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「なんか面白いことしてみない?」
博多のその一言で始まった。
ここにいるのは俺(清都)と嘉村、博多の3人。つまりこの3人で何がしたいという魂胆だろう。 受験が控えている新学期のこのシーズン、正直気が乗らない。俺は私立のちょっと頭いいところに行きたいからマジで遊んでいる暇はない。
「受験控えてんだろ、そんなこと言って大丈夫かよ」
「清都は優等生だね〜、そんなカタい頭じゃ受験落ちるよ?」
「そーだそーだ」
博多に続けて嘉村も口を揃える。こいつら本当におかしいんじゃないのか。いつもは少しおとなしめの嘉村が珍しく口を開いた。
「やるなら中途半端じゃなくてちゃんと面白いのやりたいな。どうせなら2泊3日くらいで」
「賛成!大学別になっちゃうんだし今の時期に3人でどっか行かない?」
なんでこの2人はこういう時に気が合うんだ。たまったもんじゃない。
すかさず2人でこちらを見て
「ね、きよちゃん。3人でどっか行こうよ〜」
と口を揃える。多分折れても無駄。
「仕方ないな、今回だけだぞ」
「やったー!流石俺らのきよちゃん」
「きよちゃんダイスキ〜!」
「きよちゃん呼びやめろ!早く決めるぞ!」
そんなこんなで俺ら3人の最後のはっちゃけが決まった。
「まずはどこに行って何するかだよな」
清都が先陣を切って仕切る。それに続き嘉村が答える。
「旅行とか?」
「それもありなんだけどそうすると旅費とか視野に入れないといけなくなるぞ」
「あー、そっか」
清都の突っ込みは毎回的確で、学生にできることの範囲をしっかりと捉えて、何ができるかどこまでをできるか正確に捉えている。
「…」
「…」
2人の間に沈黙が流れる。
(そうだよな。この場を仕切ったはいいけど俺も何をしたいかはよくわかっていない)
嘉村が頭を掻き、ため息を漏らす。
そんな静寂が続いているとそれを破るように博多が言う
「じゃあ学校サボろうよー、学生最後の大遊びでしょ?単位に影響ないくらいにサボっちゃえよ」
「は!?」
「お前マジかよ」
「どこに行くとかは当日の朝決めよ!最寄りじゃなくて遠くの駅で朝マックでも食いながら話そうよ」
「いいね、それ乗った」
「お前もか嘉村!旅費とかどうすんの!親にはなんていうんだよ!?」
「まあ基本的に全部無視でいいんじゃないかな?」
「こいつマジで」
博多が勢いよく言う。
「じゃあ決行は一週間後の朝、学校が始まる2時間前に最寄駅集合で!」
「おー」
「おー…」
そんなこんなで決行は呆気なく一週間後の水曜日に決まった。
早朝、彼らが集まったのはJR北海道の北広島駅。絶妙なところがいいよねという博多の一言でそこに決定した。
2泊3日の旅。どこに行くかは決めてない。行きたいところに行くだけ。少しデカ目のリュックにかなり小さく畳める人1人分のテント、防寒着を持参して 3人ともホテルに泊まれるだけの金をそれぞれの貯金から引っ張ってきた。
みんな昨日の夜はぐっすり寝て、今日に備えていたため、目もバッチリだ。
「なー、どこ行く?」
嘉村の一言で始まる。
「銭函行かね?海あるしそこそこ栄えてんじゃんその後に2日くらいかけて函館行こう」
「じゃあ今日はとりあえず手前の星置駅でマック食べて銭函行くか。時間ありそうだったらちょっと進もう」
満場一致で決まった。
彼らが行くのは北海道の真ん中より少し左側にある石狩湾に面している銭函駅という場所だ。海が近くて、銭函から朝里を通じて小樽へ行く時に海が目の前で見えるからかなり絶景。
3人でまず札幌行きのJRに乗り、そこから函館本線へ乗り換える寸法だ。
流石に1日で北広島から函館へ行けるわけないので1日に3〜5時間ほど乗って着いた駅付近で泊まり、また次の日乗ると言う方法で函館まで行く。
「切符、買ってみる?」
清都が言い出したので3人で切符を買ってみた。
ほんとはキタカで全然乗れるのだが、なんかエモかったので揃えて3人で写メをとってみた。インスタにあげたい気持ちを堪えて、場所が特定されないように3人の足元だけ撮ってそれをインスタに載せた。もちろんしたともで。
「バレませんよーに!」
「投稿っ!」
「頼む場所わかっても内通しないでくれ!」
お祈りしつつ、投稿。
しんとした空気の中博多が口を開く。
「よし、JR来るまで暇だしだべってよ!今頃みんな何してるかな〜」
清都が言う。
「いーね。今頃登校中?起床?わかんねえや」
清都が時計をチラッと見る。現在6時20分。ほとんどの人が目を覚まして身支度をしている時間だろうか。
そこに嘉村が覗き込んできた。
「6:20か〜、俺まだ寝てるわ」
「そら嘉村お前は家近いから当然だ ろ」
「はー、清都クンは送り迎えがあるからいいねぇ、羨ましい」
「今はその話じゃないだろ!」
割って博多が口を開く
「あ、俺ちょうど家出てるかも」
「えそうなの、意外」
「朝練だよ朝練!」
「そっかバスケ部」
たわいもない話に弾ませていると遠くからJRが来るのが見えた。
「お、きたきた」
「忘れもんないよな?」
「もっちろん」
JRに乗り込み、適当な席に座る。
4月中旬、なんと異例の暖かさで雪が溶けもうすでに春先の気配がするこの頃、受験前最後の大サボり劇が始まる。