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- ̗̀⚠︎ ̖́-
hsrb × inm
不穏、体調不良、トラウマ表現ありますご注意を
inm視点
小さい頃は可愛い、という言葉が苦手だった。
俺の母は女の子がずっと好きで父親と結婚したのも女の子を産んで育てたいからだった。
それでも産まれてきたのは男で、それを受け止められなかった母は病み、俺を女の子として育てるようになった。
いつも可愛くてふりふりのお洋服を着せられて母と出かけていた。
最初はそれが普通だったけど中学生になると骨格で男だってバレるし、それに気づいた母が手術をしないかと、女にならないかと聞いてきた。
そんなに可愛いのに男のままは勿体ない。
男は汚く私達が忌み嫌っているものだから、そのまま生き続けてたら父親からも、私からもお願いだから手術を受けて欲しいとの事だった。
でも手術をするのは嫌だったし自分は女の子として扱われるのも、可愛いふりふりしたリボンやレースがたっぷり使われたワンピースも、女の子が憧れるような可愛いリボンやレースがたっぷり使われた手袋も、ふりふりしたヘッドドレスも、真っ黒でリボンが着いたローファーも、着たくなかった。
履きたくなかった。
俺は元から普通の人より耳が良くて、一軒家の拠点の中に入ればどこに誰がいようと声を聞きとることが出来るぐらいには耳が良くてその結果コソコソと俺を不気味がる声や不思議がる声など容易に聞き取ることが出来るわけで。
俺はそれがずっと苦手だった。
それを伝えたことによりその日は母親と大喧嘩した。
その日以降母は俺の事を殴ったり、蹴ったりしてくる。
酷い日は雷が鳴る中ベランダに放り出されたりご飯が1日なかったりした。
ある日停電した中俺だけを置いて母は居なくなったきり帰ってこなくなった。
でも父親は俺に興味もないから夜中に帰ってくる。
そんな家庭で育ってきた。
だから俺は可愛いって言われるのが好きじゃない、両親以外に言われる分には構わないけど両親に言われるのは嫌だ。
でも褒めてくれてるのも分かるから、嫌だ。なんて面と向かっては言えない。
それに俺の顔は割と中性的な顔立ちをしているからたまに女の子に間違われたりもする。
それが嫌で、でもどうしようもなくて。
だからロウみたいな低い声が羨ましかった。
星導みたいな高い身長が羨ましかった。
リトみたいな男らしい体が羨ましかった。
イッテツみたいな力強い歌声が羨ましかった。
いっその事、家族のことを全て忘れられてしまえばいいのに。
そんなこと出来なくて、忘れるな。と言われてるかのように今でも鮮明に思い出してしまう。
母が出ていく前に伝えてきた言葉を、あの呪いを俺はいつまで経っても忘れられない。
苦しい。助けて欲しい。でも弱いところを見せる訳には行かない。
そんな言葉が頭の中をずっとぐるぐる回ってる。
そんな中先程から雷が鳴り止まない。
雷は昔から苦手だった、ベランダに追い出された日を思い出すから。
その後家に入れて貰えたと思ったらお前をベランダに出したせいで虐待だと言われた、ふざけるなと殴られたななんてぼんやりと思い出しながら自分のベッドで蹲る。
そういえば母が出ていった日も雷が鳴っていた気がする。
俺が嫌なことをされたり言われたりする日は決まって雷が鳴っていた。
そんなことを思い出してしまったせいで余計に布団にくるまり小さくなる。
今は助けてくれる仲間がいて、皆優しい人だから大丈夫。ここに俺を傷つけてくる人は居ないと分かっているのにそれでも怖くなってしまう。
その時ふと自分の恋人のことを思い出した。
会いたい。
今自分がいるのは拠点で、星導も今日は拠点で過ごすと言っていたからリビングか星導の部屋に行けば会えるだろうけど今は動きたくなくて、小さな声で自分の部屋から星導を呼ぶ。
