金を返せれば完璧なんだけどな」
日独伊はキャッキャと騒ぎ、カメラの説明は二の次だ。
それに痺れを切らしたフィンランドの早く、という言葉で三国はアメリカ達を視界に入れる。仲が良すぎるというのも難しい。
「ん”っん”。失礼した」
「さて、このカメラは端的に言えば、被写体を若返らせる物だ。記憶も無くなり、服装や考え方、性格、何もかもが当時に戻る。中々面白いだろ?」
「Wow…..すごい物を作ったね、ドイツくん!」
ニュージーランドが興味深そうにまじまじと日本の手の上に置かれたカメラを見つめる。
「まあな、こんなご時世なんだ。たまには娯楽があったっていいだろう」
「ふふ、社畜はこれのために何徹もしましたからね! 普段の仕事と掛け持ちは苦しかったです」
「だから日本さん、前に私の家に遊びに来た時に倒れたんですね。泡まで吹くものだから死ぬかと肝が冷えましたよ」
「あれは…はい…すみません」
日本がそんな事で泡を吹くわけない。きっとイギリスの食事が原因なのだろうと息子ズは考えたが、あえて言葉にはしなかった。この話題を深掘りしてはかえって日本のトラウマが蘇るだろうと踏んでの事なので、それを察した日本は珍しい気遣いに感動を覚える。
(あわわ、嬉しい。近所の子供が成長した感覚)
「Hm. それで、テストはしたのか?」
「はい、それは中国さんで行いましたよ。どうやら、どの時代まで戻るかはランダムみたいです」
「その方が面白いしな。俺の差金だ」
「あ、ドイツさんだったんですか」
中国が一歩手前に出て、それはもう大変だったと溜息を吐く。
「聞いてヨ、お前らども。カメラの効果時間が切れて記憶が戻ってくれば、目の前の日本が鼻血出してぶっ倒れてたアルよ? ドイツは消えてるノ」
「世紀末かと思ったワ」
昔は兄と慕ってた中国が過去の姿になり高揚しただけだ、と日本は主張したが、中国は変わらず引いた目をしている。虚しい。
そんなこんなで、全体での最初の被写体は誰にするかという話題に移った。
しかし、歴史が浅い国では戻りすぎて存在が消える可能性もあったため、それは排除された。加えて、戻った時にもある程度会話ができ、動け、楽しめる奴が良いと考案されたので、過去に主要国として鎮座していた国が候補に残る。
「とすると、私ことイギリスと、アメリカと、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ、日本さん…それぐらいですよね?」
「オーストリアとハンガリーは?」
イタリアがこてん、と頭を45度に傾けながら言う。
「え、私?」
ハンガリーはキョトン顔で、まさか自分の名が出るとはと驚いていた。
「いけません、ハンガリーが美しすぎて皆が卒倒します」
「出たなセコム」
オーストリアが止めたところに、すかさずスイスが突っ込みを入れる。
あはは、そうだよね〜と面倒くさそうにイタリアが流したのを見計らって、タイが口を出した。
「ねえ、それだったら! 日独伊でしょ!」
「あ〜…その心は?」
「昔でしょ? イタリア王国に、日帝に、プロイセンだよ!? 絶対ほのぼのしててkawaiiよ〜」
それは確かに癒し空間かも…という空気が流れる。
「それに、戻りすぎても困ることは無いし。三国とも歴史はあるから!」
「なるほど、確かに消えることはありませんが…しかし…」
イギリスはそこまで言うと口ごもった。
言わんとしてる事は分かるぞ、うんうん、とアメリカは頷きを入れるが、そこにフィリピンが一歩前に出る。
「別に話が通じないという訳でも無いでしょ? あたしはいいと思うけどなぁ」
「まあ理性的ではあるよね、バーサーカーだけど…僕はちょっと…万が一に備えて…」
「白旗でも準備しときますか、フランス?」
イギリスは渋ったフランスをおちょくる。通常運転な事には変わらないので、他国はそれをスルーした。
とはいえ、丁度皆が八十年前あたりに飛ぶ確率はたかが知れてる。それは全員の頭によぎったようで、特に苦言を呈す者も居なくなった。他の候補者はさらに危ない為、この三人で良いだろうというのが全員の魂胆である。
「うーん、私達ですか。構いませんが、失礼をしたら申し訳ないですね」
「安心しろ、その時は俺が止めてやるよ!」
「…アメリカさんがそうおっしゃるなら」
日本とアメリカの間に甘い雰囲気が漂い始め、それに台湾が苦虫を噛み潰した様な表情をする。因みに、イギリスも同様だった。そんなニ国に呆れた目線よこし、ロシアが自身が写真を撮ってやろうと出る。
(こんな面白そうなイベント、間近で見たいに決まってるだろ)
理由はともかく助かる、とドイツの返答を聞き、日本からカメラを受け取った。何故考えが読まれたのかは謎である。
「じゃ、取るぞ。三人だと入らないから寄ってくれ」
「ん、こんな感じかな?」
「おう、入った」
イタリアがドイツと日本に抱きつき、無理やり枠内に三人を収める事に成功した。もはや慣れている日独は無反応である。
「いくぞ…Сыр」
「ロシア語で言われても分からないと思うよ、ロシア」
「うるさい。理解できない方が悪いだろエストニア」
そんな肩気合いをしながら、カメラのシャッターを切った。
その途端、ボンッと大きな音と煙を出し、日独伊が白に包まれる。各国各々違った反応をしながら、煙が消えるのを静かに見守った。
「消えたな。さて、どの時代まで戻ってるか見どころだ」
ロシアの口がそう動いた瞬間のことだった。
彼の首元に短剣が躍り出た。
「!? あっぶね!!」
上半身を大きくそらし、そのまま片足に力を入れ後ろへ大きく下がる。警戒感をあらわにしながら目の前の人物を見れば、それは過去に友人として、時には宿敵として対峙していた男が仁王立ちをしていた。
「ナチッ!?」
「Oh my god!!!! なんてことだ!!!」
アメリカがそう叫ぶもんだから、ナチスに注目しながらもほぼ無意識に彼のほうにも視線をよこす。
合衆国の前で大胆不敵に笑っている男が居る、ただそれだけの情報だった。しかし、それだけで絶望感が鬩ぎよる。
「にってi」
「なんだ米国よ、貴様の頭がおかしなことになってるぞ。なんとも滑稽だな」
重厚感のある、しかし耳障りの良い声。聞き覚えしかなく、何度も怒声をこちらへ飛ばしてきたのは昔の記憶。
「日帝さん、落ち着いてください。私たちは貴方へ危害を加えようとたくらんでいるわけではないのです。」
「英帝?」
「それは僕たちが決めることなんよ! てめぇから何を言われようと関係ないんだから、さっさと二人も僕のところへ戻ってきてよね!」
イギリスが日帝を収めようとしたが、それをイタリア王国が止める。ロシアの前に居るナチスとアメリカの首を切ろうと刀を抜きかけた日帝を長身を活かし、無理やり自身の元へ戻らせた。
なぜよりにもよってこの時代へ戻ってしまったのか、と元連合国は頭を抱え、他国はトラウマや親愛が混じった顔を浮かべている。誰一人として動けないこの状況ではあるが、そこでナチスが啖呵を切った。
「ふん。ここは何処なのだ、ソ連、いや。ソ連のようなナニカと言った方が良かったか?」
「ナチス。敵と対話をしている場合では無いことくらい小童でも分かるだろう。人数不利なんだ、ここの場から逃げるのが最優先事項だ」
「はっ、精神論者が何を言い出すと思えばそんなことか? 貴様を囮にしてイタ王と抜ければ済む話だ。丁度良く日帝は連合国から好かれているようだしな」
「んもう、こんな時にまで喧嘩はよしてよ~。簡単なことさ、お前ら二人ともここでくたばれば良いじゃん!」
現国が言葉を挟む隙もなく怒声の浴びせあいが始まる。
言葉の内容から考えるに、彼らは千九百四十年代前半から来たのだろうとイギリスは推測した。どうやら彼らの間で意見がまとまったらしく、今度はイタリア王国が口を開いた。
「アメリカの星の数が増えてるし、ソ連の国旗も変わってるよね。他もちょくちょく変だし、植民地たちがお前らと対等のように接してる。頭が沸いたんね?」
「ついに植民地と支配国が対等な関係になる時代が来たとでも言いたいのか、イタ王」
「夢物語もはだはだしい、さっさと私たちに状況を説明しろ鬼畜どもが」
また意見の食い違いが起き、喧嘩に発展する。よくもまあこんな仲の悪さで同盟など結べたものだな、と英米は思ったが、それもつかの間だった。イギリスとアメリカの目が合う。
「あ‘‘ぁ‘‘!? おい離せッ!?」
「ふはは、日帝捕まってやんの~!」
「全員だぞアホども」
イギリスが縄を持ち出し、瞬きも行われない間に枢軸を拘束した。それを確認したのち、アメリカが安堵の溜息を吐く。
「Thank you とーちゃん。さてと、枢軸ども。状況説明だったな?」
「ねぇ兄さん。安心するのはいいんだけどさ、逃げ出しそうだよ」
「は?」
「ほんっとうにお前らなぁ!! 危害を加えるつもりは無いって言ってんだろ!?」
「信用できるか」
んべ、と日帝は舌を出しながらアメリカと器用に話す。しかし、イギリスが前に来た途端その表情は真面目な顔に移り変わった。
それに引いた目をしながらも、ナチスはあくまでも冷静に問う。
「失礼したな。で、何故私たちがこんな状況になっているかだが。あ、あそこにユダy」
「ナチス、一度口を閉じなさい」
「んっふ。周りを見れば分かるでしょナチ。知らないものがいっぱいあるんだ、パラレルワールドに決まってるんよ!」
あながち間違いでもないが、惜しい。
「別に何でも構わん。殺させろ」
「無茶言うなよ。それに、今俺を殺せば困るのは未来のお前だぞ」
「未来の私? あぁ…そういうことか」
「理解が早くて助かる」
日帝は分かったようで、その会話を聞いていた他二国も納得はした。しかし、やはり信じられないという顔をする。
「一応言っておくけど、こうなったのはお前達の責任だからな。僕達がバカやったわけじゃ無い」
「むしろそうでなくては困る。貴様らが原因だったならば、今すぐ首を掻っ切っていた」
フランスとナチスが話している光景など久々に見たな、とスペインが言葉を漏らす。それもそうだね! とブルガリアも同意した。
「あ、フィン! 久々だな。ん? この世界ではそうでもないのか?」
「いや、日帝と会うのは久しぶりだよ。なんだか新鮮だね」
「あぁ……お前が居ないと始まらないからな」
「ふふ、それはこっちのセリフだよ」
フィンランドと日帝が自分たちだけの世界に入ったのが面白く無かったのか、そこにスウェーデンが割ってきた。
「ちょっと、フィンランド! 二人だけでイチャイチャするなら僕も入れろよな〜!」
「別にそんなつもりじゃ…わわ、ごめんってばスウェーデン」
「はは、未来でも仲が良いようで何よりだぞ」
謎に適応能力の高い日帝は、既に空気感に馴染んでいた。
なんやかんや先程言った通り話は通じるし、懐かしさで枢軸と話そうとする者も多かった。しかし、後ろの方では怯えている者も多くいる。
特にポーランドやリトアニア、オーストリア、エチオピアなど…侵攻にあった国や迷惑をかけられた国はもう鬼の形相だった。
「ないち! ないちだ〜!!」
「ん、にってー!」
「本当ですね、日帝さん…!」
「おにーちゃんじゃーん!」
「あら…まさかジャスト日帝さんになるとは」
「わーい、久しぶりだね日帝〜」
「にてさん…!」
「おじいちゃん!」
「日帝、僕のこと覚えてる!?」
元植民地達がぞろぞろと居る人々を掻き分け、日帝の前に現れる。なつかしさで目を光らせた者たちによって、日帝は拘束されたまま後ろへ押し倒された。
「…? 東南アジア達の…!?」
そうだよ、そうですよ、気づかなかったの!?と様々な言葉が飛ぶ中、イタリア王国がつまらなそうにする。
「んもう、日帝ばっかり楽しい思いしてるじゃん! 僕も慕われたい!」
「まずは仲間に迷惑をかけないように心がけるところから始めた方が良いと思うぞ」
すかさずナチスが突っ込み、それにフランスも首を縦に振った。
最悪な時代を引いてしまったことには変わりないが、それでも彼らはまだ理性的だった。正直、千九百四十五年の枢軸であればこうはいかなかった。おそらく、それこそ言葉通りの殺し合いが行われていただろうとアメリカは思考回路をめぐらす。
「…おい米国。この状態をどうにかしろ、仮にもこの世界では友人なのだろう」
「…しゃーねーなぁ!」
好きで敵対したわけではない。上の都合で、自分たちは殺しあったのだ。
それでも、この時代の彼らと少しばかりではあるが、友人らしく接せることに確かな高揚を覚えた。
「で、丁度WWⅡの俺らを引いたと。無鉄砲にもほどがあったな」
「ふ~ん。本当に僕たちに記憶は無いんよ。不思議だねぇ」
「ですが、確かに体を動かした感覚はありますね。すっぽり記憶が抜けたみたいな」
効果時間が無事に切れた枢軸は現代の姿に戻った。彼らは特に何も苦労はしなかったが、周辺国への被害は甚大である。
最終的には喧嘩になり、ロシアとナチスは殺しあうわ、イタ王は平等に皆へ差別用語を連発するわ、日帝はアメリカとタイマンを張るわで。
美しく整頓されていたオフィスは、それはもう酷い有様に移り変わった。枢軸の戦闘力についていけないものは強制的に会議室から退出命令が下り、しまいにはロシアもアメリカも、何故かイギリスもフランスも中国もボロボロだった。後者三名はとばっちりである。
それらをしっかりと視界に入れた日独伊は各々の反応をする。
「あっ…違うよ、多分これはドイツと日本が暴れたんだよ! 僕が賠償金払う必要は無いよね!? わわ、フランス大丈夫~!?」
「…まあ、こうなることは予想してた。すまんなロシア」
「うっわぁ…これは酷い。そこまで暴れたんですかアメリカさん」
「暴れ始めたのはお前らだぞ!?」
責任をアメリカへ転嫁するのは今も昔も相変わらずらしい。もう二度とこの国たちには使ってやるもんかと中国やフランスは思う中、英米露は揃って同じ感想を漏らす。
(最高にエロかった)
大変だったとはいえ、好きな人の違う姿、言ってしまえば過去の姿など今はもう見れないのだから。
偶の娯楽としてはアリなのでは、と阿保なことを考えるのがこいつらであった。