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「一体どう言う事なの⁉︎」
クロディルドは声を荒げながら机を叩いた。
「私は、黒騎士団長の首を取る様に命令した筈よ! それなのに、どうして私の大切なリディアをっ」
「……どうやら、陛下がリディア様の事に感づいた見たいです。あの者達は元は陛下の陰の護衛団故、陛下が命令を変更なさったのかと」
従者にそう言われ、クロディルドは唇を噛み扇子を苛々しながら手の中で弄ぶ。
「そう、陛下がリディアを……。ディオンも目障りだったけど」
頭の中で思案する。
本当ならばあの時、リディアの兄である黒騎士団長のディオンを始末する予定だった。彼の父親のマルセルも本当に曲者だったが、息子も大概だ。
マルセルには採算に渡り、リディアの母親が亡くなった時からリディアを引き取りたいと打診していたが、有無を言わさず突っぱねられた。ならばと自分の侍女にしたいと譲歩するもそれも無駄だった。
ーーあの男がいたらリディアを手に入れる事が出来なくなる。
そう危機感抱き、事故に見せかけ殺した。息子が家督を継ぎ、リディアを侍女にする事には成功した。予めリディアの友人役としてシルヴィ・エルディーを侍女にしておき、リディアも嫌がる事なくこれまで続けてきた。
引き取る事も視野に入れたが、この時にはリディアも十一歳となっていて幼い頃と比べたら自我も強いだろう。無理矢理連れてくれば、後々面倒な事になりかねない。先の事を考えるとリディアには従順でいて貰わなければ困る。故にそれは断念した。まあ、後数年もすれば王太子妃として迎える予定故、辛抱しようと考えていた。
だがその数年後、予想外の出来事に見舞われた。まさかのリディアに婚約者が出来たのだ。しかも自邸を出て相手の屋敷で暮らすと言う。まさに寝耳に水だった。完全に誤算だ。
しかし直ぐに手を打った。婚約者のラザール・ゼバスチャンに、別の令嬢を見繕いあてがった。すると彼は直ぐにそちらに飛びついた。莫迦で単純な男で助かったと笑った。
そして無事、リディアを実家に戻す事には成功した。だが此処からが問題だった。直ぐにグリエット家へと書状を認め、リディアを王太子妃にしたい趣旨を伝えたのだが……。あのディオンと言う小僧は、適当な理由を付け申し出を突っぱねて来た。再度送るも変わらず。脅迫する様な文面に変えても無駄に終わる。
(今思い出しただけでも腹立たしい)
「まさか、妹に懸想してるなんて」
本当に厄介な話だ。あの様子では何をどうしようと意地でもリディアを手放す気はないだろう。そう考え始末してしまおうとしたのに……まさか国王に邪魔されるとは誤算だ。しかも国王はリディアを殺す気でいる。
ーーそんな事は絶対にさせない。
「仕方がありませんね」
クロディルドは不敵に笑みを浮かべた。
リディアを失う訳にはいかない。リディアは唯一王族の血を残せる存在なのだ。どちらを取るかなど選ぶまでもない。国王を殺すしかない。今度こそ邪魔なディオンも纏めて始末してしまおう。
「ワインを注いで頂戴」
従者にそう声を掛けグラスに注がせた。真っ赤な血を彷彿とさせる色のワインにクロディルドは口付け笑みを浮かべた。