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一夜の

2 - 御手を

♥

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2025年04月14日

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「……ほんとにここ?」

「多分……?」

スマホをスクロールしながら悩む若井を横に、辺りを見渡してみる。もうすっかり空は暗く、いくつかの街灯が道を照らしてくれている。若井の車だけが止まったがらんとした駐車場。全くと言っていい程人の気配を感じない。

「んー…でも元貴が言ってた水族館ここだと思うんだよね。」

「…まあ、営業してない訳じゃ無さそうだし、折角だから入ってみようか!」

納得の行かなそうな表情を浮かべた若井の手を引き、まあまあな大きさのある水族館の入口へと向かう。つい最近、あまりデートに行けてないと元貴に話した所、「ここの水族館いいらしいよ。サイトのリンク送っておくから見てみて。」と言われた。家に帰って若井にサイトを見せてみると、僕よりも乗り気な様子だった。次の休みの日行こう!という話になり、今に至る。

「夜の水族館初めてだな〜!たのしみ!」

「俺も初めて。あ、入場券やってくるから待ってて。」

入口の近くには券売機が3つほど置かれており、機械の側面にはイルカのイラストが印刷されていてとても可愛らしい。水族館らしい要素に胸を踊らせながら、スマホを片手に行ってしまった若井の背中を見送る。


暫くした後、先程と同じようにスマホを握り締め、困ったような表情を浮かべた若井が帰ってきた。

「何か券売機使えなかった。スマホで予約したんだけど……」

「なんだろ…故障かな?」

若井と入れ替わるように券売機に行こうとした時、入口の自動ドアに貼られている張り紙に目を引かれた。手書き、と言うよりかは機械的な文字だ。

「ご自由に…お入りください、?」

「何見てんの…って、…なにこれ。」

直ぐに後ろから駆け寄ってきた若井も、張り紙の文字を視界に入れるや否や困惑した声を零している。こんなにも大規模な水族館で入場料が無料とは到底思えない。それに、こんな薄い張り紙、職員以外の人でも偽装出来てしまう。流石に騙されないぞ、と思いながら隣に居る若井に目を向ければ、眩しいほどの笑顔を浮かべていた。

「めっちゃラッキーじゃん!入ろ涼ちゃん!」

「え……、?いやいやいや、信じるの!?絶対罠だよ罠!」

「ただの水族館に罠とかないでしょ。多分丁度キャンペーンとかやってたんだよ。」

ほら行こ、と楽しそうに手を差し出した若井に渋々手を繋ぐ。たまに警戒心がおかしい所がある。まあ、それも彼の良さだけれど。



「なーんか暗くない…、?」

「だから言ったじゃん…おかしいって。」

開いていた自動ドアが閉まる無機質な音が後ろから聞こえた。入口だと言うのに、既に館内は暗く、所々に青いライトが差し込んでいる。受付のような場所もあったが、照明は消えていて人がいる様子もない。

「…今日営業してないんじゃない?やっぱ帰ろ……、え、?」

受付の近くをウロウロと探索する若井に軽く声を掛け、帰ろうと入口に振り向いた時、ある違和感に気が付いた。

「なんで…、無いの?」

さっきまでドアがあった場所には何も無く、ただの壁になっている。元から何も無かったと言われても違和感が無い位に。

「どうしたの涼ちゃ……、あれ、?出口は?」

「分かんない、っ…ねえ、これ絶対やばいやつだって、」

僕の様子に気が付いたのか、近くに来た若井も異変に気が付いたらしい。完全にパニックになった僕を落ち着かせるよう、そっと手を繋いでくれる。訳の分からない状況に思わず涙が零れそうになっていた時、入口の傍に展示されていた水槽が青く淡い光でライトアップされた。必然的に注意はそこに向き、水槽の中で悠々と泳ぐ小さな魚に視線が釘付けになる。

「…綺麗、!」

「綺麗だね。何の魚だろ。」

そう言った若井が1歩を踏み出した瞬間、突然館内に穏やかな声が響いた。

「本日はお越し頂き有難うございます。今夜限りの水族館、私と共に生き物たちの不思議な生態について学びませんか?」




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