「…ほしるべ。」
hsrb視点
拠点の1階でみんなで談笑をしているとふと恋人が居ないことに気づいた。
今日は珍しくつえーのみんなが揃ってる日なのにライが部屋から出てこないのは珍しいと思いみんなに声をかけてから2階に上がるために階段の前に立つ。
すると小さな声で俺を呼ぶ恋人の声が聞こえた気がした。
急いで階段を駆け上り恋人の部屋に入る。
『…ライ?どうしたんですか?』
そう声をかけると布団から少し顔を出し、こちらを潤んだ目でこちらを見つめてくる。
よく見ると両耳を両手で塞いでいて少し眉をゆがめていた。
ベッド横まで歩きベッドの下で座る。
ライと目を合わせた状態で声をかける。
『怖い夢でも見たんですか?』
ゆるく首を横に振っている。
それでもライは何かに脅えている。
どうしたら安心してくれるのか分からず頭をフル回転していると控えめに裾を握られる。
「るべ…怖い。助けて。
みんなに、るべに、捨てられちゃう。」
喋ってくれたと安堵したのも束の間、捨てられちゃう。とライはずっと言っている。
捨てられちゃう?そんなはずない。
みんなライのことが大切で、だからこそ今日ライが1階に一度も降りてきてないことをみんなずっと心配してる。
だから俺がライの様子を見に行ってくると伝えた時に皆が頼んだと、何かあったら呼んでくれと声をかけてくれたのだ。
『…ライ、絶対に俺達はライを捨てたりなんかしません。
だから、だから。
教えてください。ライはどうしたら安心してくれますか?』
「…るベが、ハグしてくれたら少し、安心する、かも……。」
思ったより素直に可愛いことを言ってくれるので嬉しくなってすぐハグをするとライが嬉しそうに笑ったあと顔を見られたくないのか俺の肩に顔をグリグリと押し付けてきていた。
可愛い。
『ライ、もし嫌だったら答えなくてもいいんですけど…。
何かあったんですか?』
少し肩を揺らしてしばらく黙ったあとゆっくり口を開いた。
「…言っても、嫌わない、?
捨てない?」
『もちろん。こんなに素敵な人を捨てるなんてことしませんよ。』
そう伝えると安心したのか少し顔を綻ばせた後、話し始めてくれた。
初めて聞くその話は思ったよりも壮絶な話で、
ところどころ言葉をつまらせたり泣いてしまったりしていた。
ライの母はライに女であることを強制し、虐待を行った。
そんな母のせいで友を作ることが出来ず、学校から帰ってきたあとは母に喜んで欲しい一心で作り話をしていたり、笑っていたりしたらしいが、実際は学校では気味悪がられ誰も近づいてこなかったそうだ。
後に色々あり喧嘩し母が出ていったきり会っていないとの事だった。
「その、母親に女の子のお洋服、ずっと着せられてて。
それが嫌で、めちゃつえーのみんなとか事務所の人達以外に可愛いって言われるのはあんまり得意じゃなくて……。
女の子にも思えるこの容姿も、声もずっと嫌いだった。
雷の日はずっとベランダに出されたりとか、母親が出ていった時も雷が鳴ってたから雷が苦手で…………。
怖くて…。」
『今日まで一人で頑張ったんですね。
でも大丈夫。ヒーローが助けてあげます。』
「俺もヒーローなんだけど、笑」
『こういう時は素直に助けてもらうんですよ!』
「そっか…笑
ねぇ、助けてヒーロー。
…今だけは俺の、俺だけのヒーローで居て。」
『もちろんです。今だけと言わずいつまでもあなたのヒーローですよ。
任せてください。
今日はもう寝ましょうか。
きっと1人で寝られないライのために一緒に
寝てあげます。』
「ありがとう。」
そういったライは限界が来ていたみたいで直ぐに眠りについていた。
明日はライの眩しいほどの笑顔が見れますように。
そう願いながら眠りにつく。