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人間🫧🪄
1
「なぁ〜…ジョルノから聞いたジャポーネの文化なんだけどよぉ〜」
よくある朝。卓上には買ってきたコルネットと、湯気が淡く立ったカフェラテが美味しそうな香りを立てている。
いつもと変わらない毎日。普段から2人はこうやって食事を取るし、ミスタがそのときにくだらない雑学や疑問を話すこともまた当たり前であった
カニバリズムがどうだの、人間の心理はどこにあるだの、たまに興味をそそられることもあるが、基本的にはふーんで終わらせられる内容であった。
今日の話もそんな感じであろう。そううっすらと思いながらIQ152の恋人は、コップに口を付けた
「童貞を殺すセーターって知ってる?」
「……んグッ!?!?」
カフェラテを吹き出しそうになりながら、無理矢理飲み込みフーゴはミスタのことを見た
しかしすぐに冷静さを取り戻し、ため息を付く。あきれのような、面倒くさがるような。そんな雰囲気が出ていた
ミスタがまた下の話をすることもいたって異常ではない。『普通』かと言われれば少し違うが、それでもフーゴに対してのインパクトは強大すぎた
「あのねぇ…アンタ、朝っぱらからこんなこと話さないでくださいよ。飯が不味くなる」
カップをテーブルの上にコトンと置いて、少し口の端から溢れたカフェラテを指先で拭った。くだらないいつもの話よりもっと酷い。ジョジョがそんなこと言うはずないだろう。フーゴにはそ んな疑問が先に来ていた
「いや〜…この前ベロンベロンに酔っ払ったときによぉ、ジョルノが教えてくれて…そのときノリで注文して〜……それが今日の夕方届くから受け取ってほしいな〜……なんて?♡」
「ったく…アンタって人は……無駄遣いばっか」
「でもこの前のナースは案外ノリノリだったじゃあねぇか」
「うるさい!!」
怒りからフーゴが思い切り立ち上がると、卓上のコップがガタリと音をたてて倒れた。そんな様子を見てミスタは「あ〜あ…」と声を漏らしてコルネットを一口齧った
「ところで……それ、『童貞を殺すセーター』っての、どんなのなんです?」
「お! 乗り気になった?」
「違う。」
即答するフーゴに、ちぇ、とミスタは舌を鳴らしてカフェラテに口を付けた。
「俺が頼んだのはたしか……袖無しミニスカワンピースみたいのに〜…背中がガバっと空いてるやつ、すげぇえろいの」
「………そうですか」
フーゴはため息を再び付きながら、溢したカフェラテの掃除をするためにキッチンへと足を運んだ
★
(届いてしまった……)
茶色の段ボール。雑な梱包をされた所に、『衣類』としっかり書かれた伝票が貼ってある
ミスタはいつもよくわからないものを通販で買ってしまう。性器が巨大化する薬だの、恋人がメロメロになる催眠器具だの、コスプレ衣装だの……自分で勝手にやる分にはどうでもよいが、フーゴは自身が巻き込まれるのが嫌でしかなかった。
薬なんかは、いざヤろう!!と意気込んだ夜に、「ちんこイテェ………フーゴぉ……救急車……」と泣きついてきた。なんと情けない。結局そのときはジョジョに助けてもらったっけ、と、ぼんやりフーゴは思い出していた
「まったく、アホらしい…」
そう愚痴を溢しながら、フーゴはカッターを手に取り、箱を空けてみることにした
フーゴ自身は否定はしているものの、コスプレ衣装は2人の性生活に置いて非常に楽しいものであった。
ミスタはフーゴのえっちな姿に興奮できるし、フーゴはいつもよりさらに積極的で、自分に興奮してくれるミスタがとても嬉しい。しかもシチュエーションも作って楽しめる。ナース衣装は病院の先生と看護師、といったwin-winの関係であった
大抵一晩でおじゃんになるが、それでもミスタを強く止めないのは、それよりも興奮が勝ってしまうのだ
だから口先では嫌がっていても、フーゴはミスタが帰宅するより先に開けることにしたのだ。なによりフーゴが楽しみにしているのだ、
「こ、これは、……」
透明なビニールに包まれた灰色の服は一見、普通のニットに見えなくもないが、異質なのは試着イメージのモデルが載せられたタグであった。大きく空いた背中、短すぎる裾、ミスタに言われなかった、胸元にまたもや空いた穴。こんなの誰が着るのだ。とフーゴは思った
おそるおそるビニールの封を開け、中身を取り出してみる。安っぽいサイトで買ったからか、少しチクチクしそうな生地だ。畳まれているので、広げてみると写真通りの外観。なんなら穴が大きめのような気もする
(誰が考えたんだこんなの!!やっぱりジャポーネには変態しかいないのか!?)
フーゴの服を握る手に力が入る。作る奴も変態なら、こんなの買うミスタはもっとイカれてる!!とフーゴは心なかで叱責した……のだが………
「っ…………ん、ちょっとキツいか…? 」
着た。
灰色の生地は筋肉質な身体にピッチリと添い、胸から腰にかけてのラインを綺麗に見せている。パックリ開いた背中と胸元には少し火照った肌が覗いていた。足の付け根ギリギリまで攻められた裾はもはや隠す意味はないのでは?と言いたくなるほとだ。
鏡に移った自身の姿を見て、フーゴは顔を顰めた
やっぱりこんなのは自分には似合わない。逞しい腕は守りたくなるか弱さなんか感じられないし、見せるだけ損だ。ミスタには悪いが再配達してもらう……という設定にしよう、とフーゴは考えた。
「ただいま〜パニーちゃん♡荷物届いた?」
「はっ!?み、っすたこっちは、!」
悶々と思考を巡らせることに夢中になっていたせいか、ミスタが帰ってきてしまった。幸いまだ玄関にいるだろうが……きっと見つかったら揶揄われる。フーゴは適当にあったオーバーサイズのパーカーを上からズボッと着込み、段ボールの箱は物置へと放り込んだ
「返事しろよ〜…って、あれ?まだ届いてねーの?」
「あ、あぁ…予定よりも早くきたらしくって、僕が出かけてた時間帯だったから受け取れなかったよ」
フーゴは下着以外何も着ていない下半身を隠そうとソファの後ろへと身を寄せる。少しスースするが今はそれどころではない
「ふ〜ん…ならいいけど、ちょっと残念だな〜…せっかく買ってきたのに」
ミスタは持っていた紙袋から大量の避妊具と、どこから買ってきたのかわからない手錠を取り出した
「っ!?」
「ほら…なんか前みたいにシチュエーションほしいからさ、買ってきた」
「買ってきたとかじゃあないだろ…僕は使わないからなそんなの」
今日は使わないと判断したのかミスタは机の上へと紙袋を置いて、フーゴの方へと歩み寄ってきた
「ところでよぉ〜フーゴ、なんでお前そんなとこいんだよ?」
ジリ…と狩りをする獣のような瞳をミスタは覗かせる。フーゴは狼狽えながらもパーカーの裾を下へと引っ張り、少し後ずさりした
その間もミスタはフーゴの方へと近づいて、そして― フーゴの全身を見た
「なぁ、なんでズボン着てねーの?」
「それは、洗濯中で」
「裾、上げてみろよ」
ちょいちょいとフーゴの下半身に向かってミスタは指を指す。フーゴは益々服を握る力を強め、なにも言えずに頬を紅潮させた
「なぁったら、できねぇの?」
ミスタはフーゴの腕を掴み、無理矢理パーカーを捲りあげた。厚手の布地から覗く、安っぽくて、薄っぺらなニットの色。ミスタは喉を鳴らして、フーゴの顔を見た
「似合わないだろっ……僕には」
絞り出すようにフーゴは声を溢す。ミスタは不敵な笑みを見せて、パーカーの裾をもとに戻した
「カワイーことしてくれんじゃん、パニーちゃん♡」
ミスタは上機嫌にフーゴの額にキスを落とし、手を腰へと滑らせた
いつものやり取りと、いつものこと、でも今日だけは、ほんのり違った
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