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身体の奥に渦巻く不安は消えなかった。
みんなと笑い合う瞬間が増えた一方で、
夜になるとどうしてもあの薬の瓶に手が伸びてしまう。
若井は何も言わず、ただ静かに見守ってくれている。
その沈黙が、逆に重くのしかかることもあった。
「無理すんなよ」
若井の声は優しいけど、僕にはどこか遠い。
涼ちゃんは相変わらず無邪気で、
時にその笑顔が僕を救ってくれた。
けれど、本当は僕が支えられているんじゃなくて、
二人の温もりが僕の弱さを隠しているだけだと思っていた。
夜中、ひとり静かに薬を飲む。
それは僕にとって唯一の逃げ場であり、呪縛でもあった。
「俺はいつまで、こんな自分を続けるんだろう」
そんな疑問が胸を締めつける。
けれど、その答えを見つける勇気も、まだなかった。
夜の静けさの中、僕は薬の瓶をじっと見つめていた。
これまで何度も頼ってきた“逃げ道”が、今はまるで鎖のように感じる。
手の中で瓶を握りしめながら、心の中で葛藤が渦巻いた。
「本当にこれが俺の望む生き方なのか?」
何度も自問自答を繰り返し、涙がぽろりと零れ落ちた。
そのとき、ふと涼ちゃんや若井の顔が浮かんだ。
彼らの笑顔、温かさ、そして支えてくれた日々。
「こんな自分でも、誰かは見捨てずにいてくれる」
その想いが胸を突き動かした。
決心がついた僕は、薬の瓶を持って玄関の外へと歩き出した。
冷たい夜風が頬を撫でる中、深呼吸をして、薬を地面に投げ捨てた。
音を立てて割れる薬瓶。
それに僕は何とも思わなかった。
ある日の夕方、僕はリビングのソファに座りながら、深く息をついた。
「ねぇ、涼ちゃん、若井……ちょっと話があるんだ」
二人が僕の周りに集まってきて、涼ちゃんはいつものようにニコニコしている。
「んー?なぁに?」
僕は胸の内に溜まっていた言葉を、ゆっくりと紡いだ。
「実は、薬を全部捨てたんだ」
若井の表情が一瞬曇ったけど、すぐに優しく頷いた。
「そっか……よく決断したな」
涼ちゃんは驚いた顔で目を見開き、すぐに笑顔に戻った。
「すごいよ、元貴!それって本当に勇気いることだよ!」
僕は続けた。
「正直、不安もある。夜眠れなかったり、
怖くなったり……でも、薬に頼らない自分でいたいと思ったんだ」
若井が静かに言った。
「俺たちがいる。無理しそうになったら、いつでも言えよ」
涼ちゃんも頷きながら、
「そうだよ!僕ら三人で乗り越えよう!」
その言葉に、僕は少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。
「ありがとう、二人とも……これからも、よろしくね」
三人の絆が、また少し強くなった瞬間だった